電圧を変換するトランスは、さまざまな場面で電気の利用を支える設備です。特に、キュービクルを設置している工場や商業施設では、事業活動を続けるうえで欠かせない存在といえるでしょう。こうした重要な設備だからこそ、必ず知っておきたいのがPCB含有トランスに関する問題です。
本記事では、PCB含有トランスとは何かという基礎知識に加え、所有の可能性を確かめる見分け方、処分期限、処分方法と費用相場、入れ替え時に押さえたいポイントまで順に解説します。読み進めることで、PCB含有トランスへの対応に必要な基礎知識をまとめて確認できます。
PCB含有トランスを所有している可能性がある方や、企業として法令順守を徹底したい方は、期限内に対応を進めるためにぜひご一読ください。
▼この記事のポイント
- 低濃度PCB廃棄物の処分期限は2027年3月31日です。
- 銘板情報だけで判断できない場合は、絶縁油の分析が必要です。
- 処分には許可業者への依頼、行政への届出、マニフェストの交付が伴います。
- 稼働中のトランスは、処分と入れ替え用トランスの調達を並行して進める必要があります。
PCB含有トランスに関する基礎知識
PCB含有トランスを所有している場合は、処分方法と期限を確認し、速やかに対応する必要があります。法令で処分が求められているため、まずはPCB含有トランスの定義やリスクを正しく理解することが重要です。
なぜ処分が必要なのか、そもそもPCB含有トランスとはどのような設備なのか、疑問に思う方もいるでしょう。ここでは、対応の前提となるPCB含有トランスの基礎知識を解説します。
PCB含有トランスとは
PCB含有トランスとは、絶縁油にPCB(ポリ塩化ビフェニル)が使用されているもの、またはPCBが微量に混入しているものを指します。
トランスにPCBが意図的に使用されていたのは、昭和29年(1954年)から昭和47年(1972年)頃までです。この時期に製造されたトランスには、基本的にPCBが使用されています。
PCBの毒性が広く知られる契機となったのが、昭和43年に発生したカネミ油症事件です。この事件をきっかけにPCBの毒性が社会問題となり、昭和47年、当時の通商産業省による行政指導で製造が中止されました。
その後、昭和48年に制定された「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づき、昭和49年6月から製造・輸入・新たな使用が原則として禁止されました。
さらに、昭和51年10月からは、電気事業法でもPCBを使用したトランスなどの新規設置が禁止されています。一方、当時すでに設置されていた機器は、適切に管理することを条件に継続使用が認められていました。そのため、現在も稼働中の設備にPCB含有トランスが残っているケースがあります。
PCB含有トランスのリスク
PCB含有トランスの主なリスクは、PCBが人体や環境に悪影響を及ぼすおそれがあることです。PCBは難燃性、電気絶縁性、化学的安定性に優れ、電気機器の絶縁油として広く使用されてきました。しかし、人体への有害性や分解されにくい性質が明らかになり、製造と輸入が禁止されたのです。
現在はPCBの強い毒性が問題視され、法令によって処分期限が定められています。期限までに処分しなければ法令違反となるため、社会的責任を負う企業は確実に対応しなければなりません。
期限までに処分しない場合は、環境大臣または都道府県知事から改善命令を受ける可能性があります。さらに、PCB特別措置法(PCB特措法)に基づき、3年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方を科される可能性もあるため、期限の厳守が必要です。
罰則は企業だけでなく、担当者個人にも適用される可能性があります。担当者を守るためにも、法令に沿って確実に対応する必要があります。
また、災害などでPCBが流出すれば、環境汚染の責任を問われ、浄化費用を負担する危険性もあります。不要な経済的リスクを避けるためにも、法令順守は欠かせません。
PCB含有トランスの見分け方
PCB含有トランスの見分け方は、銘板情報の照合と、必要に応じた絶縁油の分析です。気付かないまま法令に違反する事態を避けるため、電気設備にトランスが使われている場合は、PCBの含有有無を必ず確認しましょう。
まず、銘板でトランスのメーカー名、型式、製造年を確認し、メーカーが公表している情報と照合します。ただし、銘板情報との照合だけで判断してはいけません。低濃度PCBは意図的に使用されたものではなくても、再生絶縁油の製造・流通・使用の過程で混入したケースがあるためです。
環境省は、絶縁油を交換できるトランスについて、平成5年(1993年)以前に製造されたものを微量PCB汚染の可能性がある機器として挙げています。昭和48年以降に製造された機器であっても、確認が必要です。
PCB含有の可能性が少しでもあれば、専門の分析機関に依頼し、絶縁油を分析してもらう必要があります。法令順守と社会的信用を守るためにも、不安が残る場合は、電気保安協会や電気管理技術者、分析機関へ相談したうえで判断してください。
PCB含有トランスの処分期限
PCB含有トランスの処分期限は、高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物で異なります。
PCB濃度は、絶縁油1kgあたり5,000mg(5,000ppm)を超えるものが高濃度です。5,000mg以下で0.5mg(0.5ppm)を超えるものは低濃度に区分されます。高濃度PCB廃棄物の処分期限は、令和5年(2023年)3月31日で終了しています。
現在、対象となるのは低濃度PCB廃棄物で、処分期限は令和9年(2027年)3月31日と定められています。
注意したいのは、期限までに十分な時間が残されていないことです。令和9年(2027年)3月までと聞くと余裕があるように感じるかもしれませんが、期限が迫るにつれて処理施設の予約が集中し、受け入れが難しくなるケースも考えられます。直前に慌てないよう、早めに対応を始めることが大切です。
PCB含有トランスの処分方法と費用相場
PCB含有トランスを処分するには、許可を受けた業者への依頼と、複数の工程の調整が必要です。具体的な進め方が分からず、費用面に不安を感じる方も少なくないでしょう。ここでは、PCB含有トランスの処分方法と費用相場を順に詳しく解説します。
PCB含有トランスの処分方法
PCB含有トランスの処分方法は、環境大臣の認定を受けた無害化処理認定施設、または都道府県知事の許可を受けた処理業者へ依頼する方法に限られます。低濃度PCB含有トランスは、誰でも処分できるものではありません。
収集・運搬を行えるのも、特別管理産業廃棄物の収集運搬業許可を取得した業者に限られます。つまり、トランス本体の調達や入れ替え工事とは別に、処分は専門の許可業者へ依頼する必要があります。
PCB含有トランスの処分には、分析、業者選定、行政への届出、運搬など、完了までにさまざまな工程があります。
判別から処分完了までは、短くても3ヶ月、状況によっては半年程度かかります。PCBの含有が判明した段階で早めに動き、無理のないスケジュールを組むことが重要です。
PCB含有トランスの処分費用相場
PCB含有トランスの処分費用相場は、重量や型式によって異なるため、一律には示せません。正確な費用を把握しなければ資金繰りに影響するおそれがあるので、まずは処分業者から見積もりを取りましょう。
見積もりは、複数社から取ることがポイントです。条件を比較すれば、割高な業者へ依頼するリスクを抑えられます。
複数社の見積もりがそろったら、内訳も確認してください。処分費用は、分析費、収集運搬費、処分費で構成されます。極端に安い見積もりでは、いずれかの費用が含まれていない場合もあるため、各項目を丁寧に確認することが大切です。
細目 | 内容 |
|---|---|
分析費 | PCBの含有有無を調べるための費用 |
収集運搬費 | 処分施設まで安全に運搬するための費用距離・数量・運搬車の種類によって費用が変わる |
処分費 | 専門施設で無害化処理を行うための費用機器の重量(kg)や絶縁油の量(L)によって費用が変わる |
環境省は、中小企業などを対象に、分析費用や処理費用の一部を助成する事業を実施しています。自治体独自の助成制度や、高効率機器への交換補助を利用できる場合もあります。費用を抑えたい場合は、活用できる補助金を事前に確認しておきましょう。
PCB含有トランスを処分する際の注意点
PCB含有トランスを処分する際は、マニフェストの交付や行政への届出など、法令に沿った手続が必要です。処分対象の範囲も含め、事前に注意点を確認しておきましょう。
ここでは、PCB含有トランスを処分する際に押さえたい注意点を詳しく解説します。
- マニフェストを交付する
- 処分の義務範囲を確認する
- 行政への届出を行う
マニフェストを交付する
マニフェストの交付とは、PCB廃棄物を他者へ引き渡す際に、排出事業者が産業廃棄物管理票を発行する手続です。法令で定められているため、必ず交付しなければなりません。
マニフェストは、廃棄物が適正に処理されたことを確認するための重要な書類です。廃棄物の種類、数量、性状などを正確に記載する必要があります。記載漏れや虚偽記載は法令違反となり、罰則の対象になるため、正しい情報を記載してください。
処分の義務範囲を確認する
PCB含有トランスの処分義務は、稼働中の機器だけでなく、使用を終えて保管している機器にも及びます。現在稼働していないトランスも処分対象です。
PCB廃棄物の規制対象には、機器が現在稼働しているかどうかにかかわらず、使用を終了して保管しているものも含まれます。稼働を停止したトランスや使用済みのトランスでも、PCBを含んでいれば特別管理産業廃棄物となり、処分義務が発生します。
使用中の低濃度PCB含有電気工作物についても、経済産業省が計画的な廃止を呼びかけています。該当する場合は、この機会に対応を検討しましょう。
行政への届出を行う
行政への届出とは、PCB含有トランスの保管・処分状況や変更事項、処分終了などを、所管する行政機関へ報告する手続です。所有者は、次の届出を行う必要があります。
- 保管及び処分状況の届出(毎年度、前年度の状況を都道府県知事などへ届け出る)
- 届出内容に変更が生じた場合の変更届出
- 処分が終了した場合の処分終了届出
使用中の自家用電気工作物にPCB汚染が判明した場合は、電気事業法の電気関係報告規則に基づき、管轄の産業保安監督部へ届け出なければなりません。稼働中のキュービクルを保有している場合は、この届出に該当するケースが多いため注意してください。
PCB含有トランス処分までの期間
PCB含有トランスの判別から処分完了までは、3~6ヶ月程度かかります。しかし、処分期限までの時間は限られています。期限が迫るなか、多くの事業者が処分を進めているためです。直前の依頼では、期限に間に合わないおそれがあります。
今後は通常よりも処分完了までに時間がかかることが予想されます。期限が近づくほど依頼が集中し、予約も取りにくくなると考えられるため、法令順守に向けて早めに対応することが重要です。
PCB含有トランスの処分期限は延長されるのか?
低濃度PCB廃棄物の処分期限が延長される可能性は、極めて低いとされています。処分期限が、PCB特措法および同法施行令によって2027年(令和9年)3月31日と定められているためです。
また、日本はストックホルム条約(残留性有機汚染物質に関する条約)の締約国です。同条約により、2028年までにPCBの環境上適正な管理を達成することが国際的に求められているため、期限が延長される余地は極めて低いといえるでしょう。
実際に、期限内処理へ向けた取り組みは強化されています。経済産業省は2024年10月31日に「第1回 低濃度PCB含有電気工作物の適正な処分の推進に向けた検討会」を開催し、2025年7月には取りまとめを公表しました。
環境省も、低濃度PCB廃棄物の処理ガイドラインの改訂や中小企業向け助成事業を通じ、期限内処理を後押ししています。こうした動きからも、処分期限が延長される可能性は極めて低いと考えられます。
PCB含有トランスの入れ替えは処分と並行して進める
PCBの含有が判明したら、処分だけでなく、新しいトランスへの入れ替えも並行して進める必要があります。稼働中のトランスを処分すると、代替機を設置しない限り電気を使用できなくなるためです。
そのため、「古いトランスの処分」と「新しいトランスの調達」は同時に進めなければなりません。特に見落とされやすいのが、新しいトランス本体の納期です。ここでは、入れ替えを円滑に進めるための重要なポイントを解説します。
期限に向けて入れ替え需要は集中する
処分期限が近づくにつれ、トランス交換の依頼は一時期に重なると考えられます。2027年3月の期限に向けて需要がさらに高まれば、処理施設の予約が取りにくくなるだけでなく、トランス本体の確保も難しくなる可能性があります。
また、一般的なトランスは納品まで5~6ヶ月以上かかります。処分に必要な期間と合わせて考えると、時間に余裕があるとはいえません。
だからこそ、処分業者へ相談すると同時に、トランス本体の調達先も早めに確保しておくことが重要です。
在庫の有無で納期は大きく変わる
在庫の有無は、トランス本体の納期を大きく左右する要素です。在庫品であれば、確認が取れ次第すぐに出荷できるため、納期を大幅に短縮できます。
小川電機株式会社は、主要容量帯である単相50~300KVA、三相75~750KVAを中心に在庫を保有しています。在庫品であれば最短での出荷に対応できますので、PCB含有トランスの処分に伴う入れ替えをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
種別 | 取扱製品 | 在庫品 |
|---|---|---|
単相 | 50~500KVA | 50~300kVA |
三相 | 75~2,000KVA | 75~500kVA |
短納期でも品質と保証は妥協しない
短納期でも妥協してはいけないのが、トランスの品質と保証です。PCB含有トランスには処分期限があるため、納期を優先する方は少なくありません。しかし、トランスは長期間使用する設備であり、品質が確保されていなければ、入れ替え後に不具合や問題が生じるおそれがあります。
小川電機株式会社が取り扱うトランスは、JIS・JEC・JEMの各規格に則して設計・製造・試験されており、規格に沿った安全性が確保されています。保証期間は出荷から1年で、在庫保有分も当社出荷ベースで1年間のため、納品後も安心して使用できます。
さらに、提案から配送、設置に関するアドバイス、図面や書類の作成まで対応しています。施工業者との打ち合わせに必要な資料を、スムーズに用意できることも大きなメリットです。
期限に間に合う、高い品質を確保したトランスをお探しの場合は、必要な情報をご提示ください。在庫を確認し、可能な納品日をご案内しますので、少しでも気になる方はお気軽にご相談ください。
まとめ
低濃度PCB廃棄物は、2027年(令和9年)3月31日までに処分しなければなりません。期限内に処分しなければ法令違反となり、場合によっては厳しい罰則を科される可能性もあります。社会的責任を負う企業には、迅速な対応が求められます。
処分対象は、稼働中のトランスだけではありません。稼働していないものも含まれるため、使用していないトランスでも、分析によってPCBの含有が判明すれば処分が必要です。
処分期限があるため処分に目が向きがちですが、稼働中の機器を処分した後には、新しいトランスが必要です。処分と調達は、必要な期間を見込みながら同時に進めなければなりません。
一般的なトランスは、納品までに3~6ヶ月以上かかります。期限が迫るにつれて需要が集中すれば、納期の長期化や在庫確保の難化も予想されます。処分と調達の双方に必要な期間を見込み、処分期限に間に合わせるためにも、できるだけ早く準備を始めましょう。
小川電機株式会社は、主要容量帯の単相50~300KVA、三相75~750KVAを中心に在庫を保有しています。在庫品は最短での出荷に対応できるため、入れ替え用トランスの確保でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

