ビルや工場、商業施設などの建物所有者・管理者(設備オーナー)様に向けて、防災設備・非常用発電機に関する重要な法改正・基準変更のポイントを解説します。
非常用発電機は、火災や地震などの有事において、火災報知器、スプリンクラー、排煙設備、非常用エレベーターなどに確実に電源を供給するための重要設備です。
これまでは問題なく運用できていた既存の発電機であっても、更新作業(リニューアル)を行うタイミングで「従来の容量では不適合となり、より大きな容量(出力)の発電機へ入れ替える必要が出てくる」 ケースが多発しています。
本記事では、技術的な変更点やその背景、施設運用への影響、そして今後の具体的な対応策について分かりやすく解説いたします。
前田 恭宏 小川電機株式会社 経営企画室
電材業界で40年以上にわたり営業として従事。
空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。
キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
この記事の監修者
1. 何が変わったのか?消防予「第100号」から「第159号」への変更
非常用発電機の出力選定(必要な発電容量の計算)は、消防庁発行の通知および日本内燃力発電設備協会(以下、内発協)が定める基準・ソフトに基づいて実施されています。
これまで長年にわたり実務のベースとなってきた「消防予第100号(平成27年)」が、新たに制定された「消防予第150号・159号(令和8年4月16日付け通知)」へと改定されました。
主な背景と基準厳格化の理由
改定の背景には、近年の建築設備における「パワーエレクトロニクス技術の普及」および「計算精度の高度化」があります。
インバータ機器・電子制御機器の増加
現代のビル設備(LED照明、VVVFエレベーター、高効率ポンプ、空調機器など)には、多くのインバータやパワー半導体が使用されています。これらは省エネに優れる反面、電源に対して高調波や急激な電圧・周波数変動を与える特性があります。
非常時の確実な始動・給電の担保
従来計算では、旧来の直動始動・モータ負荷を前提とした簡易的な計算式や余裕度が採用されていました。しかし、実際の災害時に最新の電子制御機器やインバータ機器が一斉に始動・運転を開始した際、従来の計算では「発電機の電圧降下や周波数低下が想定を超え、保護装置が働いて発電機が停止する」という懸念が示されるようになりました。
これらを踏まえ、消防予第159号では負荷特性の反映および安全余剰度の評価方法が厳格化されました。
2. 従来基準(100号)と改定基準(159号)の比較
具体的に計算基準の何が変わったのか、代表的なポイントを比較表にまとめました。
比較項目 | 従来基準(消防予第100号) | 新基準(消防予第159号) | 設備オーナー様への影響 |
|---|---|---|---|
計算ソフトのバージョン | NH1V or NH4 (Ver. 3.x 等) | NH1V or NH4 Ver. 4.1 | 旧ソフトによる計算結果・出力選定書は無効(新ソフトでの再計算が必要)。 |
入力パラメータの精緻化 | 単純な馬力(kW)や一般的な始動方式による一律計算が主流 | 負荷の制御方式(インバータ、VVVF、減圧始動等)の厳密な評価 | インバータ負荷等が多い場合、電圧降下・許容容量の判定が厳しくなる。 |
過負荷・電圧降下の安全率 | 従来の安全率・過渡特性評価式 | 高圧・低圧および負荷変動に対するマージン・過渡応答特性の厳格評価 | 始動時の過渡的な電圧低下・周波数低下をクリアするために必要な定格容量が増大。 |
既存機器リニューアル時の扱い | 「既存と同容量(同kW)」での単純更新が可能だった | 更新時点での新基準(159号)に基づく再計算が求められる | 同じ負荷構成であっても、1〜2ランク上の容量(kW)選定が必要になるケースが発生。 |
3. なぜ既存機器の更新時に「容量アップ(大型化)」が必要になるのか?
「既存の負荷設備(モータや照明)を増やすわけではないのに、なぜ発電機だけ大きくしなければならないのか?」というご疑問を持つオーナー様は少なくありません。
理由を視覚的に理解できるよう、概念図で示します。
非常用発電機の容量決定イメージ(概念図)

このように、接続されている設備(消防負荷・一般負荷)が全く同じであっても、計算式の評価ロジックが厳格化されたため、計算上の必要出力値が上昇します。
容量アップに伴い発生する二次的課題
発電機の容量(kW/kVA)が大きくなると、単に発電機本体の価格が上がるだけでなく、設置環境に関する各種改修が必要となる場合があります。
- 設置スペース・重量の増加:本体サイズが大きくなり、既存の搬入口を通らない、耐荷重の補強が必要になるなどの問題。
- 換気・排気設備の改修:エンジン排気量増大に伴う給排気ダクト・ガラリサイズの変更。
- 配線・盤設備の変更:許容電流増大に伴う幹線ケーブルの太径化や主遮断器の変更。
- 燃料タンク容量の変更:規定運転時間を確保するために必要な燃料消費量が増えるため、燃料小出槽・小出タンクの増設が必要になるケース。
4. 設備オーナー様がとるべき対応手順
非常用発電機の更新時期(設置から20年〜30年経過)を迎えている、または保守点検会社から更新提案を受けているオーナー様は、以下のステップで対応を進めることを推奨します。

5. よくある質問(Q&A)
非常用発電機の容量計算厳格化(消防予第159号)に関して、建物オーナー様・管理組合様から寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。
Q1. 現在問題なく動いている非常用発電機も、今すぐ容量アップの改修が必要ですか?
- いいえ、直ちに既存設備を改修・交換しなければならないわけではありません。
既存の発電機は、設置当時の消防法令・基準に基づいて設置・届出が完了しているため、そのまま運用を継続すること自体は法的違反とはなりません。ただし、「機器の寿命や老朽化に伴い、非常用発電機を更新(入れ替え)するタイミング」において、新基準(消防予第150号・159号およびVer 4.1ソフト)に基づく出力再計算と消防届出が必要となります。
Q2. 発電機の容量が大きくなると、コストや工事期間はどれくらい変わりますか?
- 機種選定だけでなく、設置環境によって変動します。
本体価格のアップに加え、設置架台の補強、幹線ケーブルの引き直し、給排気ダクトの拡張工事などが必要になる場合、従来の「同等品入れ替え」に比べて費用および工期が増加する可能性があります。そのため、更新計画の初期段階で現地調査を行い、周辺工事を含めたトータルコストを把握することが極めて重要です。
Q3. 計算ソフト(NH1Vor4.1)による計算結果は、どこで入手・確認できますか?
- 防災設備業者、製造メーカー、専門商社などを通じて「出力計算書」を作成・取得します。
計算ソフト NH1Vor4.1 は一般のオーナー様が直接運用するものではなく、専門知識を持った技術者が負荷一覧表(モータ出力、起動方式、同時投入群など)をインプットして計算書を出力します。更新のご検討時には、最新ソフトによる「出力計算書」の提出を納入業者へ依頼してください。
Q4. 容量アップを避けるために、接続する負荷を減らすことはできますか?
- 消防法で義務付けられている消防用設備等の負荷を任意に外すことはできません。
ただし、一般停電用負荷(保安負荷)の整理や、制御方式の見直し(例:始動時の同時投入をずらすシーケンス制御の導入等)を行うことで、計算上の始動容量・必要kVAを抑えられるケースがあります。
6. 非常用電源設備のリニューアルなら小川電機にお任せください
非常用発電機の更新は、単に「古い機械を新しい機械に置き換える」だけの作業ではありません。
最新の消防法令(消防予第150号・159号)への適合、建築構造や電気設備との調和、コストパフォーマンスの最適化など、多角的な視点と高度な技術的ノウハウが求められます。
非常用電源設備のご相談・更新計画は、創業80年近い歴史と実績を誇る小川電機株式会社にお任せください。
法令・基準変更への迅速な対応
最新の計算ソフト(NH1Vor4.1)に基づいた正確な出力計算・機種選定をスピーディーに行います。
豊富な実績に基づく最適ソリューションの提案
長年の現場ノウハウを活かし、受変電設備から発電機本体、各種配線・施工まで、建物全体の電気設備を見据えた最適なリニューアルプランをご提案します。
確実な施工管理とアフターサポート
機器の手配から現地工事、各種届出サポート、設置後のメンテナンスまで、トータルでバックアップいたします。
「自社の発電機は更新時にどれくらいの容量になるのか?」「既存の設置スペースに収まるか?」など、ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。
【お問い合わせ・会社情報】
- 小川電機株式会社
- 公式WEBサイト: https://www.ogawa.co.jp/
前田 恭宏 小川電機株式会社 経営企画室
電材業界で40年以上にわたり営業として従事。
空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。
キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
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