高齢になって体が弱くなってきた人や事故で障害を負った人等は、日常的な行動をするのにも多大な労力を必要とします。そんな時に解決策としてよく提案されるのがバリアフリー設備の導入です。
ここではそんな自宅にバリアフリーを導入したい、と考えている人のために設備設置にかかるリフォームの費用等について説明します。
みんなが暮らしやすい家に
そもそもバリアフリーとは一体何なのでしょうか。バリアフリーとは簡単にいうと障害物がないという意味を持った言葉です。
この障害物というのは基本的に物理的な障害のことを指していますが、世間の人達の身体が不自由な人に対する無理解等の、精神的な障害についての意味も含んでいます。
つまりバリアフリーとは高齢者や障害者等の身体能力的に難がある人が、普通の人と同じような行動を可能にするための設備や、差別等を受けないようにするための考え方全般を指したものなのです。
しかしながら自宅のリフォームの時等に使われるバリアフリーという言葉は基本的に、身体的な障害を取り除くための物理的な設備のことを表している場合が殆どです。
具体的には床の凹凸の激しい段差をなくしたり、階段や廊下に手すり等を付けて、高齢者や障害者の人が室内の移動をスムーズにしたりする改築工事等がリフォーム時のバリアフリーにあたります。
また高齢者や障害者の人の身体的な状態によって、こういったバリアフリーの工事の内容と全体的にかかってくる規模や費用等は大きく変わってきます。
よくあるバリアフリー設備
一口にバリアフリーといっても、その設備には様々なものがあります。一つは住居内の段差がある部分をできるだけなくして、代わりにスロープにしたりする工事等です。
この工事にはどういった意味があるかというと、単純に足腰の弱い高齢者等が段差につまずいて転ぶことがないようにするため、あるいは足の不自由な人が車イスで家を移動しやすくするため等といった意味があります。
他には階段や廊下に手すりをつけるといった工事が施されることも多いです。これらの場所も段差をなくす工事と同じように、高齢者等が転びにくくするためといった理由でリフォームされやすい部分といえます。
後はトイレと浴室、玄関等にもバリアフリー設備が導入されることが多いです。これ等の場所は高齢者や障害者の人にとっては辛い体勢を強いられることがよくあるので、その辛い動作を補助するための手すり等を付けることが多いです。
特に浴室は水気の問題で滑って転ぶ可能性が高い上に、運が悪ければ浴槽にためたお湯で溺死してしまう可能性もあるので、優先的にこういった手すり等のバリアフリー設備を導入したい場所です。
バリアフリーの費用相場
バリアフリーのリフォームは導入する設備によって費用が大きく変わってきます。まず段差をスロープにする工事ですが、これは大体40万円程度から、内容によってはそれ以上の費用がかかります。
手すりのように後で何かを取り付けるといったものではなくて、家の構造自体を変更してしまうものなので、これぐらいの工事費用が必要になります。次は手すりの取り付けについてですが、これは1本辺り3万円程度となっており、比較的手の出しやすいバリアフリーです。
また設置する場所の自由度も高いので、家の構造上工事ができないといった問題も起こりにくいといえます。特に階段等は転倒した際のリスクが高いので、もし階段に手すりがない家に住んでいる場合は優先して付けた方がいいでしょう。
また他に手を出しやすいバリアフリーとして、5万円程度の費用で開き戸を引き戸にするというものもあります。現在の家屋の一般的な主流は開き戸ですが、開き戸だと開閉に大きな動きが必要になる上、車イス等を使用している人が扉を通りにくいといった問題があります。
したがってそれらの問題を解消するために引き戸にするというわけです。またこの引き戸にもサッシ等で段差ができないように工夫された、バリアフリー用のものが存在するので、そういうものを採用するとよりスムーズな扉の通り抜けが可能になるでしょう。
そして同じようなバリアフリー専用のものの中には、バリアフリー用のユニットバスやトイレというものも存在します。これらのユニットバスやトイレはどちらも工事費用が50万円程度と比較的高額です。
しかしながら一般的な作りの浴室やトイレから一つ一つバリアフリー仕様に交換するよりは、根本的な作り自体を変えてしまった方が結果的に安くすむ場合が多いです。したがって浴室やトイレのバリアフリーを考えている方は、思い切ってバリアフリー専用のユニットバスやトイレへの変更を考えてみるのもいいでしょう。
リフォームのポイント
バリアフリーのリフォームをする際には抑えておくべきポイントがいくつかあります。まず1つはバリアフリーのリフォームで使える具体的な予算を算出しておくことです。
当たり前ですがお金が足りないと中途半端なリフォームしかできないので、以前と家の利便性がそれほど変わらないといったことにもなる可能性があります。したがってリフォームをする時には、予算の把握はしっかりとしておいたほうがいいでしょう。
そして2つ目のポイントは、一番生活で不便だと思っている場所のリフォームを優先的に考えるということです。例えば足が不自由で車イスで生活している人の場合、家の入口から玄関までの段差をスロープにすることで、外出時等の移動が各段に楽になるのでこれは優先的に考えたいリフォームといえます。
しかしながら家の廊下に手すりを付けるリフォームに関しては、車イスで移動することが主な人の場合、必ずしも必要とはいえません。むしろ手すりが廊下のスペースを圧迫して、横幅を取りがちな車イスでの移動が逆に難しくなることもありえます。
このように住んでいる人に合わせて、何が一番必要なのかを考えると余分な費用をかけずに、リフォームをすることができるでしょう。またバリアフリーのリフォームはなるべく早く計画しておくと、いざ実行する時にスムーズにことを運ぶことができます。
もし計画が曖昧なままリフォームにふみきってしまうと、後悔してしまう可能性もあります。したがって近い内にバリアフリー設備を家に導入しようと考えている人は、事前にインターネットで下調べしておいたり、予想外の出費に備えてある程度貯金をしておくといいでしょう。
バリアフリー補助金制度
実は50万円以上かかるバリアフリーの工事を自宅に行う時には「住宅特定改修特別税額控除」という制度を使うことで、所得税を一定額控除してもらえる可能性があります。
したがって自宅の入口の段差を車イスで通りやすくするためのスロープに変更する工事や、バリアフリー専用のユニットバスやトイレを設置する工事等の、費用が高額なものがこの制度を使うことで実行しやすくなります。
ただし注意点としては、この制度が施行されている期間が、平成33年の12月31日までと定められている点が挙げられます。それゆえにこの制度を利用して工事を行いたいのならば、施行期間が終わってしまう前に見積もりや、書類などの手続きを終えておく必要があるので気を付けましょう。
バリアフリーで快適な住まいを
高齢者や障害者がストレスなく日常生活をするためにはバリアフリーは必要不可欠です。しかしながらバリアフリーのリフォームにはそれなりのお金がかかります。特に段差を排除してのスロープの設置や、専用のトイレやユニットバスの設置等は高額になりがちです。
したがってリフォームを考える際には「住宅特定改修特別税額控除」等の補助金制度も利用しつつ、バリアフリーが本当に必要な場所なのか、必要な設備なのか等をしっかりと見極めて、限られた資金内で収まるように検討しましょう。