消防予第159号通知と「30年前の設備」が直面する更新リスク・設置スペース問題を徹底解説
ビルや工場、病院、商業施設、ホテルなどの施設管理者様や事業主様にとって、災害時の生命線となるのが「非常用発電機設備(自家発電設備)」です。地震や台風などの自然災害による停電時にも、消火栓ポンプ、スプリンクラー、排煙設備、非常用エレベーターといった消防用設備等に電力を確実に供給し、利用者の安全と建物の安全性を維持する極めて重要な役割を担っています。
しかし現在、多くの施設で「設置から30年以上が経過した非常用発電機の更新」において、「既存と同等容量の発電機を選んだはずなのに消防申請が通らない」「最新の計算方式で算出すると容量アップが必要となり、既存の室内設置スペースに収まらない」という深刻な問題が頻発しています。
さらに、令和8(2026)年4月16日に発出された消防庁通知「消防予第159号」により、長年親しまれてきた従来の基準(昭和63年100号通知)が廃止され、自家発電設備の出力算定方法はより一層厳格化されました。
本記事では、昭和63年の100号通知から令和8年の159号通知に至る算定基準の歴史的背景や、PC出力算定プログラムの厳格化に伴う容量アップのメカニズム、室内設置における省スペース問題、そして施設オーナー様が今すぐ講じるべき具体的な対策について専門的な視点からわかりやすく解説します。
前田 恭宏 小川電機株式会社 経営企画室
電材業界で40年以上にわたり営業として従事。
空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。
キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
この記事の監修者
1. 非常用発電機設備を取り巻く法令と容量算定の基礎知識
非常用発電機は、万が一の火災や停電時に消防用設備等を確実に作動させるため、消防法および関連法令によって厳密な設置・維持管理基準が定められています。
自家発電設備における「出力算定」とは?
非常用発電機を設計する際、単に接続される機器(負荷)の定格消費電力を合計するだけでは不十分です。
モーター(電動機)などの負荷は、始動する瞬間(始動時)に定格電流の数倍におよぶ巨大な電流(始動電流)が流れるという特性を持っています。また、複数の機器が同時に始動する場合や、電圧・周波数の変動を許容範囲内に抑える必要があるため、発電機にはそれらの負荷変動に耐えうる「出力容量(kVA/kW)」が求められます。
この「どのような手順で、どれだけの負荷が同時に動き、どの程度の電圧降下まで許容するか」を数式化して発電機の必要容量を算出する手続きを「出力算定(容量計算)」と呼びます。
2. 昭和63年「100号通知」から令和8年「消防予第159号」への変遷
非常用発電機の出力算定方法は、時代の技術動向やパソコンの普及、過去の災害における課題を受けて進化してきました。
昭和63年8月1日付け「消防予第100号(100号通知)」の時代
これまで30年以上にわたり、非常用発電機の出力算定の根幹をなしてきたのが、昭和63(1988)年8月1日に消防庁予防課長より発出された「消防予第100号通知(100号通知)」です。
100号通知が制定された当時は、設計者の手作業による計算や簡略化された計算表が主流でした。そのため、始動時の電圧降下()や発電機の過負荷耐性()、始動容量()などの評価において、一定の安全率を見込みつつも、実務上あらかじめパターン化された簡易的な係数を用いる運用が許容されていました。
当時設計・設置された非常用発電機は、当時の手計算基準や100号通知の初期運用に基づいて定格容量が決められており、現在から見ると比較的コンパクトな出力設定で設置許可が得られていたケースが多く存在します。
パソコン環境の発達と出力算定プログラムの「厳格化」
1990年代後半から2000年代にかけて、建築設計・設備設計の現場にパソコンが急速に普及しました。これに伴い、一般社団法人日本内燃力発電設備協会(内発協:NEGA)などが提供する「自家発電設備出力算定ソフトウェア」を利用したデジタル計算が一般的となりました。
コンピュータによるシミュレーション手法が高度化・細密化するにつれ、従来の手計算や簡易テーブルでは曖昧に処理されていた以下のような要素が、デジタルプログラム上で精密かつ厳格に反映されるようになります。
始動電流・始動リアクタンスの厳密評価
最新の標準的な電動機(トップランナーモータ等)の特性に合わせた詳細な過渡現象計算。
許容電圧降下率の厳格な適用
消火栓ポンプや非常用エレベーター等の始動時における電圧降下を、指定された閾値内に収めるためのシミュレーション。
高減衰・高効率機器への安全マージン確保
高効率化された現代の電気設備機器がもたらす過渡応答への影響考慮。
このソフトウェア算定の精密化・厳格化により、「同じ建物・同じ消防設備構成」であっても、最新のプログラムを通して計算を実行すると、昭和63年当時の手計算結果よりも一回りから二回り大きい発電機容量が必要とされるという現象が発生し始めたのです。
3. 【重大変更】令和8年4月16日発出「消防予第159号通知」の全貌
そして令和8(2026)年4月16日、消防庁予防課長より新たに「消防予第159号通知(消防用設備等の非常電源として用いる自家発電設備の出力算定について)」が発出されました。
本通知の最大のポイントは、「昭和63年8月1日付け100号通知を正式に廃止し、新たな出力算定基準へと一本化する」と明確に宣言された点です。
消防予第159号通知の主なポイント
消防予第159号通知では、自家発電設備の出力算定における基本的な考え方と具体的な算定手法が整理・再定義されています。
1. 出力計算の基本的な考え方
- 敷地内での共用時における合理化 同一敷地内の異なる防火対象物間で非常電源を共用する場合、防火対象物ごとに非常電源負荷の総容量から出力を算定し、その容量が最も大きい防火対象物の負荷に対して電力を供給できる出力であれば足りるとされました。
- 同時始動・同時使用の原則と例外 原則として、一の防火対象物に2以上の消防用設備等が設置されている場合は「同時に始動し、かつ同時に使用できる出力」とする必要があります。ただし、逐次5秒以内に電力を順次供給できる装置を設けた場合や、種別・組合せにより同時始動があり得ない場合(例:二酸化炭素消火設備と排煙設備など)には、同時投入における出力としないことができる旨が明記されています。
2. 発電機出力と原動機出力の算定、および「整合率(MR)」の導入
159号通知では、発電機そのものの電気的出力(:kVA)と、それを駆動するエンジン(ディーゼルやガスタービン等)の機械的出力(:kW)をそれぞれ算出し、両者の相性を評価する「整合率(MR: Matching Ratio)」の算式が厳格に提示されました。

通知では、この整合率(MR)が「1以上」となっていることが必須と規定されています。もし1未満となる場合は原動機出力を割増して修正しなければなりません。さらに、「適切な組合せとしては当該値を1.5未満としておくことが望ましい」と指針が示されました。
3. 「自家発電設備出力算定ソフトウェア」の公認
通知の第3において、詳細な算出例として国土交通省「建築設備設計基準」や一般社団法人日本内燃力発電設備協会の「NEGA C201 自家発電設備の出力算定法」が挙げられています。
そして、「一般社団法人日本内燃力発電設備協会が作成した『自家発電設備の出力算定ソフトウェア』により計算された出力算定結果は、本通知に適合しているものとして取り扱って差し支えない」と明確に位置付けられました。
これにより、行政(所轄消防署)の指導現場では、従来のあやふやな手計算や旧基準に基づく独自計算の提出が事実上認められなくなり、厳格化された最新プログラムによる計算書出力の添付が必須化されたことを意味します。
4. なぜ設備が変わっていないのに非常用発電機が「容量アップ」してしまうのか?
多くの施設オーナー様が疑問に抱かれるのが、「建物の消防設備(ポンプやファン等)は30年前から何も増やしていないのに、なぜ非常用発電機を更新するときに容量(kVA)を大きくしなければならないのか?」という点です。
その理由は、主に以下の3つの要因が重なっているためです。
【容量アップが発生する主な要因】
① 昭和63年(100号通知)時代の手計算・簡易基準と現代基準のギャップ
始動電流の評価方法の変化
現代のモーターは省エネ化・高効率化(トップランナーモータ等)が進んでいますが、一部の機種では始動時の突入電流(始動電流)が従来のモーターよりも高く設計されている場合があります。プログラム側では、どのようなモータが接続されても安全に始動できるよう、保守的な(安全側の)数値を適用して計算を行います。
② 最新の「自家発電設備出力算定ソフトウェア」による安全マージン・過渡現象計算の厳格化
シーケンス投入(時系列投入)条件の厳格化
複数の消火ポンプやファンを順番に動かす「逐次投入」を行う場合、昔の計算では投入間隔や始動完了タイミングを甘く見積もることができましたが、現在の159号通知および最新プログラムでは「5秒以内の電力供給」や正確な過渡電圧回復時間がシミュレーションされます。結果として、十分な電圧を維持するために発電機本体の定格容量を大きく評価せざるを得なくなります。
③ 消防予第159号通知による「整合率(MR)」適用と消防署による確認の徹底
整合率(MR 1.0)の遵守
発電機本体の容量(kVA)だけでなく、エンジン(原動機)の出力(kW)とのバランス(整合率)を1以上にするルールが徹底されたことで、「エンジン側だけを小さくしてコストを下げる」といった過去の特殊な設計手法が使えなくなり、パッケージ全体の定格出力が引き上げられることになります。
5. 施設オーナーを悩ませる「設置スペース問題」と更新時のリスク

非常用発電機の計算容量がアップすることは、単に機器の購入コストが上がるだけでは済みません。実務上で最も大きな障壁となるのが「設置スペース(寸法・重量)」の問題です。
屋内・電気室・地下設置における致命的な物理的制約
築30年以上経過した既存建築物において、非常用発電機は「地下の電気室」「屋内の機械室」「屋上の専用室」などに設置されているケースが多々あります。
当時、設計ギリギリの寸法で専用室が作られている場合、以下のような深刻な課題が発生します。
既存の部屋・基礎に納まらない
出力容量が1サイズ~2サイズアップすると、発電機の全長・全幅・全高、および重量が増加します。結果として、既存の防振台座(基礎)からはみ出してしまったり、保守点検に必要な周囲の離隔距離(消防法で定められた通路幅)が確保できなくなります。
搬入・搬出経路(搬入口)が通らない
発電機室の扉サイズや廊下の幅、エレベーターの耐荷重、地下へ通じるドライエリアの開口寸法は、設置当時の発電機寸法に合わせて作られています。容量が大きくなった最新の発電機は、搬入経路を通過できないリスクが生じます。
換気・排気ダクト容量の不足
エンジン出力(kW)が大きくなると、必要な給排気風量やラジエーター冷却風量、排気ガス量が増加します。既存の換気ギャラリーや排気ダクトのサイズでは容量不足となり、エンジンのオーバーヒートの原因となります。
更新時期を逃すリスク(突然の故障・不適合)
「スペースに入らないから」「予算がかかるから」と非常用発電機の更新を先延ばしにしていると、以下のような致命的なリスクに直面します。
停電時の不始動による二次災害
設置後30年を超えた発電機は、経年劣化により始動用バッテリーの低下、燃料の変質、冷却水漏れ、制御基板の電子部品故障などが蓄積しています。万が一の災害時に起動せず、消火設備が作動しないリスクが高まります。
消防点検における是正勧告・違反公表
負荷試験や予防保全点検が義務化されている中、故障や不適合を放置すると消防署から是正指導を受け、最悪の場合は建築物の安全基準不適合として社会的信用を失う恐れがあります。
このため、非常用発電機の更新をお考えになられているオーナー様は、最新の算定基準(159号通知)を踏まえた正確な容量計算と、設置場所・搬入経路の確保を含む計画策定を急ぐ必要があります。
6. 非常用発電機のご相談は「小川電機株式会社」へ
そのため、非常用発電機の導入・入れ替え・メンテナンスにあたっては、機器の選定から法令手続き、設置工事、導入後の保守点検までをトータルでサポートできる実績豊富な専門業者に相談することが極めて重要です。
非常用発電機のご相談は「小川電機株式会社」へ
創業60年以上の歴史と実績を持つ小川電機株式会社は、非常用発電機の選定・設計から、複雑な消防法・危険物申請の手続き、設置工事、さらには導入後の定期点検・負荷試験・燃料メンテナンスまで、一貫して対応可能な専門企業です。
小川電機株式会社が選ばれる理由
最新法令(消防予第159号)に準拠した最適な容量算定 最新の「自家発電設備出力算定ソフトウェア」を用い、消防予第159号通知に完全適合した出力計算をスピーディに行います。過大なオーバースペックによるコスト高を防ぎつつ、消防申請を確実にクリアする最適な容量を選定します。
設置スペース・搬入難現場における高度なエンジニアリング
「既存の電気室に納まらない」「搬入経路が狭い」といった困難な現場でも、小川電機株式会社の豊富な経験とノウハウで解決へと導きます。
- 分割搬入が可能なパッケージの選定
- コンパクト設計な最新機種へのリプレイス案
- 屋外キュービクル化や設置場所の移設提案
- 既存基礎の改修および換気ダクト工事の最適設計
ワンストップ対応による施工・申請の円滑化
非常用発電機の更新には、消防署への「消防用設備等設置届」だけでなく、燃料タンク(重油・軽油)に伴う「危険物指定数量未満届・危険物設置許可申請」、電気事業法に基づく「自家用電気工作物届出」など、多岐にわたる行政手続きが必要です。小川電機株式会社なら、これら複雑な手続きから設置工事・電気工事・建築工事までワンストップで対応いたします。
導入後も安心のトータル保守メンテナンス
非常用発電機は「建てて終わり」ではありません。消防法で定められた年1回の総合点検・負荷試験(または内部観察等)や、燃料の経年劣化を防ぐ燃料ろ過・清掃、始動用蓄電池の定期交換まで、充実したアフターフォローでお客様のBCP(事業継続計画)を長期的に支えます。
7. 非常用発電機の更新時に関するよくある質問
非常用発電機の更新時に関しての、お客様からの疑問点や質問がよくある内容をピックアップさせて頂いておりますので、参考としてください。
Q1:更新を考えているが全国対応していますか?
回答:はい!一部離島などは除きますが、全国対応させて頂いています。
Q2:消防署などへの申請業務もお願い出来ますか?
回答:はい!消防署含めた申請業務も対応しています。
Q3:見積りをお願いすればお金は発生いたしますか?
回答:いいえ!見積だけではお金は発生いたしません。
ただし特殊設置場所などの場合は特殊車両などの車輌代金は発生する事も有ります。
その時には見積り前にお客様にお伝えさせて頂きます。
Q4:他社様との相見積もりでもよろしいでしょうか?
回答: はい!大丈夫です。
Q5:リース・割賦(分割)などの相談には乗って頂けますか?
回答:はい!当社は大手ファイナンス会社様と契約をしていますので、相談から乗らせて頂きます。
* ただし最終審査が通るかはお客様とファイナンス会社様との間の事なので、
当社では決めれませんので、ご理解ください。
8. まとめ
昭和63年の100号通知廃止と、令和8年4月16日に発出された「消防予第159号通知」の運用開始により、非常用発電機設備の出力算定は完全に新しい時代へと突入しました。
「30年前と同じ容量で更新すれば大丈夫」という旧来の認識で進めてしまうと、工事直前になって「消防の許可が下りない」「納品された機器が部屋に入らない」といった取り返しのつかないトラブルにつながります。
施設の規模、用途、ご予算、そして求められるBCPレベルに応じた最適かつ安全なプランをご提案いたします。非常用発電機の新規導入、リプレイス、点検・燃料メンテナンスでお悩みの施設管理者様・事業主様は、ぜひお気軽に小川電機株式会社までお問い合わせください。
【お問い合わせ窓口】
小川電機株式会社
非常用発電機・防災設備ソリューション事業部
お電話・WEBフォームより、お気軽にご相談・お見積もりをご依頼ください。
前田 恭宏 小川電機株式会社 経営企画室
電材業界で40年以上にわたり営業として従事。
空調や照明からキュービクル、非常用発電機、トランス、制御盤、電線まで、電気設備全般に幅広く携わってきました。
キュービクルや非常用発電機の導入・更新に関する不安や疑問にも、現場経験をもとにわかりやすくご説明いたします。
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