非常用発電機の設置を成功させるためには、設置工事に関する基礎知識を事前に理解しておくことが不可欠です。基礎知識が不足したまま進めてしまうと、工期の見誤りや想定外のコスト増加につながり、結果として後悔の残る設置になりかねません。
今回は、非常用発電機の設置工事に関する基礎知識を中心に、法令で定められた2つの義務、設置工事の具体的な流れ、工事前に押さえておくべき注意点、そして失敗しない業者選びのポイントを体系的に解説します。非常用発電機の設置を検討している方が、安心して判断・準備を進めるための情報を網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。
非常用発電機に関する2つの義務
非常用発電機には、法令に基づく「設置義務」と「点検義務」の2つが存在します。いずれも法律で定められているため、事業活動を行う企業や施設管理者は必ず理解しておかなければなりません。
特に設置義務については、自社の建物が対象となるかどうかを正しく判断する必要があります。該当するにもかかわらず設置していない場合、是正指導や行政上の責任を問われる可能性もあります。ここでは、非常用発電機に関する2つの義務について解説します。
設置義務
非常用発電機は、安全性の確保を目的として、一定の条件に該当する建築物では法令により設置が義務付けられています。対象となる主な法令は「消防法」と「建築基準法」であり、いずれかの条件に該当する場合、非常用発電機の設置が必要です。
ここでは、それぞれの法令で定められている設置条件について解説します。
消防法
消防法では、延べ床面積1,000㎡以上の特定防火対象物に対して、非常用発電機の設置を義務付けています。特定防火対象物とは、不特定多数の人が利用する施設や、火災発生時に人命への危険性が高いと判断される建築物を指します。
具体的には、次のような建築物が該当します。
- 大型の商業施設
- ホテル
- 病院
- 地下街
- 社会福祉施設・老人福祉施設など
建築基準法
建築基準法では、高さ31m以上の建築物や、不特定多数の人が利用する特殊建築物に対して、非常用発電機の設置を義務付けています。特殊建築物とは、利用者が多く、火災などの災害時に特に危険性が高いと判断される建築物を指します。
該当する主な建築物は次のとおりです。
- 大型の商業施設
- 学校
- 病院
- 劇場
- 集会場
- 市場など
点検義務
非常用発電機は、設置しているだけでは意味がありません。非常時に確実に稼働する状態を維持するため、定期的な点検が義務付けられています。
点検義務は「消防法」「建築基準法」「電気事業法」の3つの法令に基づいて定められています。それぞれ点検頻度や内容が異なるため、法令ごとの要件を正しく理解し、確実に対応することが重要です。
ここでは、各法令で求められる点検内容について解説します。
消防法
消防法では、6ヶ月に1度の機器点検と、1年に1度の総合点検の実施が義務付けられています。また、点検結果を管轄の消防署長へ報告することも義務となっているため、報告漏れには注意が必要です。
なお、総合点検には負荷試験が含まれますが、予防的保全策を講じることで、負荷試験の実施周期を6年に延ばすことが可能です。負荷試験は費用負担が大きく、試験方法によっては建物全体を停電させる必要があるため、予防的保全策を取り入れることで、コストと手間を大幅に軽減できます。
建築基準法
建築基準法では、特定行政庁の定める基準に基づいた定期点検の実施が義務付けられています。点検頻度は行政庁ごとに異なりますが、おおむね6ヶ月から1年に1回程度と考えておけば問題ありません。詳細は管轄の特定行政庁へ確認すると確実です。
また、点検結果は保守点検報告書として記録し、管理者が適切に保管する必要があります。記録の未整備は指摘対象となるため、確実に対応しましょう。
電気事業法
電気事業法では、毎月実施する月次点検と、年に1度実施する年次点検が義務付けられています。対象となるのは、出力10kW以上のディーゼルエンジンタイプの非常用発電機と、すべてのガスタービンタイプです。
月次点検は主に外観や簡易的な状態確認が中心で、比較的短時間で実施できます。一方、年次点検では内部構造や細部まで確認するため、安全確保の観点から事前のスケジュール調整が欠かせません。
非常用発電機の設置工事の流れ
非常用発電機の設置工事で後悔しないためには、設置完了までの一連の流れを事前に理解しておくことが重要です。なぜなら、非常用発電機は一度設置すると容易に移設できず、初期判断の良し悪しがその後の運用に大きく影響するからです。
また、工事を安全に進めるうえでも、全体の流れを把握しておくことは欠かせません。特に搬入作業では、接触事故などの思わぬトラブルが発生する可能性があるため、工程ごとに適切な対応を取る必要があります。
ここでは、非常用発電機の設置工事がどのような手順で進むのか、順を追って解説します。
- 打ち合わせを実施する
- 現地調査してもらう
- 見積もりをとる
- 工事のスケジュールを調整する
- 基礎工事を実施する
- 搬入と設置を行う
- 試運転を実施し、消防署により確認してもらう
打ち合わせを実施する
非常用発電機の設置工事は、打ち合わせから始まります。
この段階で重要になるのが、停電時にどの設備を、どの程度稼働させたいのかを具体的に伝えることです。後から供給電力を増やしたいと考えても、設置後に容量を変更することは簡単ではありません。そのため、要望を明確にしたうえで、業者のアドバイスを参考にしながら慎重に判断する必要があります。
非常用発電機にはさまざまな容量があり、容量が小さければ本体価格は抑えられる一方で、供給できる電力は限られます。非常時に稼働させたい設備や台数によって必要な電力量は大きく変わるため、容量選定は特に重要なポイントです。
打ち合わせに備えて、事前に稼働させたい設備を整理しておきましょう。
現地調査してもらう
打ち合わせ後は、現地調査が実施されます。
現地調査では、設置スペースの広さや設置場所の環境、搬入経路などを総合的に確認します。希望する設置場所がある場合でも、現地調査の結果によっては設置が難しいと判断されるケースもあります。そのため、可能であれば複数の設置候補地を想定しておくと安心です。
なお、設置場所の候補が見つからない場合でも、業者と相談しながら検討することができるため、早めに状況を共有しておきましょう。現地調査は、正確な見積もりを算出するためにも欠かせません。非常用発電機の設置工事費用は、設置場所や条件によって大きく変動するためです。
中には、現地調査を行わずに見積もりを提示する業者もありますが、その場合、後から追加費用が発生するおそれがあります。現地調査を実施せずに見積もりを出す業者への依頼は、基本的に避けた方が無難です。
見積もりをとる
打ち合わせと現地調査が完了すると、見積もりが提示されます。顧客目線に立った業者であれば、要望や予算を踏まえたうえで、複数のプランを提案してくれるでしょう。
一方で、伝えた予算を大きく超える見積もりを提示してくる業者も存在します。通常、予算内での対応が難しい場合は、事前にその旨を説明するものです。それにもかかわらず、説明なく高額な見積もりを出してくる業者は、信頼性に欠けると言わざるを得ません。
非常用発電機を安全に運用していくためにも、要望に寄り添った提案をしてくれる業者を選ぶことが重要です。
工事のスケジュールを調整する
見積もり内容に納得できたら、正式に発注し、工事スケジュールを調整します。設置工事の期間は内容によって異なりますが、目安としてはおおよそ1ヶ月程度です。
通常、工事中も建物内の電力は使用できますが、作業内容によっては一時的な停電が必要になる場合があります。工場など、生産スケジュールが決まっている施設に設置する場合は、業務への影響を考慮したうえで、慎重に日程を調整する必要があります。
基礎工事を実施する
非常用発電機は非常に重量があるため、転倒防止のための基礎工事が不可欠です。
基礎の強度が不足していると、安全な運用ができなくなるおそれがあります。そのため、基礎工事には高い施工品質が求められます。
実績豊富な業者であれば、設置条件に応じた適切な基礎工事を行うことが可能です。安心・安全な環境を構築するためにも、信頼できる業者への依頼を心がけましょう。
搬入と設置を行う
基礎が完成すると、非常用発電機の搬入および設置作業に進みます。発電機は非常に重量があるため、容量や設置場所によってはクレーンを使用した搬入が必要になるケースも少なくありません。
敷地内にクレーンの設置スペースが確保できない場合は、道路を使用して作業を行うことになります。その際は、周辺住民や近隣企業への影響を考慮し、事前の周知が欠かせません。
道路使用が想定される場合は、早い段階で関係者へ説明しておくことが重要です。
試運転を実施し、消防署により確認してもらう
設置工事が完了すると、試運転を行い、その後、消防署による確認を受けます。この確認には、日程調整に加えて各種書類の準備が必要となります。
書類に不備があると、再提出や再確認が必要になり、余計な手間が発生する可能性があります。少しでも不安がある場合は、試運転や消防署対応を含めて、業者に一任した方が安心でしょう。
非常用発電機の設置工事に関する費用
非常用発電機の設置工事費用は、容量や設置場所の条件によって大きく変動するため、明確な相場を把握しにくいのが実情です。
とはいえ、概算の費用感をつかんでおかなければ、適切な予算を組むことはできません。そのため、設置工事費用を把握するには、実際に見積もりを依頼することが不可欠です。ここで重要になるのが、複数社から見積もりを取ることです。
非常用発電機の設置工事費用を正確に算出するためには、現地調査が欠かせません。つまり、複数社に見積もりを依頼する場合、その分だけ現地調査が必要になるということです。
複数回の現地調査は手間や時間がかかると感じるかもしれません。しかし、非常用発電機の設置工事は決して安価な工事ではないため、時間と労力をかけてでも比較検討する価値は十分にあります。
また、複数社から見積もりを取得することで、おおよその費用相場が見えてくるだけでなく、提案内容や工事範囲の違いも把握しやすくなります。さらに、見積もり提出までの対応スピードを確認できる点も、業者選定において重要な判断材料となります。
安心・安全な運用を実現するためには、信頼できる業者への依頼が欠かせません。後悔のない設置工事とするためにも、手間を惜しまず、複数社を比較したうえで慎重に業者を選びましょう。
非常用発電機の設置工事前に理解しておきたい注意点
非常用発電機の設置工事を進める前には、後悔を防ぐために押さえておくべき注意点があります。特に重要なのが、「設置場所の選定」と「点検を見据えた業者選び」の2点です。
これらを十分に検討せずに工事を進めてしまうと、設置後の運用に支障が生じたり、不要なストレスや追加コストにつながったりする可能性があります。ここでは、非常用発電機の設置工事前に理解しておきたい2つの注意点について詳しく解説します。
設置場所は慎重に選ぶ必要がある
非常用発電機の設置場所は、運用時の騒音や振動を踏まえて慎重に判断する必要があります。
非常用発電機は稼働時に想像以上の騒音や振動を発生させるため、設置場所によっては利用者や周辺環境に大きな負担を与えてしまうおそれがあります。非常時に稼働する設備であるにもかかわらず、それがストレスの原因となってしまっては、設置した本来の目的が十分に果たせません。
非常時でもできる限り快適な環境を維持するためには、設置場所の選定が重要なポイントとなります。単にスペースが確保できるという理由だけで設置場所を決めるのではなく、騒音や振動の影響を考慮したうえで判断することが大切です。
そのためにも、専門的な知見を持つ業者のアドバイスを参考にしながら、慎重に設置場所を検討しましょう。
点検を見据えて業者を選定する
非常用発電機は設置後、法令に基づく定期的な点検が義務付けられています。
点検作業は、設置を担当した業者に引き続き依頼するケースが一般的です。そのため、業者選びの段階から、点検まで見据えて検討しておくことが重要になります。
点検を継続的に依頼するということは、業者と長期的な関係を築くことを意味します。そのため、業者の規模や創業年数といった点も、信頼性を判断するうえで重要な要素です。
特に創業年数は、これまで積み上げてきた実績や信頼の指標となるため、業者選定時には必ず確認しておきましょう。
非常用発電機設置工事の業者を選ぶポイント
非常用発電機を安心・安全に運用するためには、信頼できる設置工事業者を選定することが不可欠です。設置工事の品質や業者の対応力は、その後のトラブル発生リスクや運用のしやすさに直結します。
ここでは、非常用発電機の設置工事業者を選ぶ際に、特に重視したい2つのポイントについて解説します。
実績を確認する
業者選びでまず確認すべきなのが、これまでの施工実績です。実績が豊富な業者は、多くの現場を経験する中で培ったノウハウを持っているため、設置条件や建物の状況に応じた的確な提案が期待できます。
また、施工経験が豊富であれば、作業工程を効率的に組み立てることができ、必要最低限の人員でスムーズに工事を進めることが可能です。その結果、無駄な人件費が発生しにくい点もメリットといえるでしょう。
さらに、騒音や振動といった設置後の影響についても、過去の事例を踏まえた現実的なアドバイスを受けることができます。非常時でも過ごしやすい環境を整えるためにも、実績豊富な業者の知見を積極的に活用することが重要です。
対応範囲を確認する
業者選定においては、対応範囲の確認も欠かせません。
一見すると設置工事や点検のみ対応していれば十分に思えるかもしれませんが、業者によっては修理や部品交換に対応していない場合があります。このような業者に依頼すると、故障時や部品交換が必要になった際に、別の業者へ再委託されることになり、その分、仲介手数料が上乗せされる可能性があります。
一方で、点検から修理・部品交換まで一貫して対応できる業者であれば、こうした余計なコストを抑えることができます。無駄な費用負担を避けるためにも、業者選びの際には、どこまで対応してもらえるのかを事前にしっかり確認しておきましょう。
まとめ
非常用発電機の設置を成功させるためには、設置義務や点検義務といった法令面の理解に加え、設置工事の流れや注意点を踏まえたうえで、慎重に判断することが重要です。
非常用発電機は一度設置すると容易に移動できないため、特に設置場所については、稼働時の騒音や振動まで考慮した判断が欠かせません。その点、実績豊富な業者であれば、これまでの施工経験に基づき、運用面まで見据えた現実的な提案を受けることができます。
また、工事内容や現場条件に応じて柔軟に対応できる点も、大きな安心材料といえるでしょう。
設置工事において費用は重要な要素の一つですが、費用の安さだけで業者を選ぶことはおすすめできません。非常用発電機は非常時に確実に稼働することが求められる設備であり、求められるのは質の高い設置工事と、長期的に安心して運用できる環境の構築です。
だからこそ、価格だけでなく、実績や対応範囲、信頼性を総合的に判断したうえで業者を選定することが大切です。
創業60年を超える小川電機株式会社は、これまで数多くの非常用発電機の設置工事に携わってきました。長年培ってきたノウハウを活かし、建物や運用条件に応じた最適な提案と、質の高い設置工事を実施しています。
非常用発電機の設置や工事についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。



