非常用発電機は、災害や停電時に重要な役割を果たします。病院や商業施設、オフィスビル、工場などの施設には欠かせない設備であり、電力供給が途絶えると、病院では命に関わる問題が、工場では生産ラインの停止などの深刻な影響が発生します。そのため、非常用発電機は人命や経済活動を守るための不可欠な存在です。
非常用発電機は長期使用によって経年劣化します。適切にメンテナンスを行うことで多少改善しますが、一般的には15〜20年で更新が必要とされています。
更新にあたっては、更新後の設備が安全基準を満たしていること、要求される性能を発揮できることを届け出る必要があります。一方、届出の種類や届出先が多岐にわたるため、事業者にとって混乱の種になることがしばしばあります。
今回は、非常用発電機の更新時に必要な届出について、届出内容とその目的、届出先および期限を整理して解説します。更新にあたって事業者が何をすれば良いか、参考となる情報をお伝えします。
非常用発電機とは
非常用発電機は、災害や停電など非常時に備えて設置される発電設備であり、軽油やガスなどの燃料を用いて発電し、重要な設備へ電力を供給します。
本記事では非常用発電機の種類に焦点を当てて解説しますが、種類の違いを理解する前に、まず非常用発電機の基本的な役割や設置目的を押さえておく必要があります。はじめに、非常用発電機の果たす役割と導入の背景を解説します。
なお、非常用発電機には一般家庭向けの小型タイプも存在しますが、この記事では病院や工場などに導入される大型施設向けの設備を対象としています。
非常用発電機の役割
非常用発電機の役割は、常用電源が停止した際に防災設備へ電力を供給することです。
商業施設や病院、オフィスビルなどには、スプリンクラーや非常灯、非常放送といった防災設備が備えられています。これらは災害時に避難誘導や初期消火を行ううえで不可欠ですが、電力がなければ作動しません。そのため、対応が遅れ被害の拡大につながるおそれがあります。
こうしたリスクに備えるため、非常用発電機は非常時にも電力を安定供給し、防災設備の機能維持に貢献します。たとえば、火災で常用電源が喪失した場合でも、非常用発電機が稼働すればスプリンクラーや非常放送を作動させることができ、被害の抑制につながります。
このように、非常時に電力を供給する設備全般は「非常電源」と呼ばれ、その中でも燃料を使って自立して発電を行う設備が「非常用発電機」です。
非常用発電機の設置目的
非常用発電機は、電力供給が断たれた際にも必要な設備へ電力を届けるために導入される発電設備です。病院や商業施設、オフィスビル、工場など多くの施設で導入されており、その目的は施設ごとに異なります。
非常用発電機が設置される主な理由は次のとおりです。
- 災害対策
- BCP対策
災害対策
災害対策は、非常用発電機を導入するもっとも代表的な目的です。
前述のとおり、防災設備へ電力を供給することで、被害の拡大を防ぐための初期対応を可能にします。非常用発電機は、災害に備えるうえで欠かせない存在といえるでしょう。
特に下記の条件に該当する施設については、消防法や建築基準法によって非常用発電機の設置が義務付けられています。
◆非常用発電機の設置が義務付けられる施設の条件
準拠する法令 | 条件 | 該当施設の例 |
|---|---|---|
|
消防法 |
・不特定多数の人が出入りする ・避難困難者がいる、もしくは避難が困難な環境条件である ・床面積が延べ1,000m2以上 |
病院、老人ホーム、学校、工場、映画館など |
|
建築基準法 |
・高さ31mを超える ・不特定多数の人が出入りする ・避難困難者がいる、もしくは避難が困難な環境条件である |
ホテル、マンション、オフィスビル、大型商業施設など |
ただし、これらの条件に該当しない施設でも、リスクに備えるため自主的に導入するケースが増えています。
法的義務の有無にかかわらず、非常用発電機は災害対策として重要な設備です。施設を運営されている方は、災害時のリスクを一度見直し、必要に応じて導入を検討してみてください。
BCP対策
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の一環として、非常用発電機が導入されるケースもあります。BCPとは、災害やシステム障害などの非常時において、事業を継続させるための計画のことです。
非常用発電機があれば、停電などによって電力が断たれた場合でも、自家発電により事業の早期復旧が可能になります。たとえば、工場であれば生産ラインの再稼働、オフィスビルであればサーバーの継続運転が実現できます。
このように、非常用発電機は事業活動の中断を最小限に抑えるための要であり、安全確保にとどまらず、経営の観点からも重要な設備となります。
非常用発電機の設置義務
ビルの用途や規模によっては、消防法や建築基準法などの関連法令に基づき、非常用発電機の設置が義務付けられるケースがあります。ここでは、どんなビルに非常用発電機の設置義務が生じるのか、その条件をわかりやすく解説します。
消防法による設置義務
消防法は、火災を防ぎ、万が一の際には消火活動や救助・救急活動をスムーズに行うために建物や設備に求められる防火・消防の基準を定めた法律です。私たちが普段利用している多くの建物も、この法律に基づいて安全性が確保されています。
その中でも、不特定多数の人が利用する一定規模以上の建築物には、スプリンクラーや屋内消火栓といった防災設備の設置が義務付けられています。
これらの設備は停電時にも確実に作動させる必要があるため、非常用発電機などの非常電源とセットで導入することが求められます。つまり、消防法が直接「非常用発電機を設置せよ」と規定しているわけではありませんが、防災設備を確実に動かすために、結果として非常用発電機の設置が必須になる仕組みです。
設置義務が課される具体的な条件は、延床面積が1,000m²以上であることです。また、劇場や映画館のように閉鎖性が高い施設、病院や高齢者施設のように避難が難しい人が多い建物では、非常用発電機の重要性はさらに高まります。
こうした施設では、災害時でも安全を確保するために、より厳格な設備基準が求められています。
建築基準法による設置義務
建築基準法は、建物の敷地や構造、設備、そして用途に関する安全基準を定めた法律で、建築物が「安全に使える状態」であることを保証する役割を担っています。その中には、災害時に建物の機能を維持するための設備に関する規定も含まれており、非常用発電機も重要な建築設備の一つとして位置づけられています。
非常用発電機については、必要なときに確実に運転できることが大前提となるため、設置場所の安全性や環境条件について細かい基準が設けられています。
設置義務が課される条件の中で代表的なものは、高さ31mを超える高層ビルです。高層建築物では、災害時に非常用エレベータを稼働させる必要があるため、その電源として非常用発電機の設置が必須となります。
さらに、下の表で示されるような特定用途の建物では、利用者が安全かつ迅速に避難できるよう、非常用発電機の設置が義務付けられています。
非常用発電機の設置義務があるビル
No. | 非常用発電機の設置義務があるビルの用途 | 例 |
|---|---|---|
|
1 |
不特定多数の人が利用する施設 |
劇場、映画館、集会場 |
|
2 |
人命維持など、防災上特に重要な施設 |
病院、老人ホーム |
|
3 |
大規模な商業施設 |
百貨店、ショッピングモール |
|
4 |
一定規模以上の共同住宅 |
高層マンション |
劇場や病院など、多くの人が集まる、あるいは避難に時間を要する施設では、停電時でも防災設備を確実に動かせる体制が求められるためです。
建築基準法における非常用発電機の位置づけは、建物の安全性を維持するための基盤です。用途や規模に応じて求められる要件が変わるため、建物の計画段階からしっかり確認しておきましょう。
また、場合によっては非常用発電機の設置が免除されるケースもあり、下の表は設置免除となったケースの例です。免除の可否・判定基準は地域や行政機関により異なるため、免除を希望する場合は確認しておくことをおすすめします。
No. | 非常用発電機の設置免除の要件 | 内容 |
|---|---|---|
|
1 |
自家発電設備の設置 |
建築基準法に適合する自家発電設備を非常用電源として利用する場合、設置が免除されます。 |
|
2 |
電力供給の信頼性が高い地域 |
停電発生の可能性が極めて低い地域では、行政機関の判断により設置が免除される場合があります。 |
|
3 |
小規模な建築物 |
一定規模未満の小規模建築物では、用途や地域に応じて設置が免除される場合があります。 |
|
4 |
代替設備の設置 |
蓄電池設備や非常用高圧受電設備など、法令に適合する代替設備を設置する場合、非常用発電機の設置が免除されることがあります。 |
施設・用途に合った非常用発電機の選定基準
ビルに非常用発電機を導入する際は、「とりあえず付ければいい」というものではありません。どんな設備を動かすのか、建物の構造や周辺環境はどうかといった条件に合わせて、最適な種類を選ぶ必要があります。
発電方式や燃料の種類、設置場所の制約など、検討すべきポイントは意外と多いものです。ここでは、ビル向け非常用発電機を選定する際に押さえておきたい基準について解説します。
容量
非常用発電機を選ぶうえで最も重要なのは、非常時でも確実に必要な設備へ電力を供給できることです。
どれだけ高性能な発電機であっても、必要な電力をまかなえなければ意味がありません。容量が不足してしまうと、肝心の設備が動かず、導入目的そのものが果たせなくなる可能性があります。
また、導入時に設定する容量は“少し余裕を持たせる”ことが一般的です。運用を続ける中で事業計画が変わり、新しい設備が追加されることは珍しくありません。
さらに、メーカーが提示する起動電力はあくまで参考値であり、実際の運用ではより大きな電力を必要とするケースもあります。
こうした理由から、非常用発電機の容量は「現在の必要量+将来の変化を見据えた余裕」を持たせて選定することが、安定した運用につながります。
燃料方式
非常用発電機は、採用する燃料方式によって大きく次の3種類に分けられます。
- ディーゼル式
- ガスタービン式
- LPガス式
それぞれで導入コストや必要な設置スペース、運転特性が異なるため、ビルの用途や求める性能、設置環境に合わせて最適なタイプを選ぶことが重要です。
これら3種類の非常用発電機について、複数の評価軸を用いて比較した一覧表を下表に示します。どの方式が自分のビルに適しているのかを判断する際の参考にしてみてください。
非常用発電機の種類と適性
評価軸 | ディーゼル式 | ガスタービン式 | LPガス式 |
|---|---|---|---|
|
導入コスト |
◎ 低価格 |
△ 比較的高価 |
△ 比較的高価 |
|
起動性能 (40秒以内※) |
◎ 容易 |
△ 要設計 |
〇 ほぼ容易 |
|
災害時の燃料確保 |
△ 配送困難(要貯蔵) |
〇 ガス供給次第 |
◎ 容易 |
|
設置スペース |
〇 標準的 |
〇 標準的 |
△ ボンベスペース要 |
|
特徴 |
低価格で標準的な性能。災害時の燃料供給が困難であり、事業継続は貯蔵分で対応する必要がある。 |
高価格だがガス供給によって長期間の事業継続が期待できる。起動性能に課題あり。 |
高価格だが燃料を確保しやすく、災害時にも安定した事業継続が期待できる。 |
※:消防法により、非常用発電機は停電発生から40秒以内の起動・給電開始が要求される。
ディーゼル式・ガスタービン式・LPガス式の3種類には、それぞれ明確なメリット・デメリットがあります。
ディーゼル式
ディーゼルエンジン式は導入コストが最も低く、非常用発電機として広く普及している方式です。
ただし、燃料となるA重油や軽油は災害時に配送が滞りやすく、長時間の運転が必要な場面では事業継続性の面で不利になることがあります。燃料タンクを大きくすれば運転時間を延ばすことはできますが、その分だけ設置スペースが必要になる点には注意が必要です。
ガスタービン式
ガスタービン式は比較的高価ではあるものの、都市ガスなどの燃料供給が途絶えない限り長時間の連続運転が可能で、事業継続性の高さが大きな強みです。
ただし、非常用発電機として使用する場合は「40秒以内に起動できるように設計する」ことが求められるため、導入時にはこの点を考慮した設計が必要になります。
LPガス式
LPガス式は、その名のとおりLPガスを燃料とする方式で、3種類の中でも特に燃料の入手性が高いことが特徴です。災害時でもLPガスは比較的供給が確保されやすいため、長期間の運転が可能で、事業継続性という観点では非常に優れています。
ただし、LPガスボンベを設置するためのスペースを確保しなければならず、敷地条件によっては導入が難しい場合もあります。
総合的に見ると、コストを抑えたい場合はディーゼルエンジン式、事業継続性を重視する場合はLPガス式またはガスタービン式が有力な選択肢となります。あくまで目安ではありますが、各種類のメリット・デメリットを比較し、建物の用途や求める性能に応じて最適な方式を選定しましょう。
まとめ
非常用発電機は、停電・災害発生時に必要な設備へ電力を届けるために欠かせない存在です。防災設備の稼働や事業継続、さらには廃熱利用によるエネルギー効率向上など、さまざまな目的で多くの施設に導入が進んでいます。
ビルの用途や規模によっては、消防法や建築基準法に基づき設置が義務付けられることがあります。たとえば、消防法では延床面積1,000m²以上の不特定多数が利用する建物、建築基準法では高さ31mを超える高層ビルが対象となります。ただし、地域によっては例外もあるため、最終的には自治体への確認が必要です。
また、非常用発電機の選定にあたって最も重視すべきなのは容量で、災害時に稼働させる設備の電力を踏まえ、余裕を持って設定することが求められます。燃料方式はディーゼル式・LPガス式・ガスタービン式の3種類があり、低コストを重視するならディーゼル式、事業継続性を重視するならLPガス式やガスタービン式が有力な選択肢になります。
非常用発電機は、建物の安全性と事業継続を支える重要設備です。用途に応じて最適な設備を選ぶことが、災害に強いビルづくりにつながります。
非常用発電機の導入にあたっては、長期的な点検・保守・更新といった運用方法と、それに伴うコストまで考慮して総合的に判断する必要があります。そのため、非常用発電機の導入を検討する場合は、信頼できる専門業者に相談することが、安全で確実な導入への第一歩となります。
実績豊富な業者に依頼することで、施設の規模や用途、地域特性に合わせた適切な設計・施工が可能となり、導入後のメンテナンスやトラブル対応もスムーズに行うことができます。
小川電機株式会社は、60年以上にわたり非常用発電機の設置工事から点検、修理、更新まで一貫して対応してきた実績があります。施設の特性や目的に応じた最適な提案と確実なサポートにより、安全性と事業継続性を両立する電力環境を実現します。
非常用発電機の導入や、既存設備のメンテナンスをお考えの方は、小川電機株式会社までお気軽にお問い合わせください。
