非常用発電機の設置を検討するなら、まず建築基準法の内容を正確に理解することが不可欠です。なぜなら、一定の条件に該当する建築物では設置が法令上の義務となっており、知らなかったでは済まされないからです。
法令を十分に把握しないまま導入を進めると、是正指導や信用低下といったリスクを招くおそれもあります。
今回は、建築物の安全性を確保するうえで重要な建築基準法に焦点を当て、非常用発電機に関する設置義務・点検義務・届出のポイント、さらに設置が求められる建築物の具体例まで体系的に解説します。
非常用発電機の設置前に理解しておくべく建築基準法の定め
非常用発電機の導入を進めるうえで、最初に押さえるべきは建築基準法上の「設置義務」「点検義務」「届出義務」の3点です。これらは単なる努力義務ではなく、法令で明確に定められた義務であり、違反すれば是正指導や信用低下といったリスクにつながります。
社会的責任を負う企業としては、導入前の段階で内容を正確に理解しておく必要があります。ここでは、設置前に必ず確認しておきたい重要なポイントを解説します。
設置義務
建築基準法では、以下の条件の建築物に対して非常用発電機の設置を義務付けています。
- 高さ31mを超える建築物
- 地下を除く階数が5階以上、かつ延べ面積1,000㎡以上の建築物
- 特殊建築物
これらの建築物では、災害や停電時にも安全を確保するため、非常用発電機の設置だけでなく、防火区画の整備など安全性を高める措置も求められます。対象条件に該当するかどうかを事前に確認することが重要です。
点検義務
非常用発電機は設置して終わりではなく、適切な維持管理までが法令上の義務です。建築基準法では、安全な運用状態を保つための定期点検が義務付けられています。
非常用発電機は平常時には稼働しない設備であるため、点検を怠ると不具合や故障に気付かないまま放置されるおそれがあります。その結果、非常時に正常に作動せず、被害が拡大する危険性も否定できません。
さらに、点検を実施しなければ法令違反となり、事故発生時には保険が適用されない可能性もあります。安全面だけでなく、信用や経済的リスクの観点からも、定期点検は必要です。
必要な届出
非常用発電機を設置する際には、建築確認申請時に関係図書を提出する必要があります。また、完了検査申請時には試験結果や検査記録などの提出を求められる場合があります。
提出書類の内容や手続きは管轄の特定行政庁によって異なることがあるため、事前確認のうえで準備を進めることが重要です。書類に不備があれば再提出となり、工期や業務に影響を及ぼす可能性もあります。
手続きを確実かつ効率的に進めるためには、専門知識を持つ業者へ相談することも有効な選択肢です。
建築基準法により設置が義務付けられている理由と設置が必要な施設
非常用発電機の設置が建築基準法で義務付けられているのは、災害や停電時でも人命を守るためです。特に高さのある建築物や不特定多数の人が利用する施設では、停電がそのまま重大事故につながるおそれがあります。
そのため、法令では一定の建築物に対して非常用電源の確保を求めています。ここでは、義務化の背景と対象となる施設について解説します。
義務付けられている理由
高層建築物や多数の利用者が出入りする施設で火災や事故による停電が発生すると、非常用昇降機や照明、排煙設備などの防災設備が機能しなくなる危険性があります。さらに、エレベーター内への閉じ込めや避難経路の視認性低下は、逃げ遅れや二次被害の要因にもなります。
非常時に電力が確保できなければ、建物に備えられた安全設備が十分に機能せず、被害が拡大する可能性があります。こうしたリスクを未然に防ぎ、安全な避難環境を確保するために、建築基準法では非常用発電機の設置を義務付けているのです。
設置が必要な施設
建築基準法では、不特定多数の人が利用する「特殊建築物」に対して非常用発電機の設置を義務付けています。特殊建築物とは、火災や事故が発生した場合に大きな被害が想定される建築物であり、一般の建物よりも厳しい防火・安全基準が適用される施設を指します。
具体的には、次のような建築物が該当します。
- 大型商業施設
- 映画館
- 病院
- 学校
- ホテルや旅館
- 共同住宅
- 高齢者福祉施設など
これらの施設では多くの人が滞在・利用しており、停電時に電気が使えない状況は避難や安全確保に重大な影響を及ぼします。そのため、非常用発電機を設置し、非常時でも最低限の電力を確保することが求められているのです。
建築基準法が定める非常用発電機の点検に関する注意点
非常用発電機は、設置後の定期点検まで含めて法令遵守が求められる設備です。建築基準法では、適切な頻度・内容での点検と報告が義務付けられており、これを怠ると違反となる可能性があります。
安全な運用を継続するためにも、「点検頻度」「点検内容」「実施者の資格」という3つのポイントを正確に理解しておくことが重要です。
点検頻度
建築基準法では、特定行政庁が定める頻度で点検を実施することが義務付けられています。一般的な目安としては半年から1年に1回程度とされていますが、実際の頻度は地域ごとに異なるため、必ず管轄の特定行政庁に確認する必要があります。
点検頻度を誤って認識していると、意図せず法令違反となるおそれがあります。業者へ依頼する前に地域の基準を把握しておくことが重要です。また、点検結果の報告も義務となっているため、点検と報告は一体の手続きであることを理解しておきましょう。
点検内容
建築基準法で定められている点検内容は次のとおりです。
- 建築物や設備、敷地が法令基準に適合しているのか確認
- 建築内のすべての非常用照明に異常がないのかの確認
- 蓄電池触媒栓の期限や液漏れの確認
特に非常用照明は建物内すべてが対象となるため、すべての電球を設置した状態で点検を行う必要があります。形式的な確認ではなく、実際に非常時に機能する状態であるかを検証することが求められます。
点検に必要な資格
点検は誰でも実施できるわけではなく、建築基準法では有資格者による実施が義務付けられています。具体的には、次の資格保有者などが対象です。
- 一級/二級建築士
- 建築設備検査員
- 防火設備検査員
資格を持たない者が実施した場合、法令上の点検として認められません。社内に該当資格者がいない場合は、専門業者への依頼が必要になります。
その際、資格保有者が在籍しているかを事前に確認することが重要です。資格を持たない業者が外注する場合、仲介手数料が上乗せされる可能性もあります。
費用だけで判断するのではなく、実績や体制を確認したうえで業者を選定することが、安全性とコストの両面で適切な判断につながります。非常時に確実に稼働させるためにも、平常時の適切な点検を徹底することが不可欠です。
非常用発電機を設置する前に押さえておきたい建築基準法以外の法令
非常用発電機の設置にあたっては、建築基準法だけでなく、電気事業法と消防法への対応も必要です。これらの法令は、設置後の維持管理や点検体制まで具体的に定めており、いずれかを軽視すると法令違反につながる可能性があります。
安全性と法令遵守を両立するためにも、関連法令の全体像を把握しておくことが重要です。ここでは、電気事業法と消防法の要点について解説します。
電気事業法
非常用発電機を設置した場合、電気事業法に基づき次の点検が義務付けられます。
- 月次点検
- 年次点検
月次点検は毎月実施する必要があり、主に外観や動作状況に異常がないかを確認します。点検内容自体は比較的簡易で、短時間で完了するものが中心ですが、法令で定められた義務である以上、確実な実施が求められます。
年次点検は1年に一度実施し、月次点検では確認しきれない詳細部分を点検します。主な内容は次のとおりです。
- 起動装置および停止装置の動作確認
- 自動起動・自動停止装置の動作確認
- 蓄電池の液漏れ確認
- 接続箇所および接地部の確認
- 接続部の緩みの確認
対象となるのは、出力10kVA以上のディーゼルエンジン式発電機およびすべてのガスタービン式発電機です。また、点検は「電気主任技術者」または「電気管理技術者」などの資格保有者が実施しなければならないと定められています。
消防法
不特定多数の人が出入りする延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物では、消防法により非常用発電機の設置が義務付けられています。特定防火対象物とは、多数の利用者がいる施設や、自力避難が困難な人が利用する施設を指し、具体例は次のとおりです。
- 病院
- 大型商業施設
- ホテルや旅館
- 老人ホーム
- 飲食店など
停電時にスプリンクラーや自動火災報知設備などが機能しなければ、被害が拡大するおそれがあります。こうした重大リスクを防ぐため、消防法でも非常用電源の確保が求められているのです。
設置後は、定期点検の実施および消防署長への報告も義務となります。点検は次の2種類です。
機器点検(半年に1回)
- 自動・手動での起動確認
- オイルおよび冷却水の量・状態確認
- 外観の損傷、異音、振動、漏れ、排気状況の確認
- 表示ランプや警報装置の確認
- プラグキャップ、Vベルト、バッテリー液などの確認
総合点検(1年に1回)
- 30%以上の負荷をかけた状態での電圧・周波数の安定確認
- オーバーヒートの有無の確認
- 切替性能の確認
- 保護装置および安全装置の確認
- 接地抵抗および絶縁抵抗の確認
総合点検に含まれる負荷試験は、施設内を一時的に停電させる必要がある場合もあり、事前のスケジュール調整と予算確保が重要です。ただし、予防的保全策を講じることで、負荷試験を6年周期とすることも可能です。
なお、消防法に基づく点検は次の資格保有者でなければ実施できません。
- 自家発電設備専門技術者
- 消防設備士
- 消防設備点検資格者
非常用発電機の設置を後悔しないためのポイント
非常用発電機の導入で後悔しないためには、関連法令への適合と、実績ある専門業者への依頼が必要不可欠です。非常用発電機は単なる設備ではなく、法令遵守と安全確保を前提に運用すべき重要インフラです。特に、次の3つの法令が大きく関係します。
- 建築基準法
- 電磁気業法
- 消防法
これらの基礎的な内容を理解すること自体は難しくありません。しかし、実際には設置場所の条件、周辺環境への配慮、機種選定、点検体制の構築など、個別事情に応じた判断が求められます。法令を形式的に満たすだけでなく、実務レベルで適切に対応するためには、専門知識と経験が必要です。
そのため重要になるのが、依頼先の実績です。同じ「業者」といっても、対応力や知見には大きな差があります。実績豊富な業者であれば、多様な現場経験に基づき、設置計画から点検体制の構築、部品交換の適切なタイミングまで一貫して提案できます。
非常用発電機は平常時に稼働しない設備だからこそ、日常的な点検と的確なメンテナンスが安全性を左右します。万一の事態において確実に機能させるためにも、経験と実績を備えた専門業者へ依頼することが重要です。
まとめ
非常用発電機は、一定の条件に該当する建築物において建築基準法により設置が義務付けられており、設置後も定期的な点検と適切な維持管理が求められます。具体的には、高さ31mを超える建築物、地下を除く階数が5以上かつ延べ面積1,000㎡以上の建築物、不特定多数の人が出入りする特殊建築物などが対象です。
さらに、電気事業法や消防法にも関連する規定があり、非常用発電機は複数の法令を横断して管理すべき設備であることを理解しておく必要があります。
これらの義務を怠れば法令違反となるだけでなく、事故や火災発生時に保険が適用されない可能性もあり、企業にとっては大きな社会的・経済的リスクとなります。そのため、設置計画の段階から法令の内容を正確に把握し、建物の用途や規模に応じた適切な対応を行うことが不可欠です。
特に重要なのは、法令に精通し、豊富な実績を持つ専門業者の支援を受けることです。創業60年を超える小川電機株式会社は、数多くの非常用発電機の設置実績を有し、設置時に必要な各種届出の代行にも対応しています。
また、設置や点検に必要な資格を持つ技術者が在籍しており、法令対応から維持管理まで一貫したサポートが可能です。非常用発電機の導入や運用に不安がある場合は、お気軽に小川電機までお問い合わせください。
