安全にキュービクルを運用するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。高圧の電流が常に流れるキュービクルは、点検を怠ると劣化や故障を見逃し、大事故につながるリスクがあります。
今回は、キュービクルメンテナンスの基本的な考え方や、点検を怠ることで生じるリスクを丁寧に解説しています。どのような点検が必要なのかを具体的に知ることで、安心・安全な設備運用の実現に近づけるはずです。
これからキュービクルを設置する方や、日々の運用をより確実に行いたい方は、ぜひ最後までご覧ください。メンテナンスの重要性と必要な対応がきっと見えてきます。
キュービクルメンテナンスが必要な理由
キュービクルのメンテナンスは、法的義務であると同時に、安全な運用を継続するために欠かせない作業です。具体的には、次の2つの理由から定期的な点検が求められます。
- 電気事業法で義務付けられているため
- 事故やトラブルを未然に防ぐため
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説します。
電気事業法で義務付けられているため
キュービクルは、電気事業法において「自家用電気工作物」に分類されます。この電気工作物を設置した場合、電気主任技術者による定期的な保安点検の実施が義務化されており、点検を怠ることは法令違反となります。法令の遵守は企業の社会的責任であり、キュービクルを導入した以上、点検を怠ることは許されません。
特に重要なのが、点検を行う人材の資格です。点検は国家資格である「電気主任技術者」の有資格者にしか認められていないため、社内に資格者がいない場合は、外部に委託する必要があります。当然、外部委託にはコストが発生します。
また、点検の結果、部品交換や修理が必要になるケースもあるため、あらかじめメンテナンスにかかる予算を確保しておくことが重要です。
事故やトラブルを未然に防ぐため
キュービクルには常に高圧電流が流れており、リスクをゼロにすることはできません。だからこそ、日常的な点検とメンテナンスを通じて、リスクを最小限に抑える必要があります。
点検を怠ると、劣化や故障といった異常に気づけず、重大な事故につながるおそれがあります。実際に故障が発生すれば、高額な修理費用が発生する可能性もあり、本来不要だったコストを負担することにもなりかねません。
また、メンテナンス不足が原因で事故が発生した場合、社会的信用を大きく損なうリスクもあります。加えて、法令違反と判断されれば、保険の適用対象外となることもあるため、企業にとっては致命的なダメージになりかねません。
こうした被害を防ぐためにも、キュービクルの定期点検は必ず実施すべき重要な業務であると認識しておきましょう。
キュービクルメンテナンスを怠ることで生じるリスク
キュービクルのメンテナンスを怠ると、事故・トラブル・損失などの深刻なリスクを招く可能性があります。キュービクルには常に高圧の電流が流れており、完全にリスクをなくすことはできません。
だからこそ、日常的な点検によって、これらのリスクを事前に察知・軽減することが重要です。安全で安定した運用を継続するためにも、メンテナンスを怠った場合に起こりうる代表的なリスクについて理解しておきましょう。ここでは、キュービクルメンテナンスを怠ることによって生じるリスクについて解説します。
- 停電事故リスク
- 感電事故や火災拡大のリスク
- 電気代損失リスク
- 波及事故リスク
停電事故リスク
停電事故リスクとは、小動物や虫などがキュービクル内部に侵入することで感電が発生し、電力の供給が遮断されるリスクのことを指します。
キュービクルには電線やケーブルを引き込むための開口部があり、そこから小動物や虫が侵入するケースがあります。通常はネットなどで侵入防止対策が施されていますが、経年劣化によりネットが破損することもあるため、完全に侵入を防ぐことは困難です。
こうした侵入が原因で感電が発生し停電に至った場合、商業施設では営業停止、工場では生産ラインの停止といった深刻な影響が生じます。さらに、病院や介護施設においては医療機器の稼働が止まり、人命に関わる危険が発生する可能性もあります。
このような被害を未然に防ぐためにも、侵入口の点検を含めた定期的なメンテナンスが欠かせません。売上損失、納期遅延、社会的信頼の低下を防ぐためにも、日頃からの点検を徹底しましょう。
感電事故や火災拡大のリスク
感電事故や火災拡大のリスクとは、キュービクル内部の漏電や部品劣化が原因で、作業員の感電や火災の発生につながるリスクのことです。
キュービクルは24時間365日稼働しており、内部の部品は時間とともに劣化していきます。こうした劣化を放置したまま使用を続けると、絶縁不良や異常な温度上昇が起こり、感電事故や火災を引き起こす可能性が高まります。
感電事故は作業員や従業員の命に関わる深刻な問題であり、企業にとっては重大な責任が問われる事態となります。また、漏電を放置したまま運用を続けた結果として火災が発生すると、設備だけでなく人命や周囲の施設にも甚大な被害が及びます。
こうしたリスクを防ぐには、定期的に部品の状態を確認し、必要に応じて交換や修理を行う必要があります。安全性を確保し、企業としての責任を果たすためにも、メンテナンスは常に意識しておく必要があります。
電気代損失リスク
電気代損失リスクとは、劣化した部品の影響で電気の変換効率が低下し、不要な電力消費によって余分な電気料金が発生することを指します。
キュービクルの部品が劣化すると、電力の変換効率が悪化し、同じ出力を得るためにより多くの電力を必要とするようになります。その結果、無駄な電気代が発生し、気付かないうちにコストがかさんでいくのです。
特に、キュービクルは24時間365日稼働しているため、わずかな変換ロスでも長期間にわたり積み重なれば、年間で見た場合に大きな差額となって経営を圧迫する可能性があります。経営の効率化を目指すうえで、このような無駄な支出は見過ごせない要素です。
電気代の無駄を削減するためにも、定期的な点検とメンテナンスによる早期発見が重要です。
波及事故リスク
波及事故リスクとは、キュービクルの故障により発生した停電が、自社だけでなく周囲の施設にも拡がることで、広範な影響と損害を及ぼす可能性のことを指します。
キュービクルの不具合が電力会社の配電線に影響を与えた場合、同じ配電系統に接続されている他の施設にも停電が波及するおそれがあります。こうした波及事故は、自社だけでなく周囲の病院や工場などにも損害を与える可能性があるため、非常に重大なリスクです。
特に医療機関や介護施設が近隣にある場合、人命に直結する被害が発生する危険もあり、結果として多額の損害賠償請求につながることもあります。また、点検を怠っていた事実があると、保険が適用されず全額自己負担となる可能性も否定できません。
波及事故の主な原因はキュービクルの老朽化です。周囲の安全と企業の信用、経営の継続性を守るためにも、定期的なメンテナンスによってこのような重大事故を未然に防ぎましょう。
キュービクルメンテナンスに必要な資格
キュービクルの点検は、電気主任技術者の有資格者でなければ実施できません。したがって、社内に資格保有者がいない場合は、外部委託によって点検を依頼する必要があります。
ここで注意すべきなのが、業者の資格保有状況です。キュービクル点検を請け負う業者であっても、自社で資格を保有していない場合があり、その場合は資格を持つ他社へ再委託されることになります。
このようなケースでは、仲介手数料が加算されることがあるため、余計な費用が発生するおそれがあります。費用を抑えるためにも、点検を依頼する際は、業者自身が資格を保有しているかを必ず確認するようにしましょう。
不要なコストを防ぐためにも、外注先の資格確認はメンテナンス依頼時の重要なポイントです。
キュービクルメンテナンスの内容
キュービクルの安定稼働を維持するためには、定期的な点検作業が不可欠です。メンテナンスは目的や内容に応じて「月次点検」と「年次点検」の2種類に分かれており、それぞれに確認すべき項目があります。ここでは、各点検の内容について解説します。
月次点検
月次点検とは、毎月実施される基本的な保守点検で、設備の異常の早期発見を目的としています。主に確認する項目は次のとおりです。
- 回路に漏電がないかの確認
- 機器に異常な温度上昇が見られないかの確認
- 異音の有無
- 機器外観の目視点検による異常の有無
- 電圧/電流測定
月次点検は短時間で実施できる内容が中心であり、日常的な安全確保において非常に重要な役割を担っています。手間のかかる作業ではないため、安心して設備を運用するためにも、必ず継続的に実施しましょう。
年次点検
年次点検とは、1年に一度実施される精密な点検で、月次点検では把握できない内部の状態や動作の信頼性を確認することが目的です。主な点検内容は次のとおりです。
- キュービクル本体や区分開閉器などの外観確認
- 絶縁抵抗の測定による絶縁状態の確認
- 配線トラブル時に電気系統から事故箇所を切り離せるかの確認
- 蓄電設備の電圧・比重・温度の測定
- 非常用発電機の手動起動・停止と動作確認
なお、年次点検は施設内を一時的に停電させた状態で実施する必要があるため、事前のスケジュール調整が欠かせません。点検当日になって慌てることのないよう、計画的に日程を決めておくことが大切です。
キュービクルメンテナンス業者選びのポイント
キュービクルのメンテナンスを外注する際は、業者の「実績」を重視して選ぶことが非常に重要です。費用の安さだけで業者を選んでしまうと、結果的に安全性や対応力に欠けるケースもあるため注意が必要です。
キュービクルには常に高圧電流が流れており、リスクをゼロにすることはできません。だからこそ、豊富な経験を持つ業者に依頼することで、設備の安全性を高めることができます。
では、業者の経験をどのように見極めれば良いのでしょうか?その判断基準となるのが「過去の実績」です。メンテナンス実績が豊富な業者は、現場での危険箇所や注意点を熟知しており、トラブル時にも柔軟かつ的確に対応できます。
また、作業に慣れている業者は点検時間の短縮が可能で、必要な人員の見極めも的確です。その結果、無駄な人件費が発生せず、全体のコスト抑制にもつながります。
安心・安全な運用体制を構築するためにも、業者を選定する際は必ず実績を確認するようにしましょう。
キュービクルメンテナンスの費用相場
キュービクルメンテナンスの費用は、1回あたりおおよそ1万円〜5万円が相場です。ただし、これは点検のみの目安であり、修理費用や部品交換費用は含まれていない点に注意が必要です。
実際の費用は、キュービクルの規模や設置環境によって変動するため、正確な金額を知るには業者から見積もりを取ることが欠かせません。
キュービクルを運用していると、経年劣化による部品交換や、予期せぬ不具合に対する修理が必要になることがあります。こうした場合は、点検費用とは別に追加費用が発生します。
そのため、予算を立てる際は、点検費用だけでなく、キュービクルのランニングコストとして一定の金額を見込んでおきましょう。急な支出に備えて、あらかじめ余裕を持った予算計画を組むことが大切です。
まとめ
キュービクルの設置後は、電気事業法に基づき点検が義務付けられており、メンテナンスを怠ることは法令違反に直結します。定期的な点検を実施しないまま運用を続けると、感電や火災、停電などの重大事故につながるおそれがあり、従業員や周辺施設に深刻な影響を及ぼすリスクが高まります。
さらに、波及事故が発生した場合には社会的信用を大きく損ない、保険適用外となることで企業に多大な損害が及ぶ可能性もあるため、十分な注意が必要です。
こうした事態を未然に防ぎ、設備を安全かつ効率的に運用し続けるためには、法令に則った定期的なメンテナンスを徹底する必要があります。点検の外注を検討する際には、価格だけで判断するのではなく、実績や資格を備えた信頼できる業者を選定することが、安全性とコストパフォーマンスの両面で大きな差を生みます。
創業60年以上の実績を持つ小川電機株式会社では、キュービクルの設置からメンテナンス、修理・交換まで一貫対応が可能です。キュービクルに関するご相談やお困りごとがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。