すでにキュービクルを導入していても、状況の変化によっては増設が必要になるケースがあります。増設が必要な状態を放置すると、機器の過負荷による故障や電力供給の不安定化、さらには契約違反によるペナルティといった重大なリスクを招きかねません。
では、どのような状況でキュービクルの増設が必要になるのでしょうか?今回は、キュービクル増設が求められる主なケースや増設工事の流れ、必要な費用、そしてコストを抑えるためのポイントを、基礎から丁寧に解説します。
キュービクルの運用に不安がある方や、今後の電力需要増加を見越して備えたい方にとって、必ず役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
キュービクル増設が必要になる主なケース
キュービクルは、設置時の電力需要に応じて適切な容量を選定して導入されます。そのため、当初の使用状況が変わらない限り、基本的に増設の必要はありません。
しかし、設備環境や契約条件が変化すると、既存容量では対応できず、増設が必要になる場合があります。特に次のようなケースでは、キュービクルの増設が求められる可能性が高くなります。
- 消費電力の増加
- 建物の増築・改築
- 設備の更新
- 契約電力の変更
消費電力の増加
最も一般的な増設要因が、想定を超える電力の使用です。
キュービクルには処理可能な電力量に上限があり、その範囲内で電気を安全に供給するために容量が決められています。ところが、時間の経過とともに設備や利用形態が変わり、消費電力が増加すると、既存容量では対応できなくなります。
無理に使用を続ければ、過負荷による機器の故障や電圧の不安定化、さらに電力契約上の違反によるペナルティといったリスクが発生します。
特に注意が必要なのは、オフィスビルや商業施設に新たな店舗が入居するケースです。同じスペースでも、店舗によって使用する電力量が大きく異なるため、新店舗によって全体の消費電力が急増することは珍しくありません。
また、工場などで新設備を導入する場合も、想定外に電力を必要とするケースがあります。こうした変化に対応するためにも、電力需要の変化には常に注意を払う必要があります。
建物の増築・改築
建物の増築や改築によって使用空間が広がると、それに伴い電気設備も増えるため、消費電力の増加が避けられません。結果として、既存のキュービクル容量を超えることになれば、増設が必要になります。
このとき重要なのは、増改築工事とキュービクルの増設工事を同時に進めることです。タイミングを合わせることで、工期全体の短縮やスムーズな工程管理が可能になります。
増改築が決まった段階で、消費電力の再計算を行い、必要に応じて早めに専門業者へ相談することが、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。
設備の更新
意外と見落とされがちなのが、設備の更新による電力需要の変化です。工場や施設では、機器の老朽化に伴って新型モデルへの更新が定期的に行われますが、最新の設備は高機能化により消費電力が増える傾向にあります。
また、主設備の更新に伴い、補助的な関連設備が新たに必要になることもあり、その結果として電力負荷が増加します。設備の更新を計画する際には、新たな消費電力の試算と、それに応じたキュービクルの見直しが不可欠です。
契約電力の変更
契約電力を引き上げた場合も、キュービクルの増設が必要となる可能性があります。使用電力量の増加に伴って契約容量を見直すことは一般的ですが、既存のキュービクルがその変更に対応できるとは限りません。
ただし、必ずしも増設が必要になるとは限らず、現在の容量で十分まかなえるケースもあります。判断には専門的な知識が必要となるため、契約電力の変更を検討する際は、事前に業者へ相談し、設備状況に応じた正確な判断を仰ぐことが重要です。
キュービクル増設までの流れ
キュービクルを増設する際は、適切な手順を踏むことが安全かつスムーズな工事につながります。基本的な流れは次の6ステップです。
- 業者への相談
- 現地調査
- 設計と申請
- 基礎工事
- キュービクルの搬入と設置
- 動作確認
業者への相談
増設の第一歩は、専門業者への相談です。たとえば、テナントの新規出店や工場への新設備導入が決まった段階で、電力需要の変化を予測し、事前に確認する必要があります。
ただし、電力消費の正確な見積もりや増設の可否を判断するには専門的な知識が必要です。自己判断で進めず、必ず信頼できる業者に相談し、将来の電力使用量を踏まえた助言を受けましょう。業者の診断結果に基づき、増設が必要と判断された場合は、具体的な工事計画に進みます。
現地調査
業者が増設を必要と判断した場合、次に行われるのが現地調査です。目的は、増設予定のキュービクルを設置できるスペースの有無や、周辺環境の確認です。
既存の設置場所に空きがなければ、別のスペースを新たに確保する必要があります。ただし、単にスペースがあれば良いというものではなく、地盤の強度などの条件も確認しなければなりません。
地盤の状況によっては補強工事が発生し、費用に影響するため、総額の見積もりを把握しておくことが大切です。希望する設置場所がある場合は、調査の際に業者へ伝え、見積もりに反映してもらいましょう。
設計と申請
設置場所が確定したら、次は設計図面の作成と電力会社への申請です。キュービクルの増設では、電力会社に工事申請を提出する必要があり、設計図はその重要な資料となります。
また、高圧受電設備の増設にあたっては、受電方式や契約電力の見直しが必要になる場合もあるため、電力会社との協議も併せて行います。
基礎工事
申請が承認されると、いよいよ工事開始です。最初の工程は、キュービクルを支えるための基礎工事です。
既存キュービクルの隣に設置する場合、その部分のみを施工すれば済みますが、別の場所に新設する場合は施工範囲が広がり、地盤の補強などが必要になるケースもあります。地盤の状態によって費用が増加する可能性があるため、事前の調査と計画が重要です。
キュービクルの搬入と設置
基礎工事が完了すると、キュービクルの搬入・設置工事へと進みます。この際に注意すべきは搬入方法です。
キュービクルはサイズが大きく重量もあるため、クレーンなどの重機を用いるケースが多く、現場の周辺環境への配慮が必要となります。場合によっては道路を一時的に使用することもあるため、近隣への事前説明や安全確保の準備を忘れずに行いましょう。
動作確認
設置後は、電力供給が正しく行われるかを確認するための動作テストを実施します。同時に、保護装置の作動確認や絶縁抵抗測定などの安全チェックも行われます。
この作業は高電圧を扱うため、施工中は周辺に人が近づかないよう十分な注意喚起が必要です。
なお、基礎工事から動作確認までにかかる期間は、通常1〜2週間程度です。ただし、工事の規模や天候により前後するため、営業開始日や稼働開始日が決まっている場合は、必ず事前に業者と工期をすり合わせておきましょう。
キュービクルの増設にかかる費用
キュービクルの増設は、大きく「変圧器の交換・追加」と「新たなキュービクル(金属箱)の設置」の2パターンに分かれます。
変圧器の交換や追加で対応できる場合は、費用を抑えやすいため多くの現場で選ばれる方法です。しかし、既存キュービクル内に予備スペースがない場合、この対応は不可能であり、状況に応じて最適な工法を検討する必要があります。また、変圧器交換・追加の工事費用は既存設備の状態によって変動するため、正確な金額を把握するには業者から見積もりを取ることが必須です。
一方、既存設備にスペースがなければ新しいキュービクルの設置が必要です。費用の内訳は「本体価格」「基礎工事費」「設置工事費(搬入・配線・接続工事など)」に分かれ、容量や設置条件によって金額は大きく変わります。工事前に必ず詳細な見積もりを確認し、全体コストを明確にしておくことが重要です。
キュービクルの増設にかかる費用を抑えるポイント
キュービクルの増設には一定の費用がかかるため、できる限りコストを抑える工夫が求められます。ここでは、無駄な出費を防ぐための2つのポイントについて解説します。
- 適正容量を見極める
- 複数業者から見積もりをとる
適正容量を見極める
まず重要なのは「適正容量の見極め」です。将来的な電力需要の増加を見込んで、必要以上の容量でキュービクルを増設するケースもありますが、過大な設計はかえってコストを押し上げる要因になります。キュービクル本体や工事費用は容量に比例して高くなるため、使いきれない容量に投資するのは非効率です。
一方で、節約を意識しすぎて容量をギリギリに設定すると、わずかな電力増加で再び増設が必要になる可能性があります。これでは中長期的にかえってコストが膨らむ恐れもあるため、慎重な判断が必要です。
増設コストを最小限に抑えるには、将来を見据えた「過不足のない容量設計」が最も重要です。
複数業者から見積もりをとる
次に挙げられるのが、複数の業者からの見積もりを取得することです。1社だけでなく複数の業者に見積もりを依頼することで、価格の相場感が把握でき、割高な契約を避けることができます。また、業者ごとの提案内容を比較することで、自社に最適なプランを見極めやすくなります。
ただし、費用の安さだけを基準に業者を選ぶのは危険です。キュービクルの増設には高度な知識と施工経験が求められるため、実績の乏しい業者に依頼すると、結果的にトラブルや再工事が発生するリスクがあります。
実績豊富な業者であれば、現場の条件に応じた適切な設計・施工を提案してくれるため、結果的に無駄な費用を抑えることにもつながります。業者選定の際は、価格だけでなく、施工実績や提案力を総合的に判断しましょう。
キュービクルを増設する際の注意点
キュービクルを増設する際は、「設置スペースの確保」と「地盤の確認」を事前に徹底しておくことが重要です。特に、設置後の点検・修理・部品交換などの保守作業をスムーズに行うには、一定の作業スペースを確保しておく必要があります。
ギリギリのスペースに設置してしまうと、点検時に作業が困難になったり、緊急時の対応が遅れたりするリスクもあるため、余裕をもったレイアウトを心がけましょう。
また、設置場所の地盤状態も事前に確認しておくべきポイントです。地盤が弱ければ補強工事が必要となり、その分、工事費用が増加する可能性があります。希望の設置場所がある場合は、必ず業者と相談のうえ、地盤の適性を確認しておくことが大切です。
さらに、将来的に再度の増設が想定される場合は、その点も踏まえて設置計画を立てましょう。再増設の可能性があることを事前に業者へ伝えておくことで、将来の対応がしやすくなります。
まとめ
電力使用量の増加により、既存のキュービクル容量を超えてしまうことは珍しくありません。容量を上回った状態で使用を続けると、機器の故障や電力供給の不安定化といったトラブルだけでなく、契約違反によるペナルティが発生するおそれもあるため、早めの対処が不可欠です。
そのため、消費電力の増加が見込まれる場合は、早い段階で信頼できる専門業者に相談し、必要に応じたキュービクルの増設を検討することが重要です。キュービクルの増設には電力需要の精密な計算や、設置スペース・地盤状態などの技術的な判断が求められるため、経験と実績のある業者による対応が求められます。
実績豊富な業者であれば、現在の設備状況や将来的な増設の可能性も踏まえた、最適かつ柔軟な増設プランを提案してくれるため、結果的にコストや手間を抑えることにもつながります。長期的な設備運用を見据え、計画的かつ慎重に進めることが成功の鍵です。
小川電機株式会社は、創業60年以上の歴史と数多くの設置・増設実績を有する非常用発電機・キュービクルの専門業者です。経験に基づいた最適なご提案を行っております。キュービクルの増設に関してお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。