電気設備の新設や改修(更新)を検討する際、避けて通れないのが「キュービクルの容量選定」です。
「自社施設に必要なキュービクルの容量(kVA)がわからない」「設備容量の合計数値をそのままトランス容量にしていいのだろうか?」このような疑問を抱く施設管理者や電気担当者の方も多いのではないでしょうか?
結論から言うと、必要なキュービクルの容量は「設備全体の負荷計算」と「需要率(稼働率)」を正しく導き出すことで正確に決定できます。すべての設備が同時に100%の力で動くわけではないため、実際の使用状況に合わせた計算が不可欠だからです。
本記事では、キュービクルの基本知識から、容量の正体であるトランス容量の考え方、負荷計算と需要率を用いた具体的な選定手順(新設・既設更新の違いを含む)まで、電気の専門知識がない方にもわかりやすく徹底解説します。
▼この記事のポイント
- キュービクルの容量(kVA)は内部の変圧器容量の合計で、契約電力50kW以上の施設に設置が必要となる。
- 必要な容量は「負荷計算(全設備の合計)×需要率(同時使用率)」で算出し、合計設備容量=トランス容量にはならない。
- 需要率(%)=最大需要電力÷全設備容量×100。全設備100kW・ピーク60kWなら需要率60%である。
- 負荷計算では三相(動力)は力率80〜90%の電力ロスを補正し、単相(電灯)は容量をそのまま積算する。
- 選定の手順は新設なら設備設計者が増設余裕10〜20%で決定、既設更新なら電気主任技術者と最大デマンド実績から決定する。
この記事の監修者
前田 恭宏
小川電機株式会社 経営企画室
電材業界で40年以上にわたり営業として従事。 空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。 キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
1. キュービクル(高圧受変電設備)とは?
キュービクル(正式名称:キュービクル式高圧受変電設備)とは、電力会社から送られてくる6,600Vの高圧電気を、工場やビルなどの施設で利用できる100Vや200Vの低圧電気に降圧(変換)する設備のことです。
金属製の箱(キュービクル)の中に、変圧器(トランス)をはじめ、遮断器、断路器、保護継電器などの機器が一括して収められています。
なぜキュービクルが必要になるのか?
一般家庭や小規模な店舗では、電力会社側が降圧した「低圧電力」を引き込むため、キュービクルは不要です。
しかし、契約電力が50kW以上となる中規模〜大規模な施設(オフィスビル、工場、商業施設、病院、学校など)では、高圧で電気を一括受電する仕組み(高圧受電契約)を結ぶ必要があります。この高圧電気を安全かつ効率的に自社施設内で使うための「専用変電所」こそがキュービクルなのです。
2. キュービクルの「容量」とは何を指すのか?
キュービクルの見積もりや仕様書を見ると、「〇〇kVA(キロボルトアンペア)」という単位で容量が記載されています。この「キュービクルの容量」とは、一体何を指しているかを説明していきます。
- キュービクルの容量=「内部にあるトランス(変圧器)容量の合計」
キュービクルの容量とは、内部に設置されているトランス(変圧器)の定格容量の合計値を意味します。
キュービクルの中には、用途に合わせて主に以下の2種類のトランスが格納されています。
変圧器の種類 | 変圧(電圧) | 給電系統 | 主な用途・接続機器 |
|---|---|---|---|
|
単相変圧器(1φ) |
単相 100V / 200V |
電灯系統 |
照明器具、コンセント、小型家電 など |
|
三相変圧器(3φ) |
三相 200V / 400V |
動力系統 |
工場内のモータ、コンプレッサー、大型空調機など |
例えば、キュービクル内部に「単相100kVA」のトランスと「三相150kVA」のトランスが搭載されている場合、そのキュービクルの全体の容量は250kVAとなります。つまり、適切なキュービクルを選ぶということは、最適なトランスの容量を決定することと同義なのです。
3. トランス容量を決める鍵「負荷計算」と「需要率」
それでは、キュービクルに必要なトランス容量はどのようにして決めればよいのでしょうか?ここで非常に重要となる概念が「負荷計算」と「需要率」の2つです。
負荷計算とは?
負荷計算とは、施設内で使用するすべての電気設備(照明、エアコン、生産機械、コンセントなど)の消費電力(容量)を一つひとつ洗い出し、合計を算出する作業のことです。
建物全体で「最大でどれだけの電気機器が存在するか」という潜在的な電気の総量を把握するために行います。
需要率(じゅようりつ)とは?
需要率(稼働率とも言う)とは、洗い出した全設備容量の合計に対して、実際に「最も電気を使う時間帯(ピーク時)に同時に使用される設備の割合」をパーセンテージ(%)で表したものです。
計算式は以下のようになります。
- 需要率(%)=(最大需要電力 ÷ 全設備容量の合計)× 100 [%]
例えば、全設備の合計が100kWの施設で、最も電気を使った時間帯のピーク電力が60kWだった場合、需要率は60%となります。
4. なぜ「合計設備容量=トランス容量」にはならないのか?
電気設備に詳しくない方がよく陥る間違いが、「施設内にある全設備の合計が300kWだから、トランス容量も300kVA必要だ」と考えてしまうことです。結論から言うと、「合計設備容量 = トランス容量」には絶対になりません。
- 理由:すべての設備が同時に24時間フル稼働することはないから
考えてみてください。オフィスビルや工場において、施設内にあるすべての照明、すべてのコンセント、すべてのエアコン、すべての生産ラインや換気扇が、1秒のズレもなく同時に100%の出力で24時間動くでしょうか?現実にはそのような状況は起こり得ません。
- 日中は照明をつけるが、夜間は消灯する
- エアコンは季節や気温によって稼働率が変わる
- 特定の機械はラインが動いている時しか使わない
このように、実際の運用では必ず「使っていない設備」や「出力(負荷)が低い状態」が存在します。
もし合計設備容量の通りにトランスを選定してしまうと、過剰に大きな(=非常に高価な)キュービクルを導入することになり、初期費用(イニシャルコスト)も設置スペースも無駄になってしまいます。
そのため、実際の稼働状況(需要率)を考慮して設計し、適切なトランス容量まで絞り込むことがコスト面・安全面の両方で極めて重要なのです。
5. 負荷計算のポイント:三相(動力)と単相(電灯)の違い
負荷計算を行う際、もう一つ抑えておくべき重要な注意点があります。それは、電気の種類(単相と三相)によって計算の考え方が異なり、三相(動力)には電力ロスが発生するという点です。
単相(1φ):電灯回路
照明やコンセントなどで使う単相交流は、設備に記載されているワット数(kW)やボルトアンペア(VA)を素直に積み上げて計算します。比較的、電力計算がストレートです。
三相(3φ):動力回路
大型エアコンや工場機械などの動力機器で使う三相交流は、交流特有の「力率(りくりつ)」や「効率」、電圧の位相差による波形の影響を受けるため、必ず電力のロス(損失)が生じます。
三相機器の定格出力(kW)から必要なトランス容量(kVA)を概算する際は、単に数値足し算をするだけでなく、機器の力率(通常80%〜90%程度)や効率を考慮して補正計算を行う必要があります。
電気の種類 | 主な用途 | 計算時の主な注意点 |
|---|---|---|
|
単相(1φ) |
照明、コンセント、事務機器(100V/200V) |
設備容量をシンプルに積算 |
|
三相(3φ) |
空調機器、エレベーター、生産用モーター(200V) |
力率や効率による電力ロスを考慮して補正 |
このように、単相と三相の特性の違いを理解した上で負荷計算を進めることが、過不足のないトランス容量選定への第一歩となります。
6. キュービクル容量選定の手順【新設の場合】
キュービクルの容量を決めるアプローチは、「建物を新しく建てる(新設)」場合と、「既存のキュービクルを入れ替える(既設更新)」場合で大きく異なります。まずは「新設」の場合の手順と、どのような有資格者が関わるのかを解説します。
新設時の選定ステップ
設備ごとの最大電力から実際の使用状況を推計し、将来の拡張性も含めて最適なトランス容量を決定する3段階の手順です。
- 設備個々の容量の洗い出し(負荷集計):建築設計図や設備仕様書から、設置予定の全電気設備(照明・コンセント・空調・衛生設備・動力等)の容量(kW/kVA)を細かく抽出します。
- 需要率・不等率の設定:建物の用途(オフィス、工場、店舗、病院など)や過去の類似データを基に、適切な需要率(および複数回路のピークのズレを表す「不等率」)を設定します。
- 基本計算に基づくトランス容量の導出:「集計した設備容量 × 需要率」等の基本計算を行い、将来の増設余裕(10〜20%程度)を見込んだ上で、標準規格のトランス容量(例:75kVA、100kVA、150kVA、300kVAなど)を選定します。
本来の責任者は「設備設計者(一級建築士など)」
新設時における負荷計算や変電設備の設計は、非常に高度な建築・設備知識を要する専門業務です。そのため、本来この仕事は建築設計事務所や設備設計事務所の「設備設計者」が担当します。
建築物の構造や法規制と密接に関わるため、一級建築士などの国家資格を持つプロフェッショナルが全体構造を設計します。その全体設計(電気設備計画)に基づいて、キュービクルや配電盤の製造メーカーが詳細な回路・筐体設計を行い、電気工事会社が設置・施工をしていくというのが、新設における一連の流れとなります。
7. キュービクル容量選定の手順【既設更新の場合】
一方、すでに稼働している施設のキュービクルを老朽化などで入れ替える「既設更新」の場合は、新設とは異なる現実的なアプローチを取ります。すでに「実際の稼働データ」が存在するため、より実態に即した精度の高い容量選定が可能です。
既設更新時の選定ステップ
既設更新時のトランス・キュービクル選定は、現状データと将来計画を正しく反映することが重要です。各ステップのポイントを以下にまとめます。
- 現状の需要率・稼働率データの把握:電気主任技術者が記録している日常点検表やデマンド閲覧サービス(スマートメーター等のデータ)から、過去1年〜数年間の「最大デマンド値(最大需要電力)」を確認します。これにより、現在のトランス容量にどれくらいの空き(余裕)があるか、または容量不足気味かが明確に判断できます。
- 今後の設備増設・減設予定のヒアリング:「来期に新しい機械を導入する」「使っていない古いラインを撤去する」「全館LED化して照明の負荷が下がる」といった、今後の設備変動の計画を確認・計算に反映します。
- 最適容量のトランス決定とキュービクル選定:実測値データと将来計画を組み合わせ、過不足のない最小限かつ安全なトランス容量を決定し、新しいキュービクルを選定します。
既設更新で頼りになる専門資格者
既設の更新において重要なキーマンとなるのが、日々その施設の電気安全を守っている「電気主任技術者」や、設備のメンテナンス・改修を手掛ける「電気工事会社」です。
専門資格者 | 概要 |
|---|---|
|
電気主任技術者(電験三種・電験二種など) |
保安管理を担当し、施設の日常的な使用電力データやピーク時の電気使用状況を最も熟知しているプロフェッショナルです。 |
|
電気工事会社(第一種電気工事士など) |
現場の実施工を担当し、設置場所の寸法制限や機器搬入ルート、既存配線との適合性などを考慮して具体的な機種選定・施工提案を行います。 |
「昔より省エネ機器が増えたからトランス容量をダウンサイジング(小さく)して基本料金を下げる」「今後工場を拡張するからトランスを1サイズ大きくする」といった判断は、これら現場の有資格者様との綿密な確認を経て行われます。
8. キュービクル容量や負荷計算・需要率に関するよくある質問
キュービクルの容量計算や負荷計算または需要率などで疑問や質問があるかと思います。色々な質問に対して当社の考え方や実際行動した内容をQ&Aにまとめましたので、参考にしてください。
Q1:キュービクルの容量は誰に聞けばよい?
回答::基本は企業内設備担当者様がおられたら良いし、おられない場合はまずは保安管理を委託されている主任技術者様に確認されると教えて頂けると思います。
Q2:電気容量の単位でKWとKVAがありますが、何が違うの?
回答:簡単に説明します。KWは有効電力(実際仕事をする電力)・KVAは皮相電力(電源から送り出される「見かけ上」の電力容量 )となります。
Q3:単相と三相って何のことですか?
回答:単相=電灯回路で家庭でも使われている家電やコンセントの100V/200Vの事です。
三相=動力回路で工場や大きな設備に使用している200V/400Vの事です。
Q4:なぜキュービクルが必要なんですか?
回答:電気業法で決められた法律になります。使用電気電力が50KW以上になれば必ずキュービクル設置が義務付けられます。
Q5:電力会社との境界はキュービクルですか?
回答:少し違います。電力会社・地域の環境によって少し違ってきますが、公的道路の電柱から私的敷地に建てられた電柱(構内柱)にある高圧負荷開閉器が境界となる事が多いです。その他地域や環境によって変わりますので注意ください。
9. まとめ:適切な容量選定がコスト削減と安全運用を実現する
キュービクルの容量選定について、ポイントを改めてまとめます。
- キュービクルの容量=内部のトランス(変圧器)容量の合計(kVA)
- 容量を決めるには「負荷計算(全設備の合計)」と「需要率(実際の同時稼働率)」が必要
- すべての設備が同時に動くことはないため、「合計設備容量 = トランス容量」にはならない
- 三相(動力)の計算には力率などの電力ロス考慮が必要
- 新設は設計事務所(一級建築士等)による基本計算から選定する
- 既設更新は電気主任技術者(電験等)や電気工事会社(1種電工等)と連携し、過去の実働データから最適化
キュービクルの容量選定は、小さすぎれば停電や設備障害(過負荷)を引き起こし、大きすぎれば無駄な導入コストや電気の基本料金(契約電力)上昇を招いてしまいます。
施設を新設される方も、更新時期を迎えている施設管理者様も、自社の稼働実態や将来計画を正しく把握し、専門の設計者や電気主任技術者・電気工事会社様と相談しながら、最適なキュービクルを選定していきましょう。
キュービクルを安心・安全に運用するためには、適切な選定が欠かせません。信頼できる業者を選び、実績に基づいた容量選定を行い、将来の電力需要を見越した計画を立てることが重要です。
創業60年以上の実績を誇る小川電機株式会社では、キュービクルの容量選定から設置後の点検、部品交換・修理まで、幅広く対応しています。安心・安全な電力環境を提供するため、ぜひご相談ください。
この記事の監修者
前田 恭宏
小川電機株式会社 経営企画室
電材業界で40年以上にわたり営業として従事。 空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。 キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。

