納入実績でわかる軽油・重油・都市ガス・LPガスどれを選ぶ?
非常用発電機の導入・更新を検討する際、最も重要かつ悩ましい比較ポイントの一つが「どの燃料を選ぶべきか」という点です。災害時のライフライン維持、消防法や建築基準法などの法規制、初期コストと維持管理の手間など、多角的な視点からの評価が求められます。
本記事では、全国における非常用発電機の燃料比率の最新動向から、液体(軽油・重油)・気体(都市ガス・LPガス)それぞれの比率の違い、燃料ごとのメリット・デメリット比較、そして施設タイプ別の選定理由までを網羅して分かりやすく解説します。
前田 恭宏 小川電機株式会社 経営企画室
電材業界で40年以上にわたり営業として従事。
空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。
キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
この記事の監修者
1. 全国の非常用発電機における燃料比率の最新動向
全国のビル・工場・病院・公共施設等に設置されている非常用発電機の燃料比率は、設置台数ベースで「液体燃料(軽油・重油)が約9割」という圧倒的なシェアを占めています。残り約1割が「気体燃料(都市ガス・LPガス)」となります。

なぜ液体燃料が約9割を占めているのか?
歴史的経緯と普及実績
昭和〜平成にかけて導入された非常用発電機の多くは、信頼性と出力密度の高いディーゼルエンジン(軽油・A重油仕様)でした。消防法上の認可実績やメーカーの標準ラインナップが最も充実しているため、現在でも更新・新規ともに第一選択になりやすい背景があります。
高出力と応答性
消防用設備(スプリンクラー、排煙機、エレベーター等)を瞬時に立ち上げるための高トルク・高出力が得られる点も液体燃料の強みです。
近年の変化(気体燃料の急増傾向)
東日本大震災や近年の巨大台風・大地震をきっかけに、「災害時の燃料補給の難しさ(液体燃料の物流途絶)」や「長期間保管による燃料劣化」が大きな課題となりました。これにより、劣化せず保管でき、非常時でも入手・供給が途絶しにくいLPガスバルク給湯・発電システムや都市ガス耐震配管を活用したBCP対応発電機の新規採用割合が急速に伸びています。
2. 施設の規模・用途による燃料比率と内部内訳
施設規模(小規模・中規模・大規模・超大規模)や目的に応じて、選ばれる燃料の構成比は大きく変化します。次に液体燃料では比率はどうか?また気体燃料では比率はどうか?を見てみましょう。
① 液体燃料内訳:軽油 vs 重油(A重油)
液体燃料の中では、「軽油:約80%」「重油(主にA重油):約20%」の割合となっています。
軽油が主流の理由(約80%)
一般ガソリンスタンドやパトロール給油などで手配しやすく、小〜中型エンジンでの扱いが容易なためです。指定数量(消防法上の危険物保管制限)も1,000Lであり、多くの中小〜中規模施設で扱いやすいラインナップとなっています。
重油(A重油)が選ばれる理由(約20%)
出力1,000kWを超える大型・超大型の非常用発電機では、燃料消費量が膨大になります。A重油は軽油に比べて燃料単価が安いため、ランニングコストや大容量備蓄の観点から大型工場、大型病院、超高層複合ビル等で重宝されます。ただし、動粘度が高く冬場の流動性確保やスラッジ(汚泥)発生のリスクがあるため、適切な管理が必要です。
② 気体燃料内訳:都市ガス vs LPガス
気体燃料の中では、「都市ガス:約55%」「LPガス:約45%」とほぼ拮抗しています。
都市ガス(約55%)
導管が敷設されている都市部の大規模ビルや複合施設で多く選ばれます。特にコージェネレーションシステム(日常発電+排熱利用)と兼ねる非常用発電機や、中圧ガス管(地震に強い耐震導管)を引き込める地域で採用されます。
LPガス(約45%)
ガス導管が未整備の地域や、都市ガスの寸断リスクを回避したい避難所・介護施設・防災拠点病院で採用されます。敷地内に「LPガスバルク貯槽(タンク)」を設置することで、外部インフラに依存しない独立したエネルギー源を確保できます。
3. 4つの燃料(軽油・A重油・都市ガス・LPガス)のメリット・デメリット徹底比較
それぞれの液体燃料(軽油・重油A)と気体燃料(都市ガス・LPガス)特性、備蓄性、災害対応力、コストを比較表にまとめました。
比較項目 | 軽油(ディーゼル) | A重油(ディーゼル) | 都市ガス(ガスエンジン) | LPガス(プロパン ) |
燃料形態 | 液体(指定数量:1,000L) | 液体(指定数量:2,000L) | 気体(配管供給) | 気体(ボンベ/バルク貯槽) |
機器本体コスト | 安い(普及台数多数) | 普通〜やや高い(大型用) | 高い | 高い |
燃料コスト(単価) | 普通 | 安い | 普通〜比較的一定 | やや高い(契約による) |
燃料の長期保存性 | 低い(1〜2年で酸化・劣顔リスク) | 低い(スラッジ分離・水分混入リスク) | 不要(配管供給のため) | 非常に高い(半永久的に劣化しない) |
災害時の補給性 | 道路寸断やスタンド混雑で補給難 | タンクローリー手配が必要で難 | 配管破損時は途絶(中圧管は強い) | 高い(個別備蓄+配送網強固) |
維持管理の手間 | 燃料抜き替え・ろ過作業が必要 | 燃料ろ過・加温装置等の管理必要 | 燃料管理自体は不要 | 燃料管理自体は不要 |
環境・排気 | 黒煙・臭い・SOxが発生 | 黒煙・臭い・SOxが多め | 極めてクリーン(黒煙なし) | 極めてクリーン(黒煙なし) |
主な適合施設 | 中小ビル、病院、学校、店舗 | 大規模工場、超高層ビル、大病院 | 都市部ビル、コージェネ併用施設 | 介護施設、避難所、病院、防災拠点 |
燃料ごとの特徴まとめ
軽油
- 長所: 機器本体が安く、対応メーカー・機種が豊富。高出力でレスポンスが良い。
- 短所: 定期的な燃料の抜き替えや清掃を行わないと、燃料が酸化劣化・腐敗して不始動の原因になる。
A重油
- 長所: 燃料単価が安く、大容量発電(数千kWクラス)におけるコストメリットが大きい。
- 短所: セパレーターや保温装置が必要な場合があり、不純物(スラッジ)によるフィルター詰まりリスクがある。
都市ガス
- 長所: 敷地内に燃料タンクを置く必要がなく、燃料切れの心配がない。排気ガスが非常にきれい。
- 短所: 地震などで都市ガス配管(低圧管)が損傷した場合、供給が停止する。導入費用が高い。
LPガス
- 長所: 燃料が腐らない(劣化しない)。現地備蓄型のためインフラ切断に強く、災害時のBCP対策として最優秀。
- 短所: ボンベやバルク貯槽の設置スペースが必要。機器およびガス設備の初期費用が高い。
4. お客様がその燃料を選んだ理由と導入施設例
施設の「目的」「予算」「設置環境」「防災計画(BCP)」によって、選択される燃料は異なります。代表的な4つの施設例とともに、採用に至る決定打となった理由をまとめました。

①【軽油】を選択した施設例:静岡の大手製造工場の守衛室
- 施設概要: 守衛室3~4人常駐室
- 選定した燃料: 軽油(ディーゼル発電機 60KVA)
- 選定理由:
- 施工費用削減の一体型
設置場所の確保が難しい為に、油庫一体型の最小サイズの機種を選ぶ事で、設置場所の確保が出来た。
- 60KVA高容量確保で使用可能容量がアップする。
60KVAの確保で、守衛室内電源を72時間無給油にて100%確保できた。
②【A重油】を選択した施設例:特別養護老人ホーム
- 施設概要: 24時間体制の運用となります。
- 選定した燃料: A重油(ディーゼル発電機 200KVA)
- 選定理由:
- 燃料コストの圧倒的安さ
瞬間的な停電(瞬停)や長時間の計画停電時に莫大な電力を消費するため、燃料消費量が非常に多くなります。単価の安いA重油を採用することで、ランニングコストおよびテスト試運転にかかる燃料費を最小限に抑えられます。
- 敷地内保管の上限枠の増大
「少量危険物」の範囲に収める為に、軽油であれば1000L未満になるが。重油Aであれば2000L未満と倍の燃料が確保できて、無給油運転の時間が伸びた。
③【都市ガス】を選択した施設例:北海道のアナログ半導体製造工場
- 施設概要: 工場内に都市ガスの設備のある製造工場
- 選定した燃料: 都市ガス(中圧ガス引き込み・ガスエンジン発電機 500Kvaと300KVA)
- 選定理由:
- 燃料補給が不要(無限供給)
既設工場内に都市ガス配管が通っていた為に、その配管を利用する事で、補給作業が必要なくなり指定設備の72時間以上の連続運転が可能となりました。
- 環境性能と騒音・煙の抑制
周囲に商業施設や住宅が密集しているため、黒煙や不快な臭いが出ず、静音性に優れたガスエンジン式が不可欠であったため。
- 工場内各設備のBCP(事業継続)価値の向上
「災害時でも燃料切れを起こさず稼働し続けるビル」としてアピールでき、外資系企業やIT企業などに強い強みとなっています。
④【LPガス(バルク)】を選択した施設例:小規模老人ホーム
- 施設概要: 郊外に位置する高齢者福祉施設
- 選定した燃料: LPガス(LPガスバルク貯槽併設・LPガス非常用発電機 40KVA)
- 選定理由:
- 燃料が劣化せず「いざという時に必ず動く」安心感
軽油の場合、年に数回のテスト運転だけでは燃料が腐敗し、数年に一度全量抜き替え(高額な処分費)が発生します。LPガスは半永久的に劣化しないため、メンテナンスの手間と管理コストを劇的に削減できます。
- 災害時インフラからの完全独立
大地震で電気・都市ガス・水道が止まった場合でも、敷地内のLPガスバルク貯槽から直接燃料を供給できる「分散型エネルギー」のため、数日間施設内の照明、空調、生命維持装置、調理機器を動かし続けることができます。
- 国や自治体の補助金活用
災害対応型のLPガスバルク設備や発電機導入に対して、国の補助金制度(防災・減災対策補助金等)が利用でき、初期費用のハードルを下げられたため。
5. まとめ:非常用発電機の燃料選びで成功するためのポイント
非常用発電機の燃料選択は、単に「本体費用が安いから」という理由だけで選ぶと、導入後の維持管理費用や災害時の運用で失敗するケースがあります。
- コスト重視・実績重視・標準的な施設 ➔ 軽油
- 超大規模・大容量・日常的にも燃料を使う工場 ➔ A重油
- 都心部・敷地スペース制限・長期連続運転重視のビル ➔ 都市ガス
- 福祉施設・病院・避難所・燃料メンテナンスを楽にしたい施設 ➔ LPガス
自施設の「設置場所の制約」「求められる稼働時間」「維持管理に割ける手間に応じた運用体制」を総合的に比較検討し、最適かつ安全な燃料方式を選択することが重要です。
前田 恭宏 小川電機株式会社 経営企画室
電材業界で40年以上にわたり営業として従事。
空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。
キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
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