キュービクルを設置する際に最も重要なのは、まず寸法を正しく把握することです。寸法は本体の機種や最大電気容量、構造の違いによって大きく異なり、これを理解していなければ適切な設置場所を決めることはできません。そのため、設置を検討する段階から専門業者へ相談し、必要な寸法情報を確認しておくことが欠かせません。
今回は、キュービクル寸法に関する基礎知識をわかりやすく解説します。さらに、一般的なキュービクルの平均寸法や設置時に注意すべきポイント、業者選びのコツまで網羅しているため、キュービクル導入を検討中の方にとって必ず役立つ内容となっています。ぜひ最後までご覧ください。
キュービクル設置における注意事項
キュービクルを設置する際に最も大切なのは、適切な設置場所を選ぶことと、状況に合った機種を選定することです。これらは後から修正できない重要な条件であり、設置前に必ず理解しておく必要があります。ここでは、それぞれの注意点を詳しく解説します。
適切な設置場所を選択する
キュービクルは一度設置すると簡単に移動できないため、最初の段階で設置場所を慎重に決めることが欠かせません。移動工事は可能ですが、多額の費用が発生するため現実的ではありません。
特に意識すべきなのは、点検や修理を行うための十分なスペースを確保しておくことです。定期点検は法令で義務付けられており、部品交換や修理が必要になるケースも少なくありません。その際に作業スペースが不足していると、追加費用や工期の延長につながるリスクがあります。したがって、設置場所には余裕を持たせることが重要です。
ただし、必要な広さはキュービクルの寸法によって異なるため、まずは設置予定の寸法を正確に把握することから始めましょう。
環境に合わせたキュービクルの選択する
キュービクルは種類や寸法が多様に存在しますが、設置場所の広さだけで選ぶことはできません。寸法は最大電気容量に応じて決まるため、狭い場所に収めたいからといって任意に選べるものではありません。
大切なのは、必要な電力量や使用環境に適した機種を正しく選ぶことです。その上で、選定したキュービクルに対応できる設置場所を探す流れになります。
この判断には電力計算などの専門知識が不可欠であり、自己判断での選定は危険です。誤った判断を避けるためにも、検討段階から信頼できる業者へ相談し、早めにアドバイスを受けることが最善の方法です。
キュービクル寸法に関する基礎知識
キュービクルの寸法は一律ではなく、複数の要素によって決まります。主に次の4点が大きく影響するため、これらを理解しておくことが重要です。
- 使用する電気の種類
- 最大電気容量
- 付加機器の有無
- 本体構造
ここでは、それぞれの要素について詳しく解説します。
使用する電気の種類
キュービクルは複数の盤で構成されており、盤が増えるほど寸法も大きくなります。代表的な盤は次のとおりです。
- 高圧受電盤:電力会社から送られる高圧電気を受電する
- 低圧電灯盤:受電した高圧電力を低圧電灯に変換して供給する
- 低圧動力盤:高圧電力を低圧動力に変換して供給する
一般的には電灯と動力の2種類で十分ですが、工場のように大型設備を扱う場合はさらに盤が追加され、寸法が大きくなります。一方で、電灯のみを使用する場合は小型化できる可能性があります。
このように使用電気の種類が寸法を左右するため、用途に応じて必要な種類を把握しておくことが大切です。
最大電気容量
寸法に最も影響する部品の一つが変圧器です。変圧器は最大電気容量に比例して大きく重くなるため、容量が増えるとキュービクル全体のサイズも拡大します。
さらに、容量によっては変圧器を複数組み合わせて設置することもあり、その場合は追加スペースが必須です。また、変圧器以外の内部機器も容量の増加に応じて大型化するため、最大電気容量の設定が寸法を決定づける要因となります。
付加機器の有無
キュービクルは太陽光発電設備や非常用発電機といった外部機器と連携して使用されるケースがあります。その場合、専用機器や系統連携盤を追加する必要があり、寸法に影響を及ぼします。
新たな盤や機器を組み込むには、その分のスペースを確保しなければならないため、付加機器の有無を事前に考慮することが欠かせません。導入予定がある場合は必ず業者に相談し、適切な寸法を選定することが重要です。
本体構造
キュービクルの寸法は、本体構造にも左右されます。代表的なものには次の2種類があります。
- 前面保守形:前面にのみ扉があるタイプ
- 前後面保守形:前後両面に扉があるタイプ
前面保守形は扉がない背面に部品を配置できるためコンパクトに収めやすい一方、前後面保守形は両側にスペースを要する分、寸法が大きくなる傾向にあります。
ただし、どちらが優れているというわけではなく、現場環境や点検作業のしやすさによって適切な構造は異なります。そのため、寸法だけで判断せず、設置環境を踏まえて業者と相談しながら選ぶことが重要です。
キュービクルの平均的な寸法
キュービクルの平均寸法は一概に示すことができません。なぜなら、実際の寸法はメーカーや仕様によって異なるため、導入を検討する場合は選定機種を決めたうえで確認する必要があるからです。
ただし、目安として参考にできる数値は存在します。それが、JISで定められた「キュービクル式高圧受電設備」に記載された外形寸法です。その代表的な規格値は下の表のとおりです。
前面保守形の外形寸法
受電設備容量(kVA) | 外形寸法(mm)W | 外形寸法(mm)H | 外形寸法(mm)D |
---|---|---|---|
150以下 |
6,400 |
2,800 |
1,000 |
151~300 |
8,500 |
2,800 |
1,000 |
301~500 |
11,000 |
2,800 |
1,000 |
501~1,000 |
16,000 |
2,800 |
1,000 |
1,001~1,500 |
18,500 |
2,800 |
1,000 |
1,501~1,500 |
23,000 |
2,800 |
1,000 |
参照元:JISC4620:2018 キュービクル式高圧受電設備
前後面保守形の外形寸法
受電設備容量(kVA) | 外形寸法(mm)W | 外形寸法(mm)H | 外形寸法(mm)D |
---|---|---|---|
150以下 |
3,400 |
2,800 |
2,000 |
151~300 |
4,500 |
2,800 |
2,200 |
301~500 |
6,000 |
2,800 |
2,400 |
501~1,000 |
8,500 |
2,800 |
2,600 |
1,001~1,500 |
11,000 |
2,800 |
2,800 |
1,501~1,500 |
13,000 |
2,800 |
2,800 |
参照元:JISC4620:2018 キュービクル式高圧受電設備
なお、ここで注意すべき点があります。近年、技術の進歩により小型化が進んでおり、実際に流通しているキュービクルは規格値よりもコンパクトなものが多くなっています。そのため、あくまで上記は目安として理解し、最新の寸法は必ず業者やメーカーに確認することが重要です。
キュービクル設置で後悔しないための注意点
キュービクル設置で失敗や後悔を防ぐために最も重要なのは、専門知識と豊富な実績を持つ業者からアドバイスを受けることです。
経験豊富な業者であれば、過去の事例に基づくノウハウを活かし、状況に応じた最適な提案をしてくれます。設置場所の決定には多くの要素を考慮する必要があり、想定外の事態に対応できるだけの知識と経験が不可欠です。
実績が乏しい業者では提案の幅が狭く、十分な選択肢を示せない可能性があり、その結果として利用者に不安が残ることになります。しかも、一度設置したキュービクルは簡単に移動できず、移設には多大な費用と手間がかかるため、最初の判断が非常に重要です。
だからこそ、後悔しないようにするには、実績豊富な業者のサポートを受けることが欠かせません。設置を成功させるための第一歩は、信頼できる業者を選ぶことにあるのです。
キュービクルの設置業者選びのポイント
キュービクル設置を成功させる最大のカギは、信頼できる業者を選ぶことです。短期的にはどの業者に依頼しても変わらないように思えるかもしれませんが、キュービクルは長期間にわたって運用される設備であり、設置工事の質が将来の安定稼働に直結します。だからこそ、業者選びは慎重に行う必要があります。ここでは、特に重要となる2つのポイントを解説します。
- 顧客目線に立った提案をしてくれる
- 実績を豊富に有する
顧客目線に立った提案をしてくれる
業者を選ぶ際には、顧客の立場に立って提案してくれるかどうかが大きな判断基準になります。利益を優先する業者に依頼すると、必要以上に大きな容量のキュービクルをすすめられたり、不要に高額な工事費を提示されたりするリスクがあります。予算を伝えても、それを無視して割高なプランを提案する業者には注意が必要です。
一方、顧客目線に立つ業者は要望や予算を踏まえて最適な提案を行い、複数のプランを提示したうえでメリット・デメリットを丁寧に説明してくれます。設置後の点検や修理も同じ業者に依頼することが一般的であるため、長期的な信頼関係を築く意味でも顧客目線の姿勢は欠かせません。
相談段階で顧客視点が感じられない業者は、依頼を見送った方が無難です。
実績を豊富に有する
もう一つの重要なポイントが、業者の実績です。経験豊富な業者は多様な事例を積み重ねており、そのノウハウを活かして最適なプランを提示してくれます。設置場所の条件や将来的な増設の可能性なども見越したアドバイスを受けられるのは、大きなメリットです。
キュービクルの設置は、ただ「置ければ良い」というものではなく、環境や周辺条件を踏まえた総合的な判断が必要です。加えて、将来的な運用や拡張を考慮した設置計画を立てることが、長期的な安定稼働につながります。
これらを的確に提案できるのは、実績豊富な業者です。依頼を検討する際には、必ずその実績を確認するようにしましょう。
まとめ
キュービクルの設置で後悔しないようにするには、まず寸法を正しく把握し、それを踏まえて適切な設置場所を検討することが欠かせません。キュービクルは移動が容易ではないため、最初の判断が今後の運用に大きな影響を与えます。選定は設置場所に合わせて行うのではなく、必要な電気の種類や最大電気容量に適した機種を選んだうえで、その寸法に見合う場所を確保することが基本です。
ただし、寸法だけで設置場所を決めてしまうのは危険です。点検や修理に必要な作業スペースの確保、地盤の状態など、長期的な運用を見据えた環境条件を考慮しなければなりません。
そのため、早い段階から専門業者に相談し、総合的な視点で最適なプランを立てることが重要です。特に、設置だけでなく点検・修理・部品交換にまで対応できる業者であれば、運用後の管理も一括して任せられるため安心です。
創業60年以上の小川電機株式会社は、数多くのキュービクル設置工事を手掛けてきた実績を持ち、その経験を活かした最適な提案で安全な電気環境づくりを支援します。設置工事だけでなく、定期点検や修理、部品交換にも一貫して対応しているため、キュービクルに関する管理を安心してお任せいただけます。長期的な安定運用を実現するために、ぜひお気軽にご相談ください。