非常用発電機を導入する際に最も重要なのは、関連する法令を正しく理解することです。なぜなら、法令を守らなければ社会的な信用を失うだけでなく、重大なリスクを招く可能性があるからです。そのため、設置を検討する段階から法令を把握しておくことが欠かせません。
今回は、非常用発電機に関わる主要な法令の内容や違反時の罰則、さらに安心安全な運用に直結する業者選びのポイントを詳しく解説します。非常用発電機を検討している方や、関連法令をしっかり理解しておきたい方にとって、有益な情報が得られる内容となっています。
非常用発電機を導入したときの注意点
非常用発電機を導入する最大の目的は、災害などによる停電時でも電力を供給し、安全と事業継続を守ることです。たとえば、停電中でもエレベーターを稼働させて閉じ込め事故を防ぎ、スプリンクラーなどの防火設備に電力を供給することで火災拡大を抑えることができます。さらに、病院や介護施設では医療機器を継続利用できるため、人命を守るうえで欠かせない設備となります。
このように非常用発電機は大きな役割を果たしますが、導入にあたっては必ず守るべき3つの法令が関わります。条件によっては設置が義務付けられる場合もあり、義務を怠れば法令違反となります。知らなかったでは済まされないため、所有するビルや施設が対象になる可能性がある場合は必ず確認が必要です。
法令を遵守することは、企業に課せられた社会的責任であり、信頼にも直結します。非常用発電機の設置を検討する際は、関連法令を正しく理解し、適切に対応することが重要です。
非常用発電機の設置に関わる3つの法令
非常用発電機を設置する際には、必ず3つの主要な法令を理解しておく必要があります。
- 電気事業法
- 消防法
- 建築基準法
これらは単なる規制ではなく、利用者の安全や事業継続を守るために定められたものです。違反すれば罰則を受ける可能性があり、社会的責任を果たす企業にとって遵守は不可欠です。ここでは、それぞれの法令について詳しく解説します。
電気事業法
電気事業法では、非常用・常用を問わずすべての発電機を電気工作物と位置付け、常に適切な状態で維持管理することを義務付けています。そのため、非常用発電機設置後は定期的な点検が必須であり、対象は出力10kVA以上のディーゼルエンジンタイプとすべてのガスタービンタイプです。
点検を怠れば、火災時に消防設備や避難誘導が機能せず重大なリスクを招く恐れがあります。確実に稼働させる環境を維持するためにも、点検は欠かせません。
消防法
消防法では、不特定多数が利用する延べ面積1,000㎡以上の「特定防火対象物」に非常用発電機の設置を義務付けています。
特定防火対象物とは、百貨店・ホテル・病院・福祉施設など、自力避難が困難な人を収容する施設を含む建物です。これらの施設は火災発生時の危険性が高いため、非特定防火対象物より厳しい基準が適用されます。
自社ビルや施設が該当するか不明な場合は、必ず業者に確認してください。また、非常用発電機設置後は、定期的な点検も義務付けられています。
建築基準法
建築基準法では、高さ31mを超える建物や特殊建築物に非常用発電機の設置を義務付けています。
特殊建築物には百貨店、病院、学校、ホテル、工場、倉庫などが含まれ、利用者数や周辺への影響の大きさから一般建築物より厳しい規制が適用されます。停電時でもエレベーターや排煙設備、非常用照明を稼働させ、安全性を確保することが設置義務の目的です。
なお、他の法令と同様に、非常用発電機設置後は定期的な点検が求められる点も忘れてはいけません。
法令違反したときの罰則
非常用発電機は「電気事業法」「消防法」「建築基準法」の3つの法令で設置や点検が義務付けられています。これらを守らなければ罰則が科せられるだけでなく、経営や社会的信用に大きな打撃を与える可能性があります。ここでは、それぞれの法令に違反した場合の具体的な罰則を解説します。
電気事業法に違反した場合の罰則
電気事業法第40条では、定められた点検を怠ると「技術基準の適合命令」や「使用制限」が科せられると定められています。これは違反が発覚すれば電気の使用自体が制限され、事業運営に大きな支障をきたすことを意味します。
電気は事業活動の基盤であり、停止すれば経営が立ち行かなくなる恐れがあります。こうしたリスクを回避するためにも、点検頻度や点検項目を正しく理解し、確実に実施する必要があります。
消防法に違反した場合の罰則
消防法に違反すると、以下のように幅広い罰則が科されます。
- 設置義務や点検義務の違反:30万円以下の罰金または拘留
- 所有者・管理者・従事者:最高1億円の罰金や刑事責任の追及
- 点検報告の不履行や虚偽報告:処罰対象として摘発
さらに、違反が確認されると消防機関のサイトで違反内容や事業者名が公表される場合もあります。
信用を失えば取引や顧客からの信頼を大きく損ない、経営の継続は困難になります。正確な点検記録を作成し、報告を怠らないことが重要です。
建築基準法に違反した場合の罰則
建築基準法では、点検や報告を怠った場合、「検査報告をしない者」や「虚偽報告をした者」に100万円以下の罰金が科せられます。施設の管理者やオーナーも対象です。
一見すると罰金額は軽く感じられるかもしれません。しかし、大規模災害時に被害拡大の原因が法令違反にあったと判断されれば、巨額の損害賠償を請求される可能性があります。
さらに、法令違反が原因とされた場合には保険適用が拒否されるケースも想定されます。つまり、罰金は表面的な処罰にすぎず、その影響は計り知れません。
法令遵守は社会的信用を守るだけでなく、従業員や利用者の安全を確保する基本的な責任です。非常用発電機の設置・点検においては、必ず法令を理解し確実に実行する姿勢が求められます。
各法令で定められている非常用発電機の点検周期と点検内容
非常用発電機は「電気事業法」「消防法」「建築基準法」により、設置後の定期点検が義務付けられています。点検を怠れば罰則や信用失墜につながるため、各法令で定められた周期と内容を理解し、確実に実施することが必要です。ここでは、それぞれの法令に基づく点検内容を解説します。
電気事業法で定められている点検周期と点検内容
電気事業法では、毎月行う「月次点検」と年に1度の「年次点検」の2種類が義務付けられています。
月次点検は外観や基本機能を確認し、年次点検では内部の細部まで精査する点が特徴です。両方を確実に実施することで、非常時に確実に稼働できる状態を維持します。
年次点検の主な項目は次のとおりです。
- 自動起動・自動停止装置の動作確認
- 内部蓄電池の漏れや劣化の確認
- 部品や接続箇所の緩みの有無
- 接地面や接続部分の異常確認
- 起動・停止装置の正常動作チェック
- 接続状態や絶縁抵抗値の測定
- 約5分間の空ぶかしによる試運転
点検費用は容量や設置環境で異なるため、見積もりを取得する必要があります。また、点検は「電気主任技術者」が行うことが義務付けられており、資格を持たない業者に依頼すると外注扱いとなり余計な費用が発生する可能性があります。依頼時には必ず資格保有状況を確認しましょう。
消防法で定められている点検周期と点検内容
消防法では、半年ごとの「機器点検」と年1回の「総合点検」を義務付けています。機器点検では主に外観や機能を目視で確認し、総合点検では実際に設備を稼働させて性能を検証します。
機器点検の主な内容は次のとおりです。
- 発電機・原動機・ラジエーター・冷却ファンの状態確認
- 燃料や潤滑油、冷却水の量と漏れの有無の確認
- バッテリーの漏れや劣化の有無
- 異音・異臭・振動・発熱の確認
- 自動始動・停止装置の動作確認
総合点検の主な内容は次のとおりです。
- 設備稼働時の計器類の指示値や作動状況の確認
- 30%以上の実負荷をかけた負荷試験
- 排気ファンや排気状態のチェック
負荷試験は通常年1回ですが、予防保全を行えば6年に1度へ延長可能です。費用や停電を伴うため、負担を減らすうえで重要です。
なお、点検は「自家発電設備専門技術者」「消防設備士」「消防設備点検資格者」などの資格者に限られ、結果は消防署長への届出が義務付けられています。
建築基準法で定められている点検周期と点検内容
建築基準法では、特定行政庁が定める頻度での点検が義務付けられており、目安は半年から1年に1回です。地域によって基準が異なるため、事前に確認する必要があります。
代表的な点検項目は次のとおりです。
- 建築物や設備、敷地が法令基準に適合しているかの確認
- 建物内すべての照明の異常有無の確認
- 蓄電池触媒栓の期限や液漏れの確認
この点検は「一級建築士」「二級建築士」「建築設備検査員」「防火設備検査員」といった資格保有者が実施する必要があります。点検頻度や資格者の要件を誤ると違反扱いとなるため、依頼前に必ず確認しておきましょう。
非常用発電機の点検業者を選ぶポイントと注意点
非常用発電機の点検は、法律で定められた資格を持つ技術者しか実施できません。そのため社内に資格保有者がいない場合、多くの企業は外部に委託することになります。
このときに重要になるのが、信頼できる点検業者の選定です。最後に、業者を選ぶ際に押さえておくべきポイントと注意点を解説します。
ポイント
業者選びで最も重視すべきは、実績の確認です。もちろん、すべての業者が最初は実績ゼロからのスタートであり、実績が少ないからといって必ずしも不適格というわけではありません。しかし、経験豊富な業者に依頼することで得られるメリットは非常に大きいといえます。
- 点検の質が高く、短時間で効率的に作業を終えられる
- 豊富な経験に基づき、安全性を考慮した環境づくりができる
- 適切な人員配置により無駄なコストを抑制できる
- 蓄積したノウハウを活かし、適切な時期に部品交換を実施できる
このように実績豊富な業者は、非常時に確実に稼働できる状態を維持するうえで心強い存在です。業者の信頼性を見極めるためにも、必ず実績を確認しましょう。
注意点
一部の業者は「格安料金」を前面に出していますが、価格の安さだけで選ぶのは危険です。どれほど費用を抑えられても、点検の質が低ければ非常時に発電機が稼働せず、安全を守れなくなる可能性があります。
そのため、業者を選ぶ際には次の点を総合的に判断することが重要です。
- 点検実績の豊富さ
- 対応可能な範囲の広さ
- 緊急時のレスポンスの速さ
費用はあくまで判断材料の一つであり、信頼できる業者を選ぶことが最優先です。結果として、非常時に確実に稼働できる環境を整えることにつながります。
まとめ
非常用発電機を導入するうえで最も重要なのは、「電気事業法」「消防法」「建築基準法」の3つの法令を正しく理解し、定められた義務を確実に守ることです。これらを怠れば、社会的信用の失墜や損害賠償請求といった重大なリスクを招き、さらに事故発生時に保険が適用されない可能性すらあります。したがって、法令を遵守することは企業の責務であると同時に、安全を守るための最低条件といえるでしょう。
また、点検は法律で定められた資格保有者しか行えないため、社内で対応できない場合は外部委託が必要です。ここで鍵となるのが業者選びです。
非常用発電機は有事の際に確実に稼働して初めて意味を持つものであり、そのためには日常的な点検を継続的に行うことが欠かせません。安心できる環境を維持するには、実績と信頼のある業者に依頼し、質の高い点検を受けることが必要です。
創業60年以上の実績を持つ小川電機株式会社は、設置工事から点検、部品交換、修理まで幅広く対応し、多くの現場で信頼を得てきました。非常時に確実に稼働できる体制づくりを全力でサポートしますので、非常用発電機に関する不安やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。