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キュービクルの選定には低圧側の設備容量の把握が不可欠で、既設更新と新設で手法が異なります。

既設更新では点検報告書や1年分の電気使用量から最適な容量を見極め、新設時には設計業者へ依頼して適切なトランス容量や本体サイズを決定します。

この記事の監修者

前田 恭宏

前田 恭宏

小川電機株式会社 経営企画室

1級電気施工管理技士 2級建築施工管理技士

電材業界で40年以上にわたり営業として従事。 空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。 キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。

1. キュービクル(高圧受電設備)とは?

キュービクル(高圧受電設備)は、電力会社から送られる6,600Vの高圧電気を施設内で使える100Vや200Vや400Vに降圧する設備であり、50kW以上の高圧受電施設に設置が義務付けられています。内部には遮断器や変圧器、保護継電器などが収められ、安全かつ安定した電力供給を担っています。

選定において最も重要なのは変圧器(トランス)の容量です。小さすぎれば容量オーバーによる停電や事故を招き、大きすぎれば無駄な初期・ランニングコストが発生します。そのため、施設の電気使用状況に最適な容量を見極めることが、安全運用とコスト削減の両立に絶対条件となります。

キュービクルの基本機能と役割

キュービクルとは、正式名称を「キュービクル式高圧受電設備」と呼びます。電力会社から送られてくる6,600Vの高圧電気を受電し、施設内で使用できる100Vや200Vの低圧電気に降圧(変圧)するための機器一式を、金属製の箱(キュービクル)内に収めた設備です。

電気を大量に使用する施設(契約電力50kW以上の高圧受電契約を結ぶビル、工場、病院、商業施設など)では、キュービクルの設置が義務付けられています。

キュービクルの中には、電気を安全かつ安定して供給するために以下のようなさまざまな機器が組み込まれています。

機器

概要

断路器(DS)・遮断器(CB/VCB)

事故電流を遮断したり、回路の開閉を行ったりする安全装置。

変圧器(トランス)

高圧(6,600V)を低圧(100V/200V)に変換する核心部。

保護継電器(リレー)

漏電や短絡などの異常を検知するセンサー。

進相コンデンサ・直列リアクトル

電気の効率(力率)を改善するための機器。

なぜキュービクルの適切な選定が重要なのか?

キュービクルを選定する際、最も重要となるのが「トランス(変圧器)の容量」です。

トランス容量が小さすぎると、電化製品や産業用機械を同時に使用した際に許容量を超え、ブレーカーの遮断や過熱事故、最悪の場合は停電を引き起こします。一方で、必要以上に大きな容量のトランスを選んでしまうと、初期の導入コスト(イニシャルコスト)が無駄に跳ね上がるだけでなく、後述する「電気の無駄(無負荷損)」が発生して毎月のランニングコストまで高くなってしまいます。

つまり、建物の電気使用状況にぴったり合った適切な容量のキュービクルを選定することが、安全運用とコスト削減の双方において極めて重要なのです。

2. キュービクル選定の前提知識:低圧側設備の種類

キュービクルの選定を始める前に、まずは施設内で使われている「低圧側の設備」について理解しておく必要があります。施設内の電気設備は、大きく分けて「単相(1φ)」と「三相(3φ)」の2つの種類に分類されます。

単相100V/200V設備(1φ)

単相(たんそう)回路は、主に照明機器、壁のコンセント、パソコン、一般的な事務機器などに使用される電気です。

家庭用のコンセントと同じイメージで、電圧は100V(一部の家庭用エアコン等で200V)が用いられます。キュービクル内では「単相トランス(電灯トランス)」によって電圧が落とされ、これらの設備へ供給されます。

三相200V設備(3φ)

三相(さんそう)回路は、主に業務用パッケージエアコン、給排水ポンプ、エレベーター、工場の生産機械や加工機など、大きなパワーを必要とする機器に使用されます。

効率よく大電力を送ることができるため、産業用・業務用設備として広く普及しています。キュービクル内では「三相トランス(動力トランス)」を用いて電圧をコントロールします。

キュービクルを選定する際は、これら「単相(電灯)」と「三相(動力)」のそれぞれで、施設全体としてどれだけの電気容量が必要なのか(kWまたはkVA)を正確に把握することが最初のステップとなります。

3. 【既設キュービクルの更新】選定アプローチと手順

現在すでにキュービクルを運用しており、老朽化や法定耐用年数の経過に伴って更新工事(入れ替え)を行う場合、ゼロから設計し直す必要はありません。既存の運用データを活用できるため、効率的な選定が可能です。

更新工事における検討ルートは、大きく分けて「現状維持」か「容量の変更(増設・減設)」かの2択となります。

ステップ1:主任技術者の「年次点検報告書」を確認する

キュービクルを設置している事業場では、自家用電気工作物として電気保安協会や個人で委託している電気主任技術者様による定期点検(月次点検・年次点検)が行われています。

更新の検討を始める際は、まず主任技術者様から提出されている「年次点検報告書」を確認しましょう。報告書には、現在のキュービクルに設置されているトランスの規格、容量(kVA)、使用年数、絶縁抵抗値、日々のデマンド値(最大電力使用量)などが詳細に記録されています。

まずはこの報告書をベースにして、主任技術者様と「現在の設備構成のままで問題ないか」を協議することからスタートします。

ステップ2:2つの選択肢(現状維持 or 増減設)から方針を決める

  • 【選択肢A】現状維持で更新する:施設の規模や導入している設備機器に大きな変更がなく、日々の運用で容量不足や著しい電気の余剰が発生していない場合は、現状維持(既存と同じトランス容量・構成)で選定を進めます。既存のキュービクルの仕様書や年次点検報告書に記載されている「単相トランス〇〇kVA」「三相トランス〇〇kVA」という数値をそのまま踏襲して同等品を選定するため、計画が最もスムーズに進行します。
  • 【選択肢B】トランス容量の増設・減設を検討する:事業内容の変化や施設の改修に伴い、設備の規模が変わっている(あるいはこれから変わる)場合は、トランス容量の増減を検討しなければなりません。

ケース

概要

容量の「増設」が必要なケース

工場に新しい生産ラインや加工機械を導入する

店舗やオフィスのフロアを拡張し、大型空調機を増定する

EV(電気自動車)用急速充電器などの大電力設備を新設する

※現状のトランス容量に余裕がない場合、ブレーカーのトリップや機器の不具合を防ぐためにトランスの容量アップが必須となります。

容量の「減設」が可能なケース

工場のラインを縮小・撤去した

テナントが退去し、電気の使用量が大幅に減った

施設全体のLED化や最新省エネ機器への切り替えが完了した

【重要】更新時における「省エネ効果」と電気使用量の確認

既設キュービクルの更新において、非常に多くの事業主様が見落としがちな重要ポイントがあります。それは「過去20〜30年の間に、世の中の電気設備は飛躍的に省エネ化している」という事実です。

20〜30年前の設備と現代の設備の電気使用量の違い

例えば、20年前の蛍光灯照明をすべて最新のLED照明に切り替えたり、15〜20年前の古い業務用エアコンを最新のインバーター空調に入れ替えたりしている場合、施設全体の電気使用量(ピーク時の消費電力)は導入当時と比べて30%〜50%近く削減されているケースが珍しくありません。

もし「設置当初の容量だから」という理由だけで、20年前と同じ大容量のトランスを選んでしまうと、実際の電気使用量に対して過剰なスペック(過大設備)となってしまいます。

なぜ過大設備は良くないのか?(トランスの「ロス」問題)

トランスは、電気を使用していなくても電源が入っているだけで常に一定の電力(熱など)を消費しています。これを「無負荷損(鉄損)」と呼びます。必要以上に大きなトランスを設置し続けると、この「無負荷損」による無駄な電気代を毎月払い続けることになります。

さらに、現在の最新トランスは「トップランナー変圧器(省エネ基準を満たした高効率トランス)」の設置が義務付けられています。古いトランスから最新のトップランナー変圧器へ更新するだけでも、機器自体の損失(ロス)が大きく低減されます。

1年分の電気代請求書(kWh)を精査しよう

そのため、更新時には「電力会社からの毎月の電気明細書(請求書)を直近1年間分」しっかりと確認・検証することを強くおすすめします。

なぜ1年間分が必要かというと、エアコンを酷使する夏場(7〜8月)や冬場(1〜2月)と、過ごしやすい春・秋とでは電気の使用量(kWh)および最大需要電力(kW/デマンド値)が大きく変動するからです。

1年間のピーク電力(最大デマンド値)を確認し、現状の電気使用量に対してトランス容量が適正かを検証しましょう。「実は現状の7割程度のトランス容量でも十分にカバーできる」と判明した場合は、トランスの「減設(ダウンサイジング)」を行うことで、機器の購入コストだけでなく、将来にわたる基本料金や電気の損失を削減できます。

4. 【新設キュービクル】選定アプローチと手順

建物を新築する場合や、これまで低圧契約(50kW未満)だった施設を拡張して新たに高圧受電契約を結ぶ場合は、既存の運用データが存在しないため「ゼロベースでの新設設計」となります。

新設時の選定は、以下のプロセスを踏んで慎重に進めていく必要があります。

【新設時の選定プロセス】

  1. 電気を必要とする全設備容量(低圧側)を把握する
  2. 電気設計の専門会社へ設計を依頼する
  3. トランス容量からキュービクルの「本体サイズ」を決める
  4. 設置スペース・搬入経路を確認する

ステップ1:電気を必要とする全設備容量(低圧側)を把握する

まずは、新設する建物・施設内で使用する予定の「すべての電気機器」を洗い出し、それぞれの「消費電力(kWまたはkVA)」をリストアップします。

種別

単相設備リストの例

ベース照明、非常灯、間接照明などの合計容量

コンセント設備(PC、OA機器、給湯室家電などの想定利用分)

換気扇、小規模ファン

三相設備リストの例

ビル用マルチエアコン、パッケージエアコンの室外機

給排水ポンプ、ファン、ブロワー類

エレベーター、自動ドア、機械式駐車場

工場用加工機械、コンプレッサー、溶接機など

これらを「単相」と「三相」に分けて集計し、「全設備容量(負荷容量の合計)」を割り出します。

ステップ2:電気設計の専門会社へ設計を依頼する

全設備容量が算出できたら、そのデータを基にキュービクルの設計を行います。ただし、新設の場合は「全設備容量の合計=トランスの容量」とはなりません。施設内にあるすべての電気機器が「同時に・100%の出力で・一斉に動く」ということは基本的にないためです。

そのため、新設時には電気設備設計事務所や電気工事会社、あるいはキュービクル専門メーカーなどの「設計・計算ができるプロ」に設計を依頼する必要があります。

専門業者は、集計された全設備容量に対して以下の要素を加味して正確なトランス容量を導き出します。

要素

概要

需要率(じようりつ)

設備全体のうち、同時に使用される最大割合(例:ビルなら50〜70%程度など)。

不等率(ふとうりつ)

複数の負荷群間で、ピーク時がどれくらいズレるかを示す割合。

総合力率(りくりつ)

電気機器が交流電力をどれだけ効率よく仕事に変換できているかの割合。

将来の負荷増設計画

将来的に事業を拡大した際、設備を追加する余地を残すかどうかの余裕率。

これらを総合的に計算式に当てはめ、「単相トランス〇〇kVA」「三相トランス〇〇kVA」という最適な定格容量を算定します。

ステップ3:トランス容量からキュービクルの「本体サイズ」を決める

トランスの容量が決まると、次にキュービクル本体(筐体/キャビネット)の大きさを決定します。

キュービクルの大きさは、内部に収納するトランスの容量(kVA)や数、遮断器のサイズ、機器の配置スペースによって決定されます。

トランス容量と本体サイズの関係

  • トランスの容量(kVA)が大きくなればなるほど、トランス自体の物理的な外形寸法と重量が増加します。
  • これに伴い、それを納めるキュービクルの箱(PF・S型、CB型など)の寸法(幅・奥行き・高さ)や面の数(単面、2面、3面構成など)も大きくなります。

ステップ4:設置スペース・搬入経路を確認する

新設時には、キュービクル本体の大きさを決めるのと並行して、以下の設置環境を考慮することが必須です。

設置環境

概要

設置場所の確保

屋上、敷地内の地上(屋外)、あるいは電気室(屋内)のどこに配置するか。

法定離隔距離の確保

建築基準法や消防法に基づき、キュービクルの周囲には点検や換気のための離隔距離(壁や障害物から一定のスペース)を空ける必要があります。

搬入ルートの確認

トランスやキュービクルは非常に重く大きいため、クレーン車やフォークリフト、トラックが搬入作業できるルートが確保されているか確認が必要です。

新設の場合は、トランス容量だけでなく「建物の配置計画や構造に収まるか」まで含めて設計業者と綿密な打合せを行うことが成功の秘訣です。

5. キュービクル選定に関するよくある質問

専門用語もわからず、主任技術者様や管理会社様や電気工事会社様や建築業者様の言いなりになりがちですが……色々な質問に対して当社の考え方や実際行動した内容をQ&Aにまとめましたので、参考にしてください。

Q1:キュービクルの選定は誰がするのですか?

回答:基本は企業内設備担当者様がされる事が多いと思います。設備担当者様がおられない場合は、既設設備容量や新設設備容量に詳しい業者様にお願いされる事が多い様に思います。

Q2:電気の使用量はどの様に調べたら良いでしょうか?

回答:基本は電力会社様からの毎月請求書が届くと思いますが、その請求書に記載はあると思います。

Q3:年次点検報告書とありますが、月次点検報告書ではダメですか?

回答:どちらも法律で決められた内容が記載されている報告書にはなりますが、電気を停電させて詳しく調べて作成されるのが年次点検報告書になります。

月次点検報告書は毎月目視を中心に調べることになり、簡易の報告書となります。どちらもあるのであれば、年次点検報告書を提出ください。

Q4:設計業務とはどの様な事でしょうか?

回答:キュービクル内の変圧器(トランス)の容量を決めるときに、設備容量全ての合計では無駄が大きくなり、また過少設備になれば停電になり安定した電気供給は出来なくなります。無駄のない、少し余裕を持った変圧器(トランス)容量を選定することです。

Q5:設計業務は誰にお願いするのでしょうか?

回答:保安管理を委託している主任技術者様や設備機械メーカー様や通常メンテに入られている電気工事会社様が中心になりますが、1級建築士の資格を持たれている建築会社様や設計会社様などにお願いすると良いと思います。

6. キュービクル選定のまとめと注意点

キュービクルの選定方法について、既設更新と新設の違いを中心に解説してきました。最後に、選定時に押さえておくべきポイントを整理しておきましょう。

既設更新と新設の選定ポイント比較

項目

既設更新(リニューアル)

新設(新規設置)

前提となる情報

年次点検報告書・1年間分の電気請求書

各種低圧電気設備の定格容量リスト

主な手順

①現状維持か増減設かの判断②毎月の電気使用量(kWh)から最適容量の検証

①設備容量の集計②設計会社への計算・設計依頼
③最適な容量の設定

重要な着眼点

省エネ機器への変更に伴う「減設」の可能性(コスト削減チャンス)

将来の増設見込みと、需要率・力率を考慮した設計

サイズの決定

既存の設置スペース・台座に収まるか(高効率化で省スペース化できる場合も)

設計されたトランス容量+設置場所の消防法・離隔距離を考慮

成功させるためのチェックリスト

ポイント

概要

主任技術者様との密な連携

更新時の点検報告書の読み解きや、日々のデマンドデータの分析には電気主任技術者様の意見が不可欠です。

最新の省エネ技術(トップランナー変圧器)の活用

古いトランスからの更新は、電気代(損失)を劇的に減らすチャンスです。

電気使用量(kWh)の1年分のチェック

季節によるピーク変動を見極め、過大設備にならないように注意しましょう。

信頼できる電気工事会社・設計パートナーへの相談

新設はもちろん、更新工事においても「現場の搬入条件」や「将来の運用」まで考慮して提案してくれる専門業者を選定することが大切です。

キュービクルは、一度導入すれば20年〜30年という長期間にわたって施設の安全と電力を支え続ける「建物の心臓部」です。新設・更新のどちらにおいても、目先の導入コストだけでなく、将来の電気代やメンテナンス性まで見据えた最適な容量・機器選定を行いましょう。

 キュービクルを安心・安全に運用するためには、適切な選定が欠かせません。信頼できる業者を選び、実績に基づいた容量選定を行い、将来の電力需要を見越した計画を立てることが重要です。

創業60年以上の実績を誇る小川電機株式会社では、キュービクルの容量選定から設置後の点検、部品交換・修理まで、幅広く対応しています。安心・安全な電力環境を提供するため、ぜひご相談ください。

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電材業界で40年以上にわたり営業として従事。 空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。 キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。

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