トランスの異常は、停電や事故につながる前に点検し、必要に応じて交換することが重要です。工場や商業施設で電気が使えなくなると、営業や生産が止まり、売上の減少や納期遅延を招くおそれがあります。異音や焦げた臭い、変形、異常発熱などのサインを見逃さず、早めに対応しましょう。
今回は、トランス交換が必要なサイン、交換しないリスク、工事の流れ、費用、注意点を解説します。トランスを管理する企業の担当者や、安全な設備環境を維持したい方は、交換時期を判断する際の参考にしてください。
▼この記事のポイント
- 異音、焦げた臭い、変形、異常発熱、電圧低下などは点検を急ぐべきサインです。
- トランスは使用開始から20年程度を交換検討の一つの目安にします。
- 交換工事では停電が必要なため、納期と工事日を含めた早めの計画が重要です。
- PCB含有トランスは期限と許可要件に従って処分します。
この記事の監修者
杉本 隆樹
小川電機株式会社 マーケティング本部
小川電機東大阪エリアにて、約23年にわたり営業として従事。 空調や照明からトランス、キュービクル、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。 トランスの導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
押さえておくべきトランスの基礎知識
トランスは、交流電圧を変換し、電気回路を絶縁する重要な機器です。企業が設備として使用する場合、役割と交換の必要性を理解しておくと、異常の早期発見や停電リスクの低減につながります。
まずは、トランスの役割と、交換が必要になる理由を確認しましょう。
トランスの役割
トランスの主な役割は、交流電圧の変換と、電気回路を安全に切り離す絶縁です。身近な例では、ACアダプターにもトランスが内蔵されています。
家庭用コンセントは100Vですが、機器ごとに必要な電圧は異なります。トランスが機器に合った電圧へ変換することで、電気を適切に使用できます。
工場や商業施設など多くの電気を使う施設では高圧受電契約を結び、受変電設備を設けます。その代表が、必要な機器を金属製の箱に収めたキュービクルです。
キュービクルの内部には、トランスのほか、電気を安全に受けて各設備へ送るための機器がまとめられています。施設側で高圧を使用可能な電圧へ変えるうえで、トランスが重要な役割を担います。
一般家庭や小規模事務所の低圧受電では、電柱側の設備で低圧へ変換された電気を使用します。一方、高圧受電では受電側で低圧へ変換する必要があるため、施設内に受変電設備を設置します。
つまり、高圧で受けた電気を施設内の照明や機械で使える状態にするために、受電側のトランスが必要です。受電方式の違いを理解すると、トランスが停止した場合の影響も想像しやすくなります。
キュービクルにもトランスが組み込まれており、施設で電気を使うために欠かせない役割を担っています。トランスの状態は、キュービクル全体と施設の電力供給に直結します。
トランス交換が必要な理由
トランスに異常や故障が生じたときは、安全な電力供給を保つために修理または交換が必要です。使用できているように見えても、異常を放置すると事故へ発展するおそれがあります。
異常が軽いうちに点検できれば、故障や事故へ進む前に対応方法を検討できます。外見上は動いていても、安全な状態とは限りません。
キュービクル内のトランスに異常がある場合は、特に早急な対応が必要です。放置するとキュービクル全体の故障につながり、施設で電気を使えなくなる可能性があります。
電力供給が止まれば、キュービクルにつながる照明や設備も使用できなくなるおそれがあります。施設への影響を小さくするには早期発見が重要です。
安全に電気を使える環境を維持するため、点検結果に応じて適切な時期に交換してください。
トランスを交換しないことで生じるリスク
キュービクルを設置しているとしては、工場や大型商業施設などが多いです。このような施設において電気が使用できなくなると売上減少につながるため、必要に応じて交換しなければなりません。安全な環境構築のためにも、健全な経営を続けていくうえでもトランスの交換は重要になります。
また、事故や災害が発生した場合、トランスを交換しないことが原因で防災設備などが稼働しなかったことが判明すると、賠償責任を問われる危険性もあります。賠償問題に発展すると、社会的な信用を失うだけでなく、経済的にも大きなダメージを受ける可能性があることを忘れないでください。
トランス交換のタイミング
トランス交換において明確なタイミングは存在しません。しかし、押さえておかなければいけないポイントが存在します。それが、寿命と故障サインです。
特に、故障サインを見逃さないことは安全な運用において欠かせないので、代表的な故障サインを覚えておくことは大切になります。ここでは、トランス交換のタイミングについて詳しく解説します。
トランスの寿命
トランスの寿命は、一般的に20年程度とされています。ただし、これは1つの目安でしかありません。なぜなら、トランスは使用状況や設置環境により、部品の劣化具合が変化するからです。そのため、故障リスクを軽減するには定期的な点検を実施したうえで、必要な時期に交換しなければなりません。
この年数を1つの目安として覚えておいて、交換が必要になったときに資金に困ることがないように、予め予算を組んで備えておきましょう。
覚えておきたい故障サイン
トランスが故障した場合、修理で対応できなければ交換が必要です。しかし、故障しても発見が遅れることがあります。なぜなら、外見からは異常を発見できないケースがあるからです。そのため、故障サインを見逃さないことが重要です。
ここで、ポイントになるのが、次の3点です。
- 音と臭い
- 見た目と温度
- 性能の異常
音と臭い
いつもと違う稼働音が聞こえる場合は故障している可能性があります。中でも、普段よりも音が大きい場合や、いつもは聞こえない音が聞こえる場合は注意してください。
また、いつもと違う臭いがする場合も気を付けなければなりません。特に、焦げた臭いがする場合は、内部の絶縁紙や樹脂の過熱、焼損の危険性があるので早急な対応が必要です。
見た目と温度
ケースやタンクに変形や膨らみを発見した場合も、故障している危険性があるため注意が必要です。
また、異常な高温状態にある場合も内部が過熱状態にある可能性があるので注意してください。内部が過熱状態にあると、場合によっては煙が上がることもあります。
このような状態を放置しておくと、火災や事故の発生につながる危険性があるので早急に対応してください。
性能の異常
性能に異常を感じた場合は、業者に連絡して早急に点検してもらう必要があります。中でも、電圧低下やブレーカーの頻繁なトリップが起こる場合は注意しなければなりません。
状況によっては、一時的なものと判断してしまうケースもありますが、対応が遅れることで本格的な故障につながったり、事故につながったりする危険性があるため、異常を見過ごさないことが重要です。
性能に異常を感じた場合は、リスクを軽減するためにも早急に業者に連絡して点検を実施してください。
トランス交換の流れ
トランスの交換を行う際は、感電や短絡事故を防ぐために停電させる必要があります。なお、停電時間は基本的に数時間から半日程度とされていますが、工事内容や設備規模によって変わるため、事前の打ち合わせで作業時間の確認を行うことが重要です。
流れとしては、既存トランスを取り外してから新しいトランスを設置していきます。交換を終えたら動作確認を行い、問題がなければ工事は終了です。
ここで注意しておきたいポイントは、あくまで上記は工事当日の流れということです。当然ですが、新しいトランスが届くまでは作業を開始することはできません。しかし、新しいトランスが届くまでには国内メーカーの標準品で5~6ヶ月程度、大型・特注仕様の場合で6~8ヶ月以上かかります。
分類 | 納期の目安 |
|---|---|
標準品(国内メーカー) | 約5~6ヶ月 |
大型・特注仕様 | 約6~8ヶ月以上 |
トランスが手元に届くまでは工事ができないため、リースなどで対応する必要がありますが、その分コストが膨らむため注意が必要です。近年では、トランスの需要増加と資材不足が原因となり、さらに納期が長期化する傾向にあります。交換を実施する際には、この点を理解しておかなければなりません。
ここでポイントになるのが、在庫を抱えている業者への依頼です。トランスの在庫を抱えている業者に依頼すれば、トランスの納期を大幅に短縮できます。余計な費用を支払わないためにも、早急な対応が必要な場合は在庫を抱えている業者への依頼を心がけてください。
小川電機株式会社では、単相50~300kVA、三相75~500kVAを在庫しております。該当する場合は最短で翌日出荷が可能です。
種別 | 取扱製品 | 在庫品 |
|---|---|---|
単相 | 50~500KVA | 50~300kVA |
三相 | 75~2,000KVA | 75~500kVA |
急な対応を迫られている場合は、お気軽にご相談ください。
トランス交換にかかる費用
トランス交換にかかる費用は、容量や設置場所によって異なります。
特に、設置場所は重要です。なぜなら、設置場所によってはクレーンを使っての搬入が必要になることがあるからです。クレーンを使用する場合は、クレーンだけでなくオペレーターも必要になるので、人力での搬入と比較すると費用が高くなります。
このような背景があるため、正確な費用の把握には業者からの見積もりが欠かせません。また、仮設電源を設置すると工事費用は更に膨らみます。そのため、正確な工事費用を把握するには見積もりの前に、仮設電源を設置するのかどうかも伝えておかなければなりません。
なお、経験豊富な業者に依頼すれば状況に応じた適切なプランを提示してくれるので、打ち合わせ時に予算と希望を伝えておきましょう。
トランスを交換する際の注意点
トランスの交換を実施する前には、理解しておかなければいけないことがあります。これらのポイントを理解しておかないと、余計な費用がかかる可能性があるだけでなく、知らないうちに法令違反をしてしまう危険性があるため、必ず理解したうえでの対応が重要です。
ここでは、トランス交換の注意点について詳しく解説します。
- 停電への対応
- スケジュール管理
- 古いトランスの処分方法
停電への対応
トランス交換を行う際には、安全性を高めるうえで停電させる必要があります。そのため、停電への対応が必要です。
場合によっては休日に合わせて交換作業を実施できるケースもありますが、24時間稼働の工場や病院などは停電させることができません。このような場合は、仮設のキュービクルや発電機といった仮設電源の設置で対応します。
どのような仮設電源を選択するのかによって費用も変わるため、状況に応じた選択が重要です。
スケジュール管理
トランス交換は、手元に新しいトランスがなければできません。そのため、新しいトランスがどれくらいで届くのかによって、工事が終わるまでの期間が決まります。
しかし、トランスが届くまでには少なくない時間がかかるため、早く工事を終わらせるには新しいトランスをどれだけ早く手元に用意するのかが重要です。
ここでのポイントが、在庫を抱えている業者への依頼です。在庫があれば、数日で新しいトランスを手に入れることができます。そのため、正確なスケジュール作成には新しいトランスがいつ届くのかを把握しておく必要があります。
小川電機株式会社では、単相50~300kVA、三相75~500kVAを在庫しているので、該当する場合は最短で翌日出荷が可能です。問い合わせ時に必要な情報をご提示いただければ、在庫を確認したうえで、可能な納品日をお伝えすることもできるのでスケジュール作成がしやすくなります。
少しでも気になる点があれば、お気軽にお問い合わせください。
古いトランスの処分方法
現在、稼働中のトランスにはPCBが含有されているケースがあります。PCBは人体や環境に悪影響を及ぼすため、法令により処分しなければいけないことが決定しています。なお、低濃度PCB廃棄物の処分期限は2027年3月31日です。
ここでポイントになるのが処分方法です。PCB含有トランスの処分は、環境大臣の認定を受けた無害化処理認定施設、または都道府県知事の許可を受けた処理業者へ依頼する方法に限られ、誰でも処分できるわけではありません。また、収集や運搬は、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を取得した業者に限られています。
そのため、古いトランスにPCBが含有している場合は、処分を専門の許可業者へ依頼しなければなりません。法令順守のためにも、正しい処理方法が必要になることを忘れないでください。
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まとめ
トランスの異常を放置すると、故障につながるだけでなく事故につながる危険性もあるため、早急な対応が必要です。
キュービクル内のトランスが故障すると電気が使えなくなるおそれがあり、復旧まで通常の経営を行うことができません。つまり、売上が減少してしまうということです。そのため、トランスの交換は早急に行う必要があります。
しかし、国内メーカーに注文しても新しいトランスが届くまでには5~6ヶ月程度かかります。大型・特注仕様になると6~8ヶ月以上かかるので、早期復旧を目指すには在庫を抱えた業者への依頼が欠かせません。
小川電機株式会社は、主要容量帯の単相50~300kVA、三相75~500kVAを中心に在庫を保有しています。在庫品であれば、最短での出荷に対応できるため、入れ替え用トランスの確保でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
杉本 隆樹
小川電機株式会社 マーケティング本部
小川電機東大阪エリアにて、約23年にわたり営業として従事。 空調や照明からトランス、キュービクル、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。 トランスの導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
