非常用発電機は、災害時でも電力を確保できる重要な設備です。停電による閉じ込め事故を防ぎ、スプリンクラーなどの防火設備を稼働させることで被害を最小限に抑えることができます。
しかし、発電機は大型のため設置場所の確保が課題となるケースも少なくありません。そこで今回は、非常用発電機を屋上に設置できるのか詳しく解説します。
設置可否の判断だけでなく、設置までの流れや注意点、費用の相場、信頼できる業者選びのポイントまで理解できる内容です。非常用発電機の導入を検討している方や、設置場所に悩んでいる方にとって必ず役立つ情報をお届けします。
非常用発電機の設置場所
非常用発電機の設置場所は、最初に慎重に決めておく必要があります。なぜなら、一度設置すると簡単に移動できず、後から場所を変えることが困難だからです。
したがって、それぞれの設置方法の特徴を理解し、条件に合った場所を選ぶことが欠かせません。ここでは、代表的な設置場所の特徴を整理して解説します。
屋内設置
非常用発電機は屋内に設置することも可能です。ただし、特定の条件を満たしておかなければいけません。なぜなら、非常用発電機は稼働時にガスを排出したり騒音を出したりするからです。
ここで、重要になるのが特定の条件を理解しておくことです。屋内に設置するために満たしておかなければならない主な条件は次のとおりです。
- 専用機械室の設置:屋内に設置する場合は、耐火構造の専用機械室に設置しなければいけません。
- 不燃材料で区画:不燃材料で造られた壁、柱、床、天井で区画された室内に設置する必要があります
- 防火戸の設置:窓や出入り口には防火戸を設置する必要があります。
- 換気設備
また、非常用発電機が出す排気ガスにより一酸化炭素中毒になる危険性があるため、充分な換気設備を整えておく必要があります。
- 防振設備の設置と騒音対策の実施
- 燃料タンクの設置場所を確保する
- 法廷離隔距離の確保
火災予防条例や保守点検上、必要な離隔距離を確保しておく必要があります。
これらの条件を満たせば屋内設置は可能ですが、専門的な判断が必要となるため、検討段階から業者に相談することが重要です。
屋外設置
非常用発電機の設置場所が屋外であれば、どこに設置しても問題ないと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、押さえておかなければならないポイントがあります。
非常用発電機を屋外に設置するときの主なポイントは次の2つです。
- スペースに余裕を持たせる:消防法では、自家発電装置の周囲に一定の幅の空地を確保しなければいけないと定められています。そのため、非常用発電機を屋外に設置する場合は余裕を持たせたスペースを確保することが大切です。
- 燃料タンクと発電機の間に一定の距離を保つ:安全性を確保するために、発電機と燃料タンクの間には一定の距離を保つ必要があります。充分な距離が確保できない場合は、不燃材料で造られた防火上有効な遮へい物を設置しなければなりません。
屋外に設置する場合は、これらのポイントを考慮したうえで設置場所を決めるようにしてください。少しでもわからないことがあれば、早めに業者に相談することをおすすめします。
屋上設置
商業ビルなどでは、屋上に設置するケースも多く見られます。屋上設置は限られたスペースを有効に使える点が大きなメリットです。ただし、建物が発電機の重量に耐えられるかどうかを必ず確認し、必要に応じて補強工事を行わなければなりません。
さらに、火災予防条例で定められた離隔距離を確保することも不可欠です。屋上設置は利便性が高い一方で、建物の状態や法令順守が重要な条件となります。少しでも不安があれば、専門業者に相談して安全に設置できるか確認することが望ましいでしょう。
非常用発電機を屋上設置する流れ
非常用発電機を屋上に設置する際は、「基礎工事」「搬入」「設置工事」の3段階を踏むことが一般的です。安全性と確実な稼働を実現するためには、それぞれの工程で注意すべきポイントを理解しておく必要があります。ここでは、屋上設置の流れを順に解説します。
基礎工事
非常用発電機は、必ず基礎に固定する必要があります。固定されていないと、地震時に転倒して故障や二次被害を招く恐れがあるためです。コンクリート基礎で底面全体を支えることで、振動や騒音を軽減する効果もあります。ただし、基礎だけで十分かどうかは設置環境によって異なるため、業者と相談して適切な対策を検討することが重要です。
特に屋上設置では振動が建物全体に伝わったり、下の階で騒音が問題になったりする場合があります。非常時に快適な環境を確保するためにも、事前に十分な対策を講じる必要があります。
基礎工事の工期はおおむね1〜2週間ですが、規模や天候などにより変動するため、事前に業者へ確認しておきましょう。
搬入
屋上への搬入は、クレーンで吊り上げる方法が一般的です。そのため、作業当日までにクレーンの停車スペースを確保する必要があります。敷地内に余裕がなければ道路を使用する場合もあり、近隣への配慮や事前周知が欠かせません。
また、周辺環境によってクレーンが使用できない場合は、発電機を分解して運ぶ「分解搬入」が行われることもあります。この方法は人員や費用がかさむため、状況に応じた最適な手段を提案できる経験豊富な業者を選ぶことが大切です。組み立てには高度なノウハウが求められるため、実績のある業者かどうか必ず確認しましょう。
設置工事
搬入が完了したら、発電機を基礎に据え付けます。この工程で最も重視すべきは、安全かつ正確な施工です。業者によって施工品質に差が出やすいため、豊富な経験を持つ業者に依頼することが安心につながります。
設置の目的は単に据え付けることではなく、非常時に確実に稼働する環境を整えることにあります。据付後は電気配線と接続し、分電盤周辺での作業にあたっては関係者以外が立ち入らないよう配慮が必要です。
最後に消防署の立ち合いで試運転を行い、問題がなければ設置工事は完了します。
非常用発電機を屋上設置する際の注意点
非常用発電機を屋上に設置する際は、防振・騒音対策と安全な工事環境の確保が不可欠です。特に工事環境の整備は、社員や作業員の安全を守るうえで最も重要な要素となります。ここでは、設置時に押さえておくべき注意点を解説します。
- 防振・騒音対策
- 安全な工事環境の構築
防振・騒音対策
非常用発電機は稼働時に必ず振動や騒音を伴います。屋上設置ではそれが下のフロアに伝わりやすく、業務や生活に支障を及ぼす可能性があります。そのため、防振装置や遮音構造の導入など、適切な対策を事前に講じることが求められます。
どの程度の対策が必要かは建物の構造や設置条件によって異なるため、必ず専門業者と相談して判断することが重要です。
安全な工事環境の構築
設置工事中は多くの作業員が建物を出入りするため、事故を防ぐ体制づくりが欠かせません。理想は、作業員専用の通行ルートを設けて社員と動線を分けることです。これにより接触事故のリスクを大幅に減らせます。
ルートの分離が難しい場合でも、工事期間や作業時間を社員に周知し、現場周辺に近づかないよう徹底することで、安全性を高めることが可能です。
非常用発電機を屋上設置する場合の費用
非常用発電機を屋上に設置する費用は、容量や建物の条件によって大きく変動します。正確な金額を把握するには、必ず業者に見積もりを依頼する必要があります。
その際に重要なのが、複数社からの見積もりを取ることです。1社だけでは費用が妥当か判断できませんが、複数社を比較すれば相場を把握でき、極端に高額な業者を避けやすくなります。
こうした比較・検討を通じて、費用感をつかみつつ適正価格で依頼できる可能性が高まります。そのため、見積もりは必ず複数社から取るようにしてください。
ただし、安さだけで業者を選ぶのは危険です。工事の質が低ければ非常時に発電機が稼働せず、設置の意味を失ってしまいます。後悔しないためにも、費用と品質のバランスを考慮し、信頼できる業者を慎重に選ぶことが欠かせません。
屋上設置を依頼するときの業者選びのポイント
非常用発電機を屋上に設置する際、最も重要なのは業者選びです。適切な業者を選ばなければ、設置後の安全性や運用に大きな支障をきたす可能性があります。特に重視すべきポイントは3つです。
- 顧客目線の提案ができること
- 対応範囲
- 実績
非常用発電機は設置後に法令で定められた点検が必要となるため、設置工事だけでなく長期的な運用を見据えて業者を選ぶことが欠かせません。最後に、それぞれのポイントを詳しく解説します。
顧客目線の提案ができること
信頼できる業者かどうかは、顧客の希望や予算を踏まえた提案をしてくれるかで判断できます。一部の業者は利益を優先し、必要以上に容量の大きい発電機をすすめたり、十分な説明もなく高額な見積もりを提示したりすることがあります。このような業者に依頼すると不要な費用負担につながりかねません。
一方で、顧客目線の業者は、予算内で最適なプランを提示し、どうしても費用が増える場合は明確な理由を説明した上で柔軟な代替案を提案してくれます。業者を選ぶ際は、こちらの要望を正しく反映した見積もりを提示できるかを確認しましょう。
対応範囲
非常用発電機は設置後も法令に基づく定期点検が義務付けられているため、業者がどこまで対応できるかを事前に確認することが重要です。
中には設置工事は行うものの、点検や修理は自社で対応していない業者も存在します。その場合、外部に委託する形となり仲介手数料が発生し、余計なコストがかかることになります。
無駄な費用を避けるためには、設置から点検・修理・部品交換まで一貫して対応できる業者を選ぶことが理想です。対応範囲をしっかり確認しておくことで、後々のトラブルやコスト増を防ぐことができます。
実績
業者選びでは、実績の豊富さも大きな判断基準となります。
施工経験が豊富な業者は現場に慣れており、効率的かつ質の高い工事を実現できます。さらに、経験に基づくノウハウを活かして、振動・騒音対策など現場に即した的確なアドバイスを受けられる点も大きなメリットです。
実績の確認は、施工の信頼性を確かめるだけでなく、無駄な人件費や不適切な工事を避ける意味でも重要です。非常用発電機を後悔なく設置するためには、豊富な経験を持つ業者を選ぶことが欠かせません。
まとめ
屋上に非常用発電機を設置することは、限られたスペースを有効に活用できる有効な方法です。しかし、建物の積載荷重や劣化状況を無視して設置することはできず、場合によっては補強工事が必要となります。そのため、検討段階から専門業者に相談し、建物の状態や法令上の要件を踏まえて判断することが欠かせません。
また、屋上設置では振動や騒音への対策も必須です。適切な対応を怠ると、非常時にストレスや不具合を生み出し、発電機の役割を十分に果たせなくなる可能性があります。
ただし、必要な対策の程度は設置環境により大きく異なるため、専門的な知識を持つ業者の判断を仰ぐことが重要です。経験豊富な業者であれば、状況に応じたアドバイスや柔軟なプランを提供してくれるため、安心して運用できる環境が整えられます。
非常用発電機は一度設置すると容易に移動できないため、工事を任せる業者選びが成否を左右します。後悔を避けるためにも、実績と信頼性を兼ね備えた業者に依頼し、長期にわたり安心できる体制を整えることが大切です。
創業60年以上の小川電機株式会社は、多数の非常用発電機設置を手がけてきた豊富な実績を持ち、安全性を最優先にした工事を行っています。さらに、設置だけでなく点検・部品交換・修理にも一貫対応しており、非常用発電機に関するあらゆるサポートが可能です。
安心で確実な環境を整えるため、ぜひお気軽にお問い合わせください。