キュービクルの納期は、標準品であっても数か月、カスタム仕様ならさらに長期化することがあります。そのため、設置を検討する際は、あらかじめ必要な期間を把握しておくことが重要です。今回は、発注から設置までにかかる具体的な期間や、納期が遅れる要因、そしてスケジュールを短縮するための工夫について詳しく解説します。
キュービクルとは
キュービクルは、発電所や変電所から送られてくる6,600ボルトの高圧電気を、商業施設や工場、オフィスビルなどで利用できる100〜200ボルトへ降圧するための変電設備です。この設備は、電力会社と高圧受電契約を結んでいる施設に導入されます。
一般家庭や小規模店舗のように低圧受電契約をしている場合は、電柱上の柱上変圧器で電圧を下げるため、キュービクルは不要です。一方、コンビニや大型工場、デパートなどは高圧で受電し、キュービクルを通じて電圧を調整します。
高圧受電を選ぶことで、送電時の電力ロスを減らすことができます。電流を小さく、電圧を高めて送ることで効率良く電力を確保できるためです。このような背景から、大規模な施設ではキュービクルの設置が不可欠となっています。
キュービクルの納期の目安
キュービクルの納期は、標準品かカスタム品かによって大きく異なります。ここでは、キュービクルの納期の目安について解説します。
標準品とカスタムの目安
標準品は既製の仕様をそのまま納品するため、発注から納品までは、1〜3ヶ月が一般的です。
これに対し、一方、カスタム仕様は機能や設計を調整する必要があり、3〜6ヶ月、場合によってはさらに長くかかります。つまり、納期は製品の仕様に左右されるのです。
送電までの所要時間
キュービクルを設置しても、すぐに電気が使えるわけではありません。地域の電力会社に送電を依頼する必要があり、その期間は工事規模や占用申請の有無で決まります。
たとえば、東京電力パワーグリッドでは、送電開始までの期間は「工事規模に応じた工期+占用申請期間」で計算されます。占用とは道路や公有地を独占的に使用して電柱や電線を設置することを指し、申請が必要です。主な目安は次のとおりです。
◆工事規模における期間
引込線工事 | 2ヶ月程度 |
電柱工事 | 3ヶ月程度 |
◆占用申請期間
国道 | 3ヶ月程度 |
都県道 | 3ヶ月程度 |
市町村区道 | 2ヶ月程度 |
一級河川 | 3ヶ月程度 |
その他官公有地等 | 3ヶ月程度 |
また、地中線供給の場合、送電までの所要期間は次のとおりです。
◆地中線供給の場合
国道 | 9ヶ月程度 |
都県道 | 8ヶ月程度 |
市町村区道 | 6ヶ月程度 |
河川 | 10ヶ月程度 |
このように、設置に加えて送電までの工事内容次第で、電気が使えるまでの期間は大幅に延びる可能性があります。
キュービクルの納期が変更される要因
キュービクルの納期は、外部環境や制度変更など複数の要因によって大きく左右されます。ここでは、キュービクルの納期が変更される主な要因を解説します。
- サプライチェーンの問題
- 制度・規格の切替
サプライチェーンの問題
材料の調達が滞ると製造工程が遅れ、結果として納期も延びてしまいます。
実際に2021〜2022年には、コロナ禍による需要の急増やアジア諸国のロックダウン、中国の電力不足、米国の寒波や停電などが重なり、半導体や樹脂、金属の供給が深刻に不足しました。その影響で、コネクターや基板、電線・スイッチといった電子部品が製造できず、さらにインバータやシーケンサ、ブレーカーなど配電盤の主要部品も不足しました。
結果として、キュービクルに組み込む配電盤の供給が滞り、最長で1年以上の出荷遅延が発生、国内メーカー各社が相次いで納期遅延を公表する事態となりました。
このように、キュービクルは半導体や金属などの資源に依存するため、世界的な供給網の変動に強く影響を受けます。
制度・規格の切替
制度や規格の見直しも、納期の遅延要因となります。直近では2026年度から「変圧器トップランナー改定」が予定されており、受注停止や駆け込み需要による混乱が懸念されています。
画像引用元:トップランナー変圧器第三次判断基準 2026年度スタート(一般社団法人日本電機工業会)
省エネ法は1979年に制定され、1999年改正以降は「トップランナー方式」が採用されています。
この方式は、市場で最も高性能な製品を基準とし、それ以上の省エネ性能を義務づけるものです。キュービクルでは内部の変圧器が対象となり、2006年以降段階的に判断基準が強化されてきました。
そして、2026年4月からは「第三次判断基準」が始まり、油入変圧器とモールド変圧器に対して一層厳しい省エネ基準が適用されます。これにより2014年基準の変圧器は出荷停止となり、切替時期によっては製品供給が一時的に滞る可能性があります。
このように、制度・規格の改定期はキュービクルの納期が不安定になりやすいため、事前の情報収集と計画が欠かせません。
キュービクルの納期を短縮するための工夫
キュービクルは標準納期でも数ヶ月を要するため、計画次第で工期をできる限り圧縮する工夫が必要です。ここでは、キュービクルの納期を短縮するためのポイントを解説します。
- 業者へ早期の発注と綿密な計画を行う
- 代替手段を併用する
業者へ早期の発注と綿密な計画を行う
納期を短縮する最も効果的な方法は、できるだけ早く業者に発注し、綿密な計画を立てることです。初期段階から設置業者と十分に打ち合わせを行うことで、設置までの工程が整理され、作業を円滑に進められる可能性が高まります。
代替手段を併用する
新品にこだわらず、再生品や中古品を利用することも有効です。これらはすでに製品として完成しているため、納品までの期間を短縮できる場合があります。さらに中古品を選べば、導入コストを抑えられる点でもメリットがあります。
発注から受電までのスケジュール
キュービクルの設置は契約から受電まで一連の流れがあり、段階的に進めることが重要です。当社小川電機株式会社にご依頼いただく際の流れは次のとおりです。
- 見積申し込み:専用フォームに必要事項を入力して依頼する。
- 打ち合わせ(1回目)・現場調査:担当者と打ち合わせを行い、設置予定場所を確認する。
- 見積もり提出:現地確認の結果をもとに、設置に必要な費用を算出して提示する。
- 打ち合わせ(2回目):見積もり内容を再確認し、最終的な合意を取る。
- 契約書締結:内容に問題がなければ契約を正式に結ぶ。
- 施工開始:契約に基づき、設置工事を進める。
- 設置完了:施工を終え、受電準備が整う。
このように、キュービクルを設置する際は、業者とのコミュニケーションが欠かせません。
キュービクルの設置における注意点
キュービクルを安全かつ長期的に運用するためには、設置時と設置後の双方で重要な注意点があります。最後に、キュービクルを設置する上での注意点を2つ解説します。
設置場所の条件
設置場所の条件
キュービクルは運転時に音や振動を発生させるため、住宅地やオフィス街などでは防音・防振対策が必要です。さらに沿岸部に設置する場合は、塩害による腐食を防ぐため、防錆処理などの特別な対応が求められます。
つまり、設置環境に応じた対策を講じることが安全稼働の前提となるため、必ず業者と相談して最適な処置を検討しましょう。
定期点検の義務
キュービクルは設置して終わりではなく、法令に基づいた定期点検を行わなければ安全に運用できません。点検を怠ると、停電や感電、火災などの事故につながり、事業停止による損失や損害賠償リスクを招く恐れがあります。
電気事業法ではキュービクルを「自家用電気工作物」に分類し、月次点検と年次点検の実施を義務付けています。これらは電気主任技術者の有資格者しか行えないため、資格者がいない企業は必ず外部に委託する必要があります。
月次点検は目視や計器の確認を中心に行い、設備に異常の兆候がないかを早期に把握することが目的です。月次点検では、次のような項目をチェックします。
- 外観確認:配電盤、遮断器、変圧器、コンデンサなどに油漏れや変形、異常音、異臭がないか
- 計器類確認:電圧計・電流計・電力計の指示値が正常かの確認
- 保護装置の状態:ヒューズや遮断器、継電器のランプ表示やリセット状態の確認
- 換気・絶縁状況:換気ファンや通風孔の詰まり、湿気やホコリの堆積確認
一方、年次点検は施設全体を停電させて実施する大規模な検査です。遮断器や断路器の分解清掃や接点確認、変圧器の絶縁油試験、接地・絶縁抵抗測定、コンデンサやリアクトルの劣化確認、さらには内部清掃などを行い、長期的な安全性を確保します。
年次点検では、次のような項目をチェックします。
- 遮断器・断路器:分解清掃、接点の摩耗や焼損の有無
- 変圧器:絶縁油の採取と絶縁耐力試験
- 接地抵抗測定:規定値を満たしているか
- 絶縁抵抗測定:母線・ケーブル・機器間の絶縁抵抗の確認
- コンデンサ・リアクトル:絶縁や膨張、油漏れの有無
- 機器内部清掃:ホコリや湿気、小動物侵入痕の除去
このように、月次点検と年次点検を適切に実施することで、設備の劣化や異常を早期に発見し、事故や故障を未然に防ぐことができます。キュービクルを安定して運用するためには、設置後も継続的な点検体制を維持することが不可欠です。
まとめ
キュービクルは、工場やコンビニなど高圧受電契約を結ぶ施設に欠かせない設備であり、電力を使用可能な電圧に変換する役割を担っています。その納期は標準品で1〜3ヶ月、カスタム品では3〜6ヶ月が一般的ですが、世界的な供給不足や制度改定といった外部要因によって遅延する可能性もあります。したがって、導入を検討する際には余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
納期をできるだけ短縮するためには、業者との早期かつ綿密な打ち合わせを重ねることが有効であり、場合によっては再生品や中古品の活用が実用的な選択肢となります。さらに、設置後は電気事業法に基づき、定期点検や保守管理を継続して行う必要があり、長期的な安全運用を見据えた対応が求められます。
小川電機株式会社は、60年以上の実績を誇り、キュービクルの新規設置からメンテナンス、トラブル対応まで迅速に対応できます。信頼できるパートナーとして、安心・安全な電力インフラの構築をサポートいたします。少しでもご興味をお持ちの方は、小川電機株式会社までお気軽にお問い合わせください。