モールドトランスは、巻線を樹脂で覆った乾式トランスのことです。絶縁油を使わないため、防災面と保守面を重視する設備で多く採用されています。
小川電機株式会社でも、JSHPのモールドトランスを取り扱っています。
本記事では、モールドトランスの構造や油入トランスとの違い、導入・更新前に確認したい項目を解説します。設置環境や保守体制、納期など、選定時の判断材料を整理できるため、導入や油入トランスからの更新を検討する際にお役立てください。
▼この記事のポイント
- モールドトランスは、巻線を樹脂で固めて絶縁する乾式トランスです。
- モールドトランスは絶縁油の管理が不要ですが、巻線や端子の点検、清掃、冷却状態の確認は必要です。
- モールドトランスの運転中は、樹脂表面も充電部として扱い、触れてはいけません。
- 油入からモールドへ更新する際は、寸法・端子位置・離隔距離と設置環境を確認します。
この記事の監修者
杉本 隆樹
小川電機株式会社 マーケティング本部
小川電機東大阪エリアにて、約23年にわたり営業として従事。 空調や照明からトランス、キュービクル、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。 トランスの導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
モールドトランスとは
モールドトランスとは、巻線をエポキシ樹脂などで固め、絶縁したトランスです。絶縁油を使用しないことから、乾式トランスの一種に分類されます。
油の点検や管理が不要で、点検・メンテナンスの負担を軽減できることが特徴です。また、絶縁油に起因する火災リスクを抑えられることから、防災面や保守面を重視する設備で多く採用されています。
まずは、基本的な構造を確認し、乾式トランスの中での位置付けを確認しましょう。
モールドトランスの構造
モールドトランスは、鉄心に取り付けた巻線を樹脂で固めた構造です。油入トランスのように鉄心や巻線を絶縁油の中に収める構造ではなく、油を使わずに絶縁を確保します。
主な構成部品と、それぞれが担う役割は次のとおりです。
構成部品 | 役割 |
|---|---|
鉄心(コア) | 薄い鋼板を何枚も積み重ねて作られた、電圧変換のための磁気回路です。磁束を効率よく通す役割を担っています。 |
巻線 | 銅線などをコイル状に巻いた部分です。高圧側と低圧側の巻線があり、電磁誘導によって電圧を変換します。 |
エポキシ樹脂 | 巻線を覆って絶縁を確保するとともに、衝撃などから保護する材料です。樹脂で巻線を固める構造が、モールドトランスの大きな特徴です。 |
端子・接続部 | 高圧側(一次側)から電気を受け入れ、変換した電気を低圧側(二次側)から送り出す接続部分です。機種によっては、タップ切替用の端子や切換器も備えています。 |
巻線を樹脂で固める目的は、巻線同士やほかの部分との電気的な絶縁を確保することです。併せて、巻線の機械的な強度を高める役割もあります。
油入トランスと異なり絶縁油を使用しないため、油漏れに起因する火災リスクを軽減できる点も、この構造の特徴です。
ただし、運転中は発熱するため、モールドトランスでも冷却は必要です。空気で適切に冷却できる環境に設置します。
乾式トランスとの関係
モールドトランスは、乾式トランスの一種です。乾式トランスとは、絶縁油の代わりに空気や絶縁材料などを使って、絶縁を確保するトランスを指します。
乾式トランスには、モールド型以外にも種類があります。
代表例が乾式オープン型で、巻線を樹脂で完全にモールドせず、絶縁処理を施した巻線が空気に触れやすい構造になっています。油を使わない点は共通していても、巻線の構造が異なります。
そのため、「モールドトランス」と「乾式トランス」は同じ範囲を指す名称ではありません。モールドトランスは乾式トランスに含まれますが、乾式トランスのすべてがモールド型というわけではないことを押さえておきましょう。
モールドトランスと油入トランスの違い
モールドトランスと油入トランスは、絶縁や冷却の方法に加え、防災・保守面にも違いがあります。設置条件に合う方式を選べるよう、主な違いを次の表で確認しましょう。
項目 | モールドトランス | 油入トランス |
|---|---|---|
絶縁 | ・エポキシ樹脂などで巻線を覆って絶縁する | ・絶縁油によって巻線などを絶縁する |
冷却方法 | ・主に空気で冷却する | ・主に、絶縁油を介して熱を移動させ放熱する |
燃えにくさ | ・樹脂に難燃性・自己消火性を持たせた製品があり、火災リスクを抑えやすい | ・絶縁油が燃焼する可能性があるため、防火対策が重要 |
漏油の有無 | ・絶縁油を使用しないため、変圧器本体からの漏油はない | ・タンクやシール部などから漏油する可能性がある |
点検・保守 | ・油の管理は不要・巻線の汚れ・ひび割れ、端子、冷却状態などの点検が必要 | ・漏油や油量、絶縁油の状態、端子、冷却状態などの点検が必要 |
設置場所 | ・ビル、工場、商業施設などの屋内設備で採用されやすい・屋外設置は製品仕様の確認が必要 | ・屋内・屋外の両方で使用されている・ただし、設置環境や防火条件に応じた対策が必要。 |
運転音 | ・鉄心や巻線の振動による音が発生する・油入式より大きくなる場合がある | ・一般に比較的静かな傾向があるが、機種や容量、設置条件によって異なる |
価格の傾向 | ・油入に比べて高くなる傾向がある(詳細は見積もりでご案内) | ・モールドに比べて安価な傾向がある |
納期 | ・仕様や時期により異なるため、お問い合わせください | ・小川電機の在庫品(単相50~300kVA、三相75~500kVA)は在庫があれば最短で出荷 |
モールドトランスが選ばれる場面
モールドトランスは、防火性を重視する場合や、絶縁油を使わずに設置したい場合に選ばれる傾向があります。
中でも、ビルや商業施設、病院、地下の電気室など、屋内に設置する設備で選ばれることが多い方式です。こうした場所では、防災面への配慮が重視されます。
絶縁油を使うトランスを屋内に置く場合、油に起因する安全面への不安が残ります。モールドトランスであれば、絶縁油による火災リスクを抑えられるため、防災面を重視する屋内設備で選ばれやすくなっています。
食品工場や精密機器工場など、油漏れが思わぬ事故につながるおそれのある場所でも、漏油を避ける目的で選ばれることがあります。また、油を使用しないことは、防災面だけでなく、保守管理の負担を減らしたい場合の判断材料にもなります。
絶縁油を使用するトランスでは、油の点検や交換が必要です。一方、モールドトランスは絶縁油を使わないため、油に関する点検・交換作業を省けます。
ただし、保守管理がすべて不要になるわけではありません。巻線や端子の点検、清掃、冷却状態の確認は必要です。こうした作業も踏まえ、使用状況に合う方式を選びましょう。
設置条件と保守面を照らし合わせるには、専門知識が必要になる場合もあります。
小川電機株式会社では、設置状況やご希望を伺い、条件に応じたご案内をしています。モールドトランスと油入トランスのどちらが適しているか判断に迷う場合は、導入を検討している設備の状況を添えて、お気軽にお問い合わせください。
必要な仕様と優先したい条件をお伝えいただければ、それらを踏まえて選定をご案内します。
モールドトランスの導入・更新前に確認したいポイント
モールドトランスの導入・更新前には、使用場所や設置環境、安全面、既設機器との違いを確認しましょう。
- 屋外での使用
- 温度管理・清掃・設置環境
- 運転中は表面に触れない
- 油入トランスからモールドトランスに更新する際の寸法・端子位置・離隔
いずれも設置後の安全な運用に関わるため、機種を選ぶ段階で確認しておくことが大切です。
屋外での使用
モールドトランスは屋内での使用が基本ですが、屋外用キュービクルに納めることで、屋外でも使用できる場合があります。
屋外設置に対応した機種もあるものの、その数はそれほど多くありません。また、屋外で使えるかどうかは、設置場所や設置状況を踏まえて判断する必要があります。
対応可否に少しでも不安がある場合は、急いで決めず、専門家へ相談してから機種を選びましょう。
小川電機株式会社では、設置場所や設置状況を伺い、条件に応じてご案内しています。屋外での使用を検討している方や、設置条件について確認したい方は、お気軽にお問い合わせください。
温度管理・清掃・設置環境
モールドトランスの安全な運用には、適切な温度管理と清掃、設置環境の確保が必要です。温度上昇やほこりの蓄積は、絶縁性能の低下や故障につながるため、定期的に温度を管理し、清掃することが重要です。
運転中はトランスが発熱するため、巻線と周囲の温度を適切に管理します。異常な温度のまま運転を続けると、絶縁材料の劣化が進み、トランスの寿命を縮めるおそれがあります。
安全に使い続けるためには、温度が上がった状態を放置せず、巻線や周囲を適切な温度に保つことが欠かせません。
設置環境では、温度だけでなく湿度や換気状態も確認します。周囲に熱がこもらないよう、吸排気口を確保して空気が流れる環境を整えることが大切です。
また、湿気や結露を防ぐため、除湿への対応も必要になります。冷却しやすく、湿気の影響を受けにくい環境を確保することが、安全な運用につながります。
導入前には、設置場所の周辺環境を調べるとともに、設置後に清掃しやすいかどうかも忘れずに確認してください。
運転中は表面に触れない
運転中のモールドトランスは、樹脂の表面にも触れてはなりません。巻線が樹脂で覆われていても、安全に触れられるわけではないためです。
端子や接続部では充電部が露出しているほか、樹脂の表面も運転中に電位を持つ可能性があります。表面を含めて感電の危険があることを理解しておく必要があります。
さらに、運転中の発熱によって樹脂部分が高温になり、触れると火傷するおそれもあります。感電と火傷の両方に注意し、運転中は樹脂表面も充電部として扱ってください。
樹脂で覆われていることだけで、安全と判断しないことが重要です。
油入から更新するときの寸法・端子位置・離隔
油入トランスからモールドトランスへ更新する際は、寸法・端子位置・離隔距離を確認する必要があります。既設機器との違いを踏まえて検討しましょう。
特に、寸法は搬入前に必ず確認します。新しいモールドトランスが既設機器より大きい場合、同じ場所に収まらず、設置場所の変更が必要になる可能性があるためです。選定時に設置できるかを確認しておきましょう。
端子位置も機種ごとに異なります。接続部の位置を把握し、作業に必要なスペースを十分に確保できるか確認することが重要です。
また、モールドトランスは樹脂表面も充電部として扱います。壁や周囲の機器、人が触れる場所との間に、メーカーが指定する離隔距離を確保できるか確認してください。
古い油入トランスを撤去する場合は、併せてPCBを含んでいないかの確認も必要です。
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更新工事の可否は電気工事店が判断します。機種の選定や設置条件について不安や疑問がある場合は、小川電機株式会社へお気軽にお問い合わせください。
油入トランスとモールドトランスのどちらを選ぶべき?
油入トランスとモールドトランスの選択は、設置場所や設置状況、重視する条件によって異なります。どちらが一律に優れているという答えはなく、使用する側の要望に合うかを検討することが大切です。
防災面を優先するのか、保守体制や予算、納期を重視するのかを整理すると、それぞれの特徴を踏まえて比較しやすくなります。
選定時の主な判断の目安は、次のとおりです。
観点 | モールドトランスが向く場合 | 油入トランスが向く場合 |
|---|---|---|
設置場所 | ビル・病院・商業施設・地下の電気室など、屋内で防災上の要求が高い場所 | 屋外キュービクルや工場など、油入の実績が多い場所 |
防災上の要求 | 絶縁油による火災・漏油のリスクを避けたい | 防油堤や防火対策で対応できる |
保守体制 | 油の点検・処分をなくしたい(清掃・温度管理は必要) | 油の点検を含む保守体制がある |
予算 | 初期費用より防災・保守面を優先したい | 初期費用を抑えたい |
納期 | 納期はお問い合わせください | 在庫品は、該当する容量帯の在庫があれば最短で翌日出荷 |
判断に迷う場合は、まずは小川電機株式会社にご相談ください。仕様やご希望をお伝えいただけましたら、状況に合わせたアドバイスをさせていただきます。
小川電機のモールドトランス
小川電機株式会社では、トップランナー3に対応するJSHPのモールドトランスを取り扱っています。入れ替えを検討している方や、容量・ラインナップなどの詳しい仕様を確認したい方は、お気軽にお問い合わせください。
トップランナー3対応機種は、基本的にサイズと重量が大きくなるため、既設の場所に収まらないケースもあります。更新をご検討の際は、設置スペースについてもお気軽にご相談ください。
なお、油入トランスは基本的に単相50~300kVA、三相75~500kVAの容量帯を在庫しています。在庫品であれば最短で出荷が可能です。
種別 | 取扱製品 | 在庫品 |
|---|---|---|
単相 | 50~500KVA | 50~300kVA |
三相 | 75~2,000KVA | 75~500kVA |
早急にトランスを調達したい場合は、必要な容量や仕様を添えてご相談ください。
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モールドトランスについてよくある質問
最後に、モールドトランスの使用場所や更新、価格など、よくある質問にお答えします。
屋外でも使えますか?
A:屋内での使用が基本です。ただし、屋外用キュービクルに納めれば屋外で使える場合があります。
また、屋外設置に対応する機種もあるため、対象機種の仕様をご確認ください。
更新の目安は?
A:一般的には20年~30年程度とされていますが、使用状況や設置環境によって大きく異なるため、一概にはいえません。年数だけで更新時期を判断せず、絶縁性能の劣化状況や設置環境なども踏まえて、総合的に検討する必要があります。
定期点検を実施し、機器の状態を確認したうえで更新を判断してください。
油入からモールドへ入れ替えできる?
A:入れ替えは可能です。
ただし、寸法・端子位置・離隔距離に加え、設置環境と電気設備の仕様を確認する必要があります。実際に工事ができるかどうかは、電気工事店が判断します。
価格は?
A:価格は容量や仕様によって変わるため、正確な金額を把握するには見積もりが必要です。
小川電機株式会社では、必要な情報をお伝えいただければ、迅速に見積もりを発行します。導入を検討している機種の費用については、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
モールドトランスは絶縁油を使用せず、防災面や保守面を重視する設備で多く採用されています。
ただし、油入トランスとどちらを選ぶかは、設置場所だけで決められるものではありません。設置状況や保守体制、納期などを確認し、導入する側が何を優先するかを整理したうえで、総合的に判断しましょう。
機種選びに迷う場合は、小川電機株式会社へご相談ください。設備の状況やご希望をお伝えいただければ、必要な仕様に合わせてご案内します。
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この記事の監修者
杉本 隆樹
小川電機株式会社 マーケティング本部
小川電機東大阪エリアにて、約23年にわたり営業として従事。 空調や照明からトランス、キュービクル、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。 トランスの導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。

